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1年以上先となる運賃値上げへ向けて異例の早さで申請が行われました。東急電鉄は1年2カ月後の来年(2023年)年3月に実施を計画する運賃改定について、先週(2022年)1月7日に国土交通省へ認可申請したことを発表しました。

東急電鉄が国交省に申請した来年2023年3月の改定額(赤色下地の部分)と現状の運賃(東急電鉄の公表資料を一部加工)

鉄道会社の運賃は「上限額」を決めて国土交通大臣の認可を受けなければならず、上限額を引き上げる場合も認可が必要であると法律で定められています。

消費税の増税分を運賃に転嫁した際の改定を除き、東急電鉄が前回値上げを行ったのは2005(平成17)年3月20日で、この時の認可申請は3カ月前となる2004(平成16)年12月10日に行われていました。

新型コロナ禍を経て東急電鉄の乗客数と収入減少が続いている(公表資料より)

今回の値上げは、1年4カ月前の昨年(2021年)11月には方針が公表されており、年が明けて早々に申請が行われています。

1年以上の時間をかけて運賃値上げを行うというスケジュールについては、東急グループが昨年11月10日に行った投資家向け説明会でも出席者から質問が出ており、東急は「運賃収受のためのシステム改修、運賃表などの設備の取り換えや、お客様への周知を十分に行うことを考慮」したものであると回答しています。

運賃改定に加え新横浜線の開業も予定

来年3月末までが期間となる「2022年度下期」を期日とする東急新横浜線の開業へ向け、目黒線では新型車両の投入と8両編成化が進められている(日吉駅)

東急電鉄では2022年度下期(今年10月~2023年3月)に「東急新横浜線(相鉄・東急直通線)」(日吉~新綱島~新横浜、※新横浜で相鉄線と相互乗り入れ)の開業が控えます。

今年1月時点でまだ開業日は決まっておらず、今年10月から来年2023年3月までの半年間のうちに開業するとの方針のみが発表されている状態です。

東急電鉄が運賃値上げを行う計画とする2023年3月の以前に東急新横浜線が開業した場合には、相応のコストを要するとみられる運賃に関するシステム改修や運賃表などの設備取り換えを短期間で二度にわたって行わなければならない可能性があります。

菊名・大倉山~渋谷の定期は1300円上昇

東急電鉄が計画する来年3月の運賃改定では、初乗り運賃を現在の126円(ICカード運賃)から140円(同)に引き上げるなど、東横線や目黒線の運賃が区間によって10円から37円上昇することになります。

菊名・大倉山~渋谷間の普通運賃は37円上がって288円、1カ月通勤定期は1300円上昇し1万740円とする計画(菊名駅)

改定後に1カ月間の通勤定期券は、菊名駅と大倉山駅から中目黒駅・渋谷駅・目黒駅間がそれぞれ1300円上がって1万740円。

同一運賃となる「16~20キロ区間」の範囲をわずかに超えてしまう妙蓮寺駅と渋谷駅間(20.2キロ=切上げで21キロ)では、1400円上昇し1万1510円になります。

横浜駅へは妙蓮寺駅・菊名駅・大倉山駅ともに820円上がって1カ月あたり6780円です。

なお、通学定期券については、家計負担に配慮するためとして値上げの対象外としました。

今から16年半以上前、2005(平成17)年3月に東急電鉄が値上げした際は、3キロまでの初乗り運賃を110円から120円に上げるとの内容でした。

大手私鉄(JRを除く)の初乗り運賃と定期券の割引率一覧、現在の東急電鉄は初乗りで“最安”のグループに入る(国交省の資料より)

その後に二度の消費増税を経て、現在は初乗り運賃が126円(ICカード以外は130円)となったものの、山手線などJR東日本電車区間の136円(ICカード、1~3キロ区間)や京浜急行電鉄の136円(同)などと比べても低く抑えられています。

鉄道各社によって運賃上昇の刻みや定期券の割引率が異なるため、単純比較はできないものの、初乗り運賃で見ると、東急電鉄は値上げ後も関東の大手私鉄の平均的な額といえそうです。

2023年3月の値上げ後における大倉山駅・菊名駅・妙蓮寺駅からの主な区間の運賃変更額は次の通り。

大倉山駅発着

▼ 大倉山駅~渋谷駅(17.5km)

  • IC片道:251円→288円(+37円)
  • 1カ月通勤:9,440円→10,740円(+1,300円)

▼ 大倉山駅~中目黒駅(15.3km)

  • IC片道:251円→288円(+37円)
  • 1カ月通勤:9,440円→10,740円(+1,300円)

▼ 大倉山駅~目黒駅(15.8km)

  • IC片道:251円→288円(+37円)
  • 1カ月通勤:9,440円→10,740円(+1,300円)

▼ 大倉山駅~横浜駅(6.7km)

  • IC片道:157円→180円(+23円)
  • 1カ月通勤:5,960円→6,780円(+820円)

菊名駅発着

▼ 菊名駅~渋谷駅(18.8km)

  • IC片道:251円→288円(+37円)
  • 1カ月通勤:9,440円→10,740円(+1,300円)

▼ 菊名駅~中目黒駅(16.6km)

  • IC片道:251円→288円(+37円)
  • 1カ月通勤:9,440円→10,740円(+1,300円)

▼ 菊名駅~目黒駅(17.1km)

  • IC片道:251円→288円(+37円)
  • 1カ月通勤:9,440円→10,740円(+1,300円)

▼ 菊名駅~横浜駅(5.4km)

  • IC片道:157円→180円(+23円)
  • 1カ月通勤:5,960円→6,780円(+820円)

妙蓮寺駅発着

▼ 妙蓮寺駅~渋谷駅(20.2km)

  • IC片道:272円→309円(+37円)
  • 1カ月通勤:10,110円→11,510円(+1,400円)

▼ 妙蓮寺駅~中目黒駅(18.0km)

  • IC片道:251円→288円(+37円)
  • 1カ月通勤:9,440円→10,740円(+1,300円)

▼ 妙蓮寺駅~目黒駅(18.5km)

  • IC片道:251円→288円(+37円)
  • 1カ月通勤:9,440円→10,740円(+1,300円)

▼ 妙蓮寺駅~横浜駅(4.0km)

  • IC片道:157円→180円(+23円)
  • 1カ月通勤:5,960円→6,780円(+820円)

【関連記事】

<東急電鉄>10数%の運賃値上げ方針、テレワーク定着で定期利用が大きく減る(横浜日吉新聞、2021年11月15日、運賃値上げの背景)

2022年春に東急ダイヤ改正、綱島・日吉などで日中の東横線「各停」が減便(横浜日吉新聞、2021年12月20日、乗客減に対応し今年春には昼間に菊名~渋谷間で減便も)

【参考リンク】

2023年3月の実施に向けて鉄軌道旅客運賃の改定を申請(東急電鉄、2022年1月7日)