新横浜駅に到着した列車に「粗暴犯」が乗車。その時どのように対応すれば、多くの人々の命を守ることができるのでしょうか。
きのう(2023年)2月12日(日)の19時前、来月3月18日(土)に開業予定の相鉄・東急新横浜線「新横浜駅」(新横浜3)の地下ホームには、開業に向けての準備をおこなう同駅を管理する相鉄(相模鉄道)と東急電鉄の駅員が待機。
新綱島駅を出発した東急電鉄の後方車両に「不審者」にが乗車していたという想定での「災害対応訓練」を初めて実施しました。
今回の訓練では、不審者が乗客を刃物で切りつけたうえ、液体を撒いて放火、多数の傷病者が発生したという災害を想定。
駅員からの通報を受け、神奈川県警港北警察署(大豆戸町)や鉄道警察隊が出動し、現場で暴れる「不審者」の身柄を確保、横浜市港北消防署(同)や、小机・新羽・綱島の各消防出張所の消防署員が駆け付け、煙が上がる車両を消火し、傷病者を救出する訓練をおこないました。
到着した列車には約70人の乗客に扮した人々(東急電鉄の社員)が乗車。
暴れる犯人役が前の車両に入ってくるのを乗客が中扉を抑え防ぐシーンや、電車のドアを開き乗客を避難誘導する場面、負傷者の救護や救出、最後に取り残された人々を最後尾車両から降ろした上、線路脇から駅へと誘導するシーンも見られました。
駅ホーム上には港北消防署による「指揮本部」や「仮救護所」も設置され、新横浜駅に最も近い「救命救急センター」としての横浜労災病院(小机町)の医師・看護師が駆け付けるなど、“現場に積極的に出ていく”医療チームの姿も見られました。
さらなる訓練や「顔が見える」関係構築で対応力強化を
約30分間の訓練の後、講評をおこなった港北警察署の田村淳一署長は、「とても緊張感にあふれた素晴らしい訓練でした」と参加者を労(ねぎら)います。
近年、鉄道施設や電車内での傷害事件などが相次ぎ、模倣犯にも懸念されている状況となっていることに触れ、「このような事案を事前に防止し有事において迅速・的確に対処するためには平素の準備が必要」と、日頃からの実践的な訓練による技能の向上や、それぞれが「顔が見える」関係を構築することを呼び掛けていました。
港北消防署の吉田崇署長は、「3月18日に相鉄・東急新横浜線が開業。交通利便性の向上と経済の活性化で大きな期待が寄せられています」と、新線の“注目の高さ”にも言及。
「この期待に応えるためには利用者の安全、安心を確保することが必要不可欠」としたうえ、「万が一にも火災が発生した場合、迅速な119番通報、消火器、消火栓を使った初期消火、利用者の方の避難誘導を迅速におこなうこと」の大切さを呼び掛けます。
また、「火災で何より怖いのは『煙』。煙には一酸化炭素といった有毒なガスが含まれているので、万が一にも火災が発生した際には適切な方向への避難誘導、避難口への適切な誘導を」としたうえ、各機関が連携して適切に人命の確保をおこない、情報を集約し警察や関係機関への正確な情報提供をおこなうことの必要性を訴えました。
最後に講評をおこなった横浜労災病院「救命救急センター」の中森知毅センター長は、「日産スタジアムや横浜アリーナなど、新横浜には多数の方が集まる施設が複数あり、またこの駅もまたたくさんの人が集まる施設として、多くの傷病者が発生する可能性が高いところと考えています」と、これからますます多くの来街者が増えることについて言及します。
「イベントが重なる時に(そういった)事案が起こる発生する可能性があがったな、ということを身が引き締まるような思い」と語り、「新横浜駅に一番近い救急救命センター、そして災害拠点病院として、私たちだけでできるものではないが『最初の楯』となって皆様と一緒に大きな被害を止めたいと思っている」と、今後も可能な限り「定期的」に訓練へ参加していきたいとの意思も示していました。
今回の訓練は、約30分という短い時間での実施となったものの、乗客としてのエキストラのほか、警察、消防、医療関係者など約150人が参加するという“規模感の創出”で、少しでも“リアル”な「新横浜駅」の状況へと近づけようという工夫も見られていました。
特に、大型イベント開催時など、「わずかな時間」であっても、多くの人命が失われかねない事態も想像されることから、日々の連携、「顔が見える」関係の構築はもちろん、定期的な訓練の実施についても今後検討していく必要がありそうです。
(※)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です
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【参考リンク】
・相鉄・東急 新横浜線 2023年3月開業予定(東急電鉄株式会社)
・横浜市の救急医療について(横浜市)
・相鉄・東急新横浜線開業に向けて災害対応訓練を行います。(横浜市記者発表資料)※3月に新綱島駅でも災害対応訓練を実施予定