港北区が全国の「行政区」における人口規模で2番目に後退しました。
今年(2024年)1月1日付けで静岡県浜松市に人口60万人超の行政区「中央区」が新たに設けられ、港北区の人口(36万3097人=10月1日現在)を大きく上回ることになったものです。
行政区は全国に20ある政令市(政令指定都市)のなかに設けられた「ミニ市役所」(指定都市市長会の説明)という位置付けで、昨年(2023年)12月末時点で全国に175の行政区が設けられていました。
なお、同じ「区」という名称でも東京23区だけは「特別区」として住民が選挙で選ぶ独自の区長や議会、予算があって基礎自治体とほぼ同じ機能が与えられていますが、政令市の行政区は“ミニ市役所”として、市役所の出先機関的な存在にとどめられているのが特徴です。
港北区では、都筑区と分区する直前の1994(平成6)年10月時点で人口が33万人を超えており、翌1995(平成7)年には分区によっていったん28万人弱にまで減ったものの、その後も人口は年々増加。
2000(平成12)年の国勢調査では29万4305人に達し、この時点で京都市伏見区(28万7909人)を抜いて全国行政区のなかで最多の人口規模となっていました。
12市町の合併で指定都市となった浜松に変化
2007(平成19)年11月に浜松市や浜北市など周辺の12市町が合併して約80万の人口で政令市となった浜松市では、合併前の市町域をなるだけ分断しないようにと市内に7つの行政区を設置。なかには天竜区のように人口が3万程度の山間地域も含まれました。
一方、同規模の指定都市である静岡市や相模原市が3つの行政区しか設けていないのに比べ、浜松市の行政区は多すぎるとの指摘もあり、政令市が発足してすぐに議論が始まった市の諮問機関「第2次行革審」(会長:鈴木修スズキ株式会社取締役会長兼社長=当時)による意見書(2009年7月)では、
- 合併により中山間地域が広がって集住度が低下した浜松市に、大都市の行政運営の仕組みである行政区はふさわしいのか
- 人口80万人規模(当時)の浜松市に行政区を設けることは、かえって市の一体感を損なう。本庁・区役所・市民サービスセンターの3層構造は、市内部の管理的仕事を増やし事務の執行を非効率にしている
- 行政区は都市の将来像を描くまとまりとして、3区程度に削減すること
といったことが述べられたうえで、「究極の行財政改革」としては、できれば行政区自体を廃止するのが望ましいが、必ず2つ以上の行政区設置が求められている法律の改正には時間がかかるので、まずは3区程度に削減するべきと要望しています。
浜松市では、同意見書が出されてから15年近くの時間をかけて、住民投票を含めた議論の末に7つあった区を3つに減らしたもので、市街地を集約した「中央区」(人口60万8145人=2023年10月時点)と、郊外のベッドタウンを中心とする「浜名区」(人口15万5996人=同)が今年1月1日から発足し、再編の対象外とした「天竜区」(人口2万5681人=同)とともに3行政区体制となりました。
浜松市では日本の行政区で最大の人口規模となった中央区と、最小である天竜区の2つが同じ市内に共存することになり、日本最大の行政区とともに、山間地域の行政区も抱える政令市として新たな運営スタイルを模索していくことになりそうです。
【参考】人口30万人以上の行政区一覧
(※)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です
【関連記事】
・<行政区ランキング>港北区が全国トップ独走、横浜の区は人が多すぎる(横浜日吉新聞、2021年6月4日)
・日吉でのシンポジウム盛況、横浜市は県から離れて「特別市」になれるか(横浜日吉新聞、2023年3月16日、横浜市は県の機能を取り込もうとしている)
【参考リンク】
・指定都市とは(指定都市市長会、政令指定都市の説明)