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われわれ“暴れ川”流域の住民は、一世紀かけてようやく水害と立ち向かえる力を付けつつあるのでしょうか。綱島や日吉、樽、大曽根、新吉田、大倉山(太尾)、新羽、小机など流域の住民が立ち上がり、本格的な運動組織「鶴見川改修期成同盟(きせいどうめい)会」が大正時代に立ち上がってから今年(2021年)でちょうど100周年を迎えます。

11月23日(火・祝)の13時30から15時30分までオンラインで開かれる「鶴見川改修期成同盟会 設立100周年記念鼎談(ていだん)」の案内チラシ(鶴見川流域ネットワーキングのページより)

当時、組織を先導した村長の子孫や、鶴見川の専門家港北区の歴史家が一同に集まり、一世紀を振り返る貴重なイベント「鶴見川改修期成同盟会 設立100周年記念鼎談(ていだん)」(鶴見川流域水協議会主催)が今月11月23日(火・祝)にオンラインで開かれます。

2年前の秋、2019年10月12日に関東を襲った「台風19号」では、鶴見川から日産スタジアム付近まで水があふれ出たにも関わらず、翌日の夕方には「ラグビーワールドカップ」の日本代表対スコットランド代表戦が開催されたことには、国内だけでなく世界に驚きを持って伝えられました

かつての鶴見川なら大洪水になっても不思議ではない規模の台風でも、現在では何とか乗り切れるだけの高い治水能力を備えていることを示した格好ですが、こうした治水を形作った原点といえるのが今から100年前の1921(大正10)年に結成された「鶴見川改修期成同盟会」の存在です。

新横浜公園と鶴見川(右側)

港北区などの鶴見川流域では、川が交通手段や農業用水として生活に重要な役割を果たす一方、記録が残るだけでも江戸時代からたびたび鶴見川の決壊による水害に悩まされてきました。

特に港北区域での鶴見川は、新横浜の先の大豆戸町で鳥山川と合流し、綱島では早渕川、さらに日吉では矢上川交わるという環境もあって、毎年夏から秋の恒例行事のように周辺で浸水が繰り返されます。

現在は穏やかな流れの鶴見川(新横浜付近)

一方、対策で堤防を高くすると両岸のどちらかが不利になるため、江戸時代には堤の高さや場所を巡って、「綱島vs新吉田」や「綱島vs樽・大曽根・駒岡」、または「大倉山(太尾)・大豆戸・大曽根vs小机・鳥山・岸根・篠原」など、川の両岸や上下流の村々間で対立が起き、時には死者が出るほどの激しい抗争もあったといいます。

幕府や政府に願い出ても鶴見川の根本的な改修は一向に進まず、時代が明治から大正に変わっても死者が出る規模の水害が相次ぐなか、流域の改修運動を組織化するため1921(大正10)年に立ち上げられたのが「鶴見川改修期成同盟会」でした。

鶴見川では1982(昭和57)年までたびたび水害に見舞われていた(国土交通省京浜河川事務所による「暴れ川の記憶」のパンフレット)

同会は、鶴見川下流の町田村(鶴見区潮田町)や生見尾村(うみお=鶴見区南部)、旭村(駒岡・獅子ヶ谷など鶴見区西部と師岡)、大綱村(綱島・樽・大曽根・大豆戸・太尾など)と日吉村(現在の日吉エリアと幸区南加瀬など川崎市域含む)、城郷村(しろさと=小机・鳥山・岸根など)と、現在の港北区と鶴見区を中心とした流域6村の村長が発起人となり、代表者には大綱村の飯田助夫村長が就いています。

ただ、同盟会を結成したからと言って、国がすぐに動いたわけではなく、設立の2年後には関東大震災が発生。続く昭和は戦時色が濃くなり、戦後は復興に忙殺され、その後も1958(昭和33)年9月の「狩野川台風」や1966(昭和41)年6月の「台風4号」などで大きな被害を受けるとともに、高度経済成長期には流域の宅地化が進行。雨水を吸収する土地が減り、ますます水害の危険性が高まりました。

2019年10月「台風19号」上陸直前の新横浜駅前の様子

そんな状況下でありながら、港北区などの鶴見川流域では、1982(昭和57)年を最後に目立った水害は起きていません。この100年の間にどのような治水対策を進め、現在のように一定規模の大雨や台風では被害が発生しないような川に変えていったのでしょうか。そして、異常気象が目立つこれから先も現在の治水で街を守れるのでしょうか。

今回のイベントは、同盟会の発足時に代表をつとめた大綱村の飯田助夫村長の子孫にあたる飯田助知(すけとも)さんを招き、一世紀の変化を尋ねるとともに、鶴見川水害の被害者でもある慶應義塾大学名誉教授の岸由二さんと、港北区などの地域史研究家で大倉精神文化研究所理事長をつとめる平井誠二さんが加わり、過去の資料には載っていない事項を含め、3氏があらゆる視点から鶴見川の100年間をひも解き、これからの未来を語ります。

イベントは、11月23日(火・祝)の13時30から15時30分まで行われ、新型コロナウイルス対策のため会場の大倉山記念館は無観客とし、その様子はオンラインで配信されます。オンライン会議システム「Zoom(ズーム)」への参加メールを送信するため、参加は事前の申込が必要

なお、開催後の11月28日(日)から12月26日(日)まで申込者には見逃し配信も行われる予定です。

)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の一部共通記事です

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<新横浜公園>台風19号で鶴見川から流れ込んだ水は過去3番目の量に(2019年10月21日)

<コラム流域思考>暴れ川だった「鶴見川」の記憶、未来にそなえる流域思考の連携へ(2017年5月1日)

【参考リンク】

11月23日(火・祝)13:30~15:30「鶴見川改修期成同盟会 設立100周年記念鼎談(ていだん)」(オンライン)の案内ページ(鶴見川流域ネットワーキング)

「鶴見川改修期成同盟会 設立100周年記念鼎談(ていだん)」(オンライン)の申込フォーム(鶴見川流域ネットワーキング)