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坂道が多く、駅からも遠かった神奈川区の丘陵部で新横浜線は利便性を高める“救世主”となれるのでしょうか。

環状2号線や相鉄新横浜線で新横浜エリアとつながる神奈川区の三枚(さんまい)町菅田(すげた)町羽沢町羽沢南(1~4丁目)の4地区を「丘陵部」と総称し、同エリアに焦点を当てた「神奈川区丘陵部における行動実態調査」の報告書が先月(2023年)4月21日に区から公表されています。

“丘陵部”にある4地区の位置図、神奈川区の中心部からは遠く離れている(調査報告書の図表を加工)

最寄り駅まで「1キロ以上」が77%

神奈川区は、区役所が位置する東神奈川駅の周辺をはじめ、区内にはJR横浜線や京浜東北線、東急東横線、京急本線、市営地下鉄ブルーラインといった鉄道路線網が張り巡らされていますが、西部にある丘陵部は長年にわたって鉄道駅が無い状態

“丘陵部”にある4地区の人口分布図、人が多く住むエリアが分散しており、近くに羽沢横浜国大駅が開業した「羽沢南」を除いて駅からも離れている(調査報告書の図表を加工)

2018(平成30)年秋に行われたパーソントリップ調査によると、丘陵部では自宅から駅まで1キロ以上離れていると回答した割合が77.5%にのぼり、神奈川区全体で見た割合(11.9%)を大きく上回っていました。

そんななか、2019年11月に相鉄・JR直通線が開通したことを機に「羽沢横浜国大駅」(羽沢南2)が開業。今年3月18日には「相鉄・東急新横浜線(相鉄・東急直通線)」も開通し、新横浜駅を通じて東急線方面へも直通できるようになっています。

羽沢横浜国大駅ではJR新宿方面に加え、東急線を通じて東京メトロ南北線や都営三田線などにも直通(3月18日)

神奈川区による今回の調査は、丘陵部での課題と住民ニーズを把握し、地域交通への対応策や今後のまちのあり方を検討するために行ったものだといいます。

昨年(2022年)10月と11月に3000世帯を無作為抽出して世帯主と同居者1人に調査票を配布し、配布数の36.9%にあたる2213票が集まりました。

公共交通の不便地域、利用駅も分散

今回の調査対象とした4地区は、「丘陵部のいずれのエリアも山坂が多いため、勾配を考慮すると公共交通に到達が困難な『公共交通不便地域』に居住する人口の割合が半数以上となることが推測される」(調査報告書)との見方を示します。

4地区は“丘陵部”と総称されるだけあって坂道が多い(羽沢南)

公共交通の不便地帯であることは調査結果にも現れており、通勤・通学者の交通手段は「電車」がトップだったものの38.8%にとどまり、「バス」の12.4%を合わせて半数を少し超える程度。「自動車」(28.7%)と「自動二輪車・原付」(5.6%)、「自転車」(7.6%)を合わせて41.9%にのぼりました。

4地区内には自動車交通の動脈である「環状2号線」が通じ、バスも通る(菅田町)

乗車駅も地区ごとに分散しており、三枚町が「片倉町駅(ブルーライン)」(67.5%)、菅田町では「鴨居駅(横浜線)」(47.5%)、羽沢町は「横浜駅」(49.4%)、羽沢南が「羽沢横浜国大駅」(63.3%)と丘陵部を代表するような駅は見当たらない状況です。

報告書では、「羽沢横浜国大駅の開業が利用駅に影響を大きく与えたのは、羽沢南のエリアのみと言える」との記載も見られます。

東急直通で新横浜駅の利用も増加

調査では今年3月の「相鉄・東急新横浜線」の開業によって主に利用する駅を変えたかどうかも尋ねました。

「相鉄・東急新横浜線」は3月18日に開通した(羽沢横浜国大駅)

これによると、駅から近い羽沢南で35.8%羽沢町では14.9%新たに羽沢横浜国大駅を利用すると回答。丘陵部全体では12.3%にのぼります。

また、バスなどで新たに新横浜駅を利用するとの回答も一定数あり、三枚町では12.1%と羽沢横浜国大駅よりも割合が高く、丘陵部全体でも8.5%に達しました。

2割ほどが利用駅を羽沢横浜国大や新横浜に変えるという回答だった(調査報告書より)

ただ、菅田町(89.3%)や三枚町(77.5%)を中心に全体の79.2%が「利用駅を変える予定がない」と答えています。

今年3月時点で菅田町の人口は1万6000人と羽沢の2地区(羽沢南・羽沢町)と比べても2000人以上多く、丘陵部全体(4万1691人)の38%を占めます。

2023年3月末時点で菅田町の人口は1万6000人(8016世帯)と4地区では最多

羽沢横浜国大駅を利用する74.3%が「徒歩」、新横浜駅では69.8%が「バス」によってアクセスしていると回答しており、新横浜線の利用者を増やすには、菅田町などから両駅への交通手段を拡充していくことが重要となりそうです。

【トピックス】買物は鳥山町「フジ」が人気、羽沢横浜国大駅の再開発後は?

人口が分散し公共交通も充実しているとは言えない丘陵部では、利用駅が分散しているだけでなく買物場所もばらばらの状態。

食料品や日用品の買物でもっともよく行く行先が分散した結果、トップは港北区内の「フジ鳥山店」に(調査報告書より)

分散しすぎた結果、利用者割合のトップとなったのは菅田町との区境至近にある港北区内のスーパー「フジ(FUJI)鳥山店」(19%、富士シティオ株式会社運営)でした。

フジ(FUJI)鳥山店は今から30年近く前、砂田川の真部橋近くの事業所跡地などを使って1994(平成6)年にオープンした老舗。店舗面積は2000平方メートル超で、周辺に146台分の駐車場を備えている

このほか、バス路線が通じる「横浜駅周辺」(11.6%)や「鴨居駅周辺」(10.6%)が続き、三枚町から近い「新横浜駅周辺」も6.6%となっています。

一方、羽沢南では買物のために横浜駅へアクセスする割合(17%)が目立っていますが、羽沢横浜国大駅では商業施設を含めた再開発「羽沢バレー」の建設も進んでおり、今後は周辺の買物環境を大きく変える可能性があります。

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<ST線フォーラムレポ5>住民主導で農・住・学の融合目指す~羽沢・和田さん(2022年8月25日、「かつて“羽沢は横浜のチベット”とも言われていたくらい」とのコメントも)

【参考リンク】

神奈川区「丘陵部(三枚町・菅田町・羽沢町・羽沢南1丁目~4丁目)」における行動実態調査(2023年4月21日公表)