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今年(2018年)3月で開業10周年となったトレッサ横浜。「トレッサ(TRESSA)」とは、フランス語で「喜びでわくわくする」(Tressaillir de joie) という意味から名付けた造語。TRESSAGEで「編む」「結ぶ」という意味だという(トレッサ横浜の資料より)

今年(2018年)3月で開業10周年となったトレッサ横浜。「トレッサ(TRESSA)」とは、フランス語で「喜びでわくわくする」(Tressaillir de joie) という意味から名付けた造語。TRESSAGEで「編む」「結ぶ」という意味だという(トレッサ横浜の資料より)

トレッサ横浜(師岡町)が創立10周年を迎え進化を続けています。2007年12月に「北棟」、翌2008年3月に「南棟」がオープンしてから丸10年。地域に開かれた施設として、同月オープン・港北区内で5番目に開設された師岡コミュニティハウス(横浜市)や、北棟、南棟にそれぞれ設置された2000~3000人規模のイベント広場などで、地域の祭りや数々の催しも開催。地元自治体や行政機関、町内会や地域の非営利団体とのコラボレーションでのイベントを多く企画実施をしていることでも知られています。

このほど、10周年を迎えた同施設が、どのように新しく生まれ変わったのか。そのポイントと、この先10年に向けた新たな「戦略」とは。

開業当時から運営に携わり、現在、トレッサ横浜のプレジデントとして活躍する栗原郁男さん(株式会社トヨタオートモールクリエイト:本社=愛知県名古屋市、常務取締役)に、そのみどころや今後の展望について、詳しく話を聞きました。

地域団体と語る“緑”と“トレッサ色”の周辺環境まちづくり

トレッサ横浜・プレジデントの栗原郁男さん(中央)、運営部の松谷英知さん、業務部の若林俊幸さん(最左)。社会的貢献(CSR)活動で協力関係にある鶴見川流域ネットワーキングの岸由二代表理事(最右)、亀田佳子理事とパルクデラトレッサ前で(2018年4月20日撮影)

トレッサ横浜・プレジデントの栗原郁男さん(中央)、運営部の松谷英知さん、業務部の若林俊幸さん(最左)。社会的貢献(CSR)活動で協力関係にある鶴見川流域ネットワーキングの岸由二代表理事(最右)、亀田佳子理事とパルクデラトレッサ前で(2018年4月20日撮影)

年間来場者数は2008年の開館以降、毎年1千万人を越え、2016年には累計1億人を突破した同館の明確な試みが「地域密着」

来客層のメインターゲットである子育て世帯への広報体制強化から情報発信する「とれおんパーク」ブログでの、NPO法人びーのびーの(篠原北1・奥山千鶴子理事長)との協業や、トレッサ横浜の社会的貢献(CSR)活動の一環としての環境への取り組みとしてのNPO法人鶴見川流域ネットワーキング(TRネット・綱島西2、岸由二代表理事)への支援やイベント開催などでも、“地域に根差す活動”を行っています。

「周辺の豊かな緑に呼応した緑化の推進」を謳(うた)う同館の取り組みとして、新たに北館西側の公共エリアの緑地帯をリニューアルしたのが、「パルク デ ラ トレッサ(Parc de la TRESSA)」。

横浜開港150周年を記念して名付けられた「ハマミライ(はまみらい)」バラ。植物の名前が記されたプレートには、QRコードも掲載されており、それぞれの詳細を見ることができるという

横浜開港150周年を記念して名付けられた「ハマミライ(はまみらい)」バラ。植物の名前が記されたプレートには、QRコードも掲載されており、それぞれの詳細を見ることができるという

株式会社トヨタエンタプライズ(名古屋市)の造園部門が手掛けた花と緑のスペースは、今年(2018年)1月から整備し、3月14日に完成しました。

横浜市と姉妹都市提携を結んでから来年(2019年)で60周年を迎えるフランス・リヨン市の街並みを館内でも再現しているトレッサらしく、この庭園も、同市の「市民の憩いの場」を代表するといわれる同市のテットドール公園をイメージし、“リヨンの雰囲気が漂う場所”としてリニューアルしたとのこと。

木々や草花の名前も掲示しているので、四季折々の緑や花を楽しんでいただきやすいと思います。バラだけで17種類も植えたんですよ」と栗原さん。

樹木を一部ライトアップするなど、「四季折々の花木を楽しめるこの公園が、皆様の憩いの場所となるよう」との、“次の、10年に向けて”の想いが綴られている

樹木を一部ライトアップするなど、「四季折々の花木を楽しめるこの公園が、皆様の憩いの場所となるよう」との、“次の、10年に向けて”の想いが綴られている

欧米で昨今流行しているという、雨が降った際の治水を行える「レインガーデン」の機能を備えているといい、水やりも自動散水で行うことができるとのこと。

樹木の一部ライトアップも実施しているとのことで、「これからも花と緑の空間を皆さんにお楽しみいただきたいと整備しました。オープンしてからこれまで、リヨン市との民間交流事業のお手伝いもさせていただいていますが、近郊の“緑のまちづくり”に貢献できるような更なる10年を描いていけたなら」と、栗原さんは、これから成長していくであろう“植えたばかりの”木々や草花を眺めながら、これから先の“未来像”についても思いを込めて語ります。

