【コラム】“ながつだ(長津田)”ではなく“ながつた”と正しく呼んでほしい――。そんな市民の声に対し、横浜市では職員らに対し「横浜市の町名一覧」という資料の存在を周知し、一般にも公開しているといいます。
今月(2024年)3月1日に公開された「市民の声」で、「区役所職員等、公務に就く者は『長津田』を正しく『ながつた』とよんでほしいです」という趣旨の投稿に対し、地元の緑区役所から地名に愛着を持っていることに対する感謝の意が示され、注意喚起していきたいとの回答が行われたものです。
同区の回答によると、「横浜市の町名一覧」というデータが存在し、職員に周知するとともに市の公式サイトにも公開されているといいます。
PDF形式のファイルとして公開されているA4判・全28ページにわたる町名一覧では、横浜市に現存する町名だけでなく、すでに廃止された町名も掲載。正式な読みがなに加え、町が設けられた年月日と変遷も盛り込まれていました。
一方、指摘のあった長津田(ながつた)や、港北区内の高田(たかた)と隣の東山田(ひがしやまた、都筑区)などのように、濁らない読み方が正式ではあっても、日常では「ながつだ」や「たかだ」などと呼ばれている場面も見られ、そちらも通用しています。
特に長津田は、JRの前身となる国鉄時代に横浜線の駅名を「ながつだ」と読ませていた歴史がありました。
また、池辺(いこのべ、都筑区)のように正式の読み方が難しいため、「いけべ」という簡単な呼び方が広く使われているケースも見られます。
横浜市内には、港北区民によく知られた「大豆戸」をはじめ、乙舳町(金沢区)や庚台(南区)、泥亀(金沢区)など一見しただけでは読みがなを想像するのが難しい町名をはじめ、北方町(中区)や東方町(都筑区)、鉄町(青葉区)、潮田町(鶴見区)といった読み方を悩んでしまいそうな町名も存在します。
市内には1370の町(2016年時点)があると言われ、公開されている町名一覧で正確な読みがなを調べてみることで新たな発見があるかもしれません。
同一覧には、蝦夷町(えぞちょう)や小田原町、九州町、神戸町、薩摩町、浪花町など、明治期に廃止された町名も掲載されており、この点も見どころです。
さらに詳しく調べる際には、2016(平成28)年に発行された「横浜市町区域要覧」という全400ページ超にわたる資料も公開されており、区画整理や住居表示(○番○号)の実施など詳細な町の変遷をたどることが可能です。
同要覧では、住居表示が行われていない町のなかで小地名(集落)を表す「字(あざ)名」と読みがなも付されていました。
たとえば港北区の字名では、「山王山(さんおうやま、岸根町)」や「泉谷(せんごく、小机町)」、「勝負田(しょうぶた、篠原町)」、「御霊(ごりょう、新吉田町)」、「上耕地(かみごうち、高田町)」、「三歩野(さんぶや、綱島上町)」、「五反町(ごたんまち、鳥山町)」、「長嶋(ながしま、新羽町)」、「下土浮(しもどぶ、大豆戸町)」、「沼上耕地(ぬまかみこうち、師岡町)」など、今はあまり使われなくなった土地の名にも触れることができます。
(※)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です
【関連記事】
・戦前の貴重な「古地図」をネットで公開、日吉村や大綱村、新田村の時代もたどれる(横浜日吉新聞、2019年5月28日、古い地図には今はあまり使われなくなった字名も載っている)
【参考リンク】
・「市民の声」の公表「区役所職員は『長津田』を正しく『ながつた』とよんでほしいです」(2024年3月公表)
・横浜市の町名一覧(2020年10月19日現在)
・横浜市町区域要覧(2016年版、町の変動などの沿革を掲載)
・1938(昭和13)年「最新実測番地入 新大横浜市全図」(横浜都市発展記念館が公開している戦前の地図、小字の表示も多い※新羽や新吉田、高田はまだ横浜市に入っておらず新田村のため一部しか掲載されていない)