「わがまち」の歴史の魅力を、子どもたちに届けたい――先月(2020)年11月27日、港北区内の主要書店などで新発売された書籍「わがまち港北3」の執筆者で、区内髄一(ずいいち)の郷土史研究家として知られる公益財団法人大倉精神文化研究所(大倉山2)理事長の平井誠二さん、研究員の林宏美さんは、港北区内の横浜市立小学校26校、中学校9校、特別支援学校1校の計36校に、同書籍を各1冊ずつ寄贈。
「子どもたちの手に届くように、学校図書館に置いてもらえたら」と、地域の歴史を知る“バイブル”としての同書籍の魅力を、平井さん、林さんは、区内エリアに伝えていくための活動を行っています。
今週11月30日午前、港北区役所(大豆戸町)で行われた書籍の寄贈式および感謝状の贈呈式には、平井さん、林さんのほか、区内の小中学校を代表して、城郷中学校(小机町)の青石哲也校長(2020年度港北区中学校校長会会長)、日吉台小学校(日吉本町1)の玉置恭美校長(同小学校長会会長)、港北図書館(菊名6)の青木邦男館長、港北区こども家庭支援課学校連携・こども担当の廣瀬綾子課長らが出席。
「26ミリから27ミリくらい」(平井さん)ものボリュームで納品されてきたという同書籍を、平井さんと林さんが玉置校長、青石校長両名に手渡し。
お礼としての横浜市教育委員会からの「感謝状」を、両校長から平井さんと林さんに贈呈すると、会場からは2人への大きな拍手が送られていました。
連載スタートから“集大成”の第3巻が誕生するまで
そもそも、港北区役所4階にある港北区区民活動センターに、イベントなどの案内を置いてもらうためにと訪れていたという平井さん。
港北区政60周年にあたる1999(平成11)年に向け、「この(わがまち港北3の)2倍以上もの厚さになる「港北区史」を読むのは大変。短くわかりやすい原稿を執筆し、記事として連載してもらいたい」との依頼を受け、同センターが毎月発行していた情報誌「楽・遊・学(らくゆうがく)」に、同年1月から2018(平成30)年4月までの19年4カ月間にわたり、シリーズ「わがまち港北」としての連載を続けることに。
連載開始から10周年にあたる区政70周年アニバーサリー提案事業として「わがまち港北」出版グループ(故・大崎春哉さんが代表)が組織され、区内下田町ゆかりのイラストレーター・金子郁夫さんが表紙やイラストを描き、「わがまち港北」の記念すべき第1巻が2009(平成21)年7月にまずは出版されたとのこと。
第1巻の発行から5年の時を経て、連載15周年を記念して2014(平成26)年4月に同出版グループから発行された第2巻「わがまち港北2」からは、研究員の林さんが執筆した連載分も掲載。31ページにわたる「索引」も付録として新たに掲載、区内に生きる人々や事象などから文章を探すことができるという点も大きなポイントとなっています。
そして今回発行された第3巻「わがまち港北3」には、「横浜市港北区域年表」や「大正15(1926)年の地形図」、「郷土史最大の謎・杉山神社を探る」、そして「小机城の歴史と魅力を語る」といった4つの付録も掲載。
「特に60ページにも及ぶ年表作成は、とても大変な作業でした」と平井さんが語るように、初刊から11年もの時を経ての「完結編」、そして「集大成」として位置付ける、この20年余の港北区での平井さんの日々の“全ての想い”が、ここにあるといっても過言ではない貴重な一冊に仕上がっています。
子どもたちに「ふるさと」伝える学校図書館の“宝物”に
平井さんは、第1巻、第2巻についても、発刊当時に郵送などで各学校に寄贈したといい、「小学校高学年の児童でも読めるようにと、地名や難読文字にはルビを意識して振っています。ぜひ“声に出して”読んでもらえたら」と、学校の図書室に寄贈することにより、多くの子どもたちに地域の歴史やその成り立ち、知らなかったエピソードといった“港北区の魅力”を届けたいと語ります。
近現代史が専攻で、スポーツが大好きだという林さんも、「いつまでも忘れないで、という想いで、特に日吉台地下壕などに見られる区内の戦争遺跡についてもテーマに掲げ、執筆してきました。子どもたちにも、戦後75年以上も経過し、何もしなければなくなっていってしまうかもしれない“戦争の歴史”、そして大好きな野球などスポーツにまつわる歴史やエピソードついても、後世に伝え、“港北区”を大好きになってもらえれば」と、時代とともに風化してしまいがちな地域の歴史や、街に生きる人々の歩み、そして想いをしっかりと伝えていきたいと感じているといいます。
城郷中学校の青石校長は、地域の歴史イベント「小机城址まつり」にも例年参加している同中学校らしく、「港北区は、とても“あったかい”場所。学校と地域との一体感があり、お互いが欠けることができないほどに密着していると感じます」と、特に城郷・小机地区の魅力といった区の歴史を、「コロナ禍」に負けじとその価値を増す図書室での読書活動でさらに子どもたちにも伝えていければとの想いを語っていました。
「一家に全3冊、わがまち港北」と銘打つ第3巻の発売時には、新たに増刷された第1巻、第2巻とともに区内の主要書店の“トップ位置”に、手に取りやすく平積みされており、また全国流通を果たし今回から初めて流通することになったインターネット書店でも、既に“売り切れ”となるサイトも見られるなど、地域からの大きな支持を受けての販売スタートとなっているようです。
平井さん、林さんの「想い」を伝えるばかりでなく、そこに描かれた地域の歴史や人々の「生き様」を構成に遺す貴重な“資料”としての3冊の書籍は、この街を行き交う多くの人々のなかに、「わがまち」を実感する機会を増やす一つのツールとしても、より大きな価値を放ち、その輝きを増していきそうです。
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【参考リンク】
・書籍『わがまち港北』公式サイト(『わがまち港北』出版グループ~事務局:地域インターネット新聞社)
・港北区の「活動」をつなぐ情報誌『楽遊学』(横浜市港北区)