車も自転車もシェアする時代、路線バスとのSNSコラボも

トレッサ横浜の運営会社・株式会社トヨタオートモールクリエイトは、岐阜県岐阜市で「オートモール」カラフルタウン岐阜(リンクは公式サイト)を2000年11月から運営している(同館の資料より)

トレッサ横浜の運営会社・株式会社トヨタオートモールクリエイトは、岐阜県岐阜市で「オートモール」カラフルタウン岐阜(リンクは公式サイト)を2000年11月から運営している(同館の資料より)

トヨタ自動車株式会社(トヨタグループ)が手掛けた「オートモール」としてのカラフルタウン岐阜(岐阜市)に続きオープンしたトレッサは、カラフルタウンと同様に「クルマと愉しむ豊かな生活」をコンセプトとし、関東初進出をした大型商業施設として注目されてきました。

毎日無料で2700台(土日はプラス300台)収容できる駐車場のほか、トヨタ自動車の各チャネルやダイハツの販売店が整備工場を併設した形態で出店。同自動車グループでカー用品とカーメンテナンスを手掛ける「ジェームス」(南棟、株式会社タクティー:名古屋市)も入店するなど、“トレッサ=近所や遠方から車で訪問する”というイメージがあるともいわれます。

無料駐車場やトヨタ自動車の各チャネルやダイハツの販売店が整備工場を併設した形態で出店。カー用品・メンテナンスの「ジェームス」も出店するなど、“車で訪問する場所”というイメージも強い

無料駐車場やトヨタ自動車の各チャネルやダイハツの販売店が整備工場を併設した形態で出店。カー用品・メンテナンスの「ジェームス」も出店するなど、“車で訪問する場所”というイメージも強い

同社によると、実際にトレッサへの来店は66%がマイカ―と、自転車の14%、バスの10%、徒歩の7%を大きく引き離しています。

しかしながら、少子高齢化の進展と単身世帯の増加など社会構造の変化により、「車を持たない」「利用しない」人が増えているとも言われ、「車をお買いもとめいただきやすい環境づくりはもちろんですが、車やバイクなど、オートモールならではのイベントを開催したり、トヨタ自動車との連携を強化した、燃料電池自動車(FCV=水素で動く車)といった“未来の車”を感じさせるような催しを行ったりもしてきました。これからも、ある意味“本業”である、より車を身近にするチャレンジも引き続き行っていきたい」と栗原さん。

川崎鶴見臨港バスに「トレッサ横浜」の全面ラッピング車両を運行。インスタグラムで写真投稿した人に抽選で買い物券をプレゼントするという企画を11月末まで実施している(同館のイベント紹介ページより)

川崎鶴見臨港バスに「トレッサ横浜」の全面ラッピング車両を運行。インスタグラムで写真投稿した人に抽選で買い物券をプレゼントするという企画を11月末まで実施している(同館のイベント紹介ページより)

また、自転車や徒歩、特に同じ“車”である路線バスでの来店を意識した試みは積極的に行いたい」という想いから、先月(3月)10日から11月30日までの間、川崎鶴見臨港バスに、同館のキャラクター「とれおん」を描いた「とれおんバス」を、臨港バスの鶴見駅や新横浜駅からの便(鶴見営業所管内)で運行。SNSのインスタグラム(Instagram)で写真をアップした人を対象とした抽選でのプレゼント実施の試みも行っています。

“モノ”より“コト”消費が増えていると言われていますが、モノを持ちたくないという若年層が増えていることも背景にあるのかもしれません。いずれは“シェア”の理念もより念頭に置き、これから先の10年も考えていかねばなりません」と、4月中旬から「ジェームス」横の駐輪場内(南棟)に設置したばかりの「シェアシェアサイクリングステーション ハローサイクリング(HELLO CYCLING)」(オープンストリート株式会社、港区)を、栗原さんは早速利用してみたといいます。

トレッサ横浜にも「シェアシェアサイクリング」のステーションが新規登場。ハローサイクリングのサイトで、ステーションの場所を確認できる

トレッサ横浜にも「シェアシェアサイクリング」のステーションが新規登場。ハローサイクリングのサイトで、ステーションの場所を確認できる

「乗り捨てができる大手コンビニの参加が増えるとも聞き、今後は綱島SST(Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン、綱島東4)付近でも乗り捨てができるようになるかもしれません」と語る栗原さん。

「車」だけでなく、「車」のビジネスで培ったグループ全体の英知を、どう社会全体の動きに当てはめていくか。

「ディベロッパー大賞CS賞」(2017年、繊研新聞社)や、「地域貢献大賞~倉橋良雄賞」(同、一般社団法人日本ショッピングセンター協会)といった数々の商業施設に特化した賞を受賞している同館らしい「10年後のビジネスの在り様」が、“車社会”を主軸に据えたビジネスモデルの中でどのように展開していくかには、車利用者以外からも大きな注目が集まりそうです。

“日本初”に注目集まるも、どうやって「広く知ってもらうか」が悩み

新設された女性専用の「チャームアップループ」には、休憩スペースとして利用できるソファや、着替えスペースも設置。アロマの香りも漂わせているという

新設された女性専用の「チャームアップループ」には、休憩スペースとして利用できるソファや、着替えスペースも設置。アロマの香りも漂わせているという

その他にも、少子化社会から増加しているとも言われる「ペットを家族に」という発想から、新たに整備したというテラスデッキ&ドックラン(南棟3階)、ゆったり座って寛いでメイクができるチャームアップルーム(南棟3階の女子トイレに併設、ポイントカード利用者を対象としたハーフ成人式(ケーキとポイントを贈呈)、発電バイク(北棟2階)といった10周年記念の試みを続々行っている同館。

日本初出店だというニトリの小型店舗・デコホーム(南棟3階・株式会社ニトリ、札幌市)や、日本初だという商業施設での常勤スタッフがいる常設バスケットボールレンタルスペース・ディーナゲッツ バスケットボールコート(南棟1階・株式会社インディペンデンス、港区)、新しい葬祭スタイルを提案するこころのアトリエはせがわ(南棟2階・株式会社はせがわ、文京区)など、新しいチャレンジの連続で、「多く出店希望者からの引き合いもありますが、こちらから出店提案を仕掛けることも多くあります」(栗原さん)とのこと。

人手不足感を解消すべく、南棟の従業員用休憩スペースもデザイン一新。左側の壁面にはトレッサの10年間の歴史がたどれるコーナーも

人手不足感を解消すべく、南棟の従業員用休憩スペースもデザイン一新。左側の壁面にはトレッサの10年間の歴史がたどれるコーナーも

求人でも、「販売・サービスがメインの業態ということもあり、人手不足感が強い」ことから、休憩スペースをリニューアルするなどの福利厚生にも力を入れているといいます。

一般の商店街に見られるような「後継者不足」や、「閑古鳥」と言われてしまうような寂しげな日本の地方都市の商業施設とは無縁にも感じる“トレッサの賑わい”ですが、栗原さんの悩みは、「どんなに素晴らしいものを導入しても、なかなか多く皆さんに知っていただきにくいんです」と、フェイスブック(Facebook)やツイッター(Twitter)、自社ブログなどで情報発信を試みながらも、「それを広めるのが難しいと感じています」と、広報PR戦略の難しさを感じているといいます。

日本1号店となったニトリの小型店舗「デコホーム」(南棟3階)についても、「まだまだ知られていない。お得な価格で部屋やキッチン用品などのコーディネートもできます。ぜひ気軽に利用してもらえたら」と栗原さん

日本1号店となったニトリの小型店舗「デコホーム」(南棟3階)についても、「まだまだ知られていない。お得な価格で部屋やキッチン用品などのコーディネートもできます。ぜひ気軽に利用してもらえたら」と栗原さん

今年1月には「港北区区民表彰」(横浜市港北区)も受賞し、「地域社会づくりに尽力し、顕著な功績を示した団体」として高い評価を得た同館であっても、特に「港北区と鶴見区の来客で6割にはなりますが、他の横浜市内(17.0%)や川崎市内からも(14.7%と)来客がある」というデータも反映しての、市・区域を越えた新たな“街づくり”へのチャレンジを行っていかねばなりません。

ネットスーパーやネット通販の台頭、綱島SSTの新規オープン(3月)、港北ニュータウン(都筑区)、ららぽーと横浜(同)、武蔵小杉(中原区)といった、“ライバル”とも言える新たなショッピング・センターの開業や拡張、劇的な高齢化でより“狭域化”するともいわれる商圏内での経営環境の中、どのように“トレッサ”らしい経営戦略で客層を確保できるのか。

常勤スタッフから「ボールも借りられる」常設のバスケットボールレンタルスペース(リンクはブログ)や、ドックラン周辺のテラスデッキも新たに整備された。「目的なくお越しいただいても過ごせる場所に」と同館

常勤スタッフから「ボールも借りられる」常設のバスケットボールレンタルスペース(リンクは「とれおんパーク」ブログ)や、ドックラン周辺のテラスデッキも新たに整備された。「目的なくお越しいただいても過ごせる場所に」と同館

あるいは、“日本でここだけ”といった、時代の先鞭(せんべん)としての試みで、大倉山や菊名、新横浜、綱島や日吉からの距離など、利便性が高いといわれる交通アクセスを利用しての、さらに広域からの顧客を惹き付けるのか。

20周年を迎える頃、トレッサ横浜の今とは異なる“賑わい”が実現しているのか。その日が来ること、また20周年に向けた更なる同館のチャレンジに、これからも日々期待していきたいものです。

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【参考リンク】

トレッサ横浜の公式サイト

株式会社トヨタオートモールクリエイト公式サイト