このほど横浜市が公表した平成28年度(2016年度)の「包括外部監査の結果に関する報告書」では、交通局が運行するバス路線の約6割が赤字であることから、「赤字路線の改善や赤字縮減の目標・方針を取りまとめ、進捗状況の管理や見直しに取り組む必要がある」と指摘しています。
昨年(2016年)5月から今年(2017年)2月にかけて行われた包括外部監査では、テーマを横浜市の交通事業に絞り、現状と課題を約200ページにまとめています。
報告書では、市営バスが4割ある黒字路線の利益で、6割を占める赤字路線の損失を埋める形で営業利益を確保しているものの、営業費用が民間事業者の水準まで下がっていない現状を指摘。
たとえば、交通局は磯子と緑にある2営業所については、100%子会社である横浜交通開発株式会社(新横浜3)に委託していますが、同社正社員の平均年収が約480万円超(2015年度、平均年齢43.9才)である一方、交通局の正規職員は平均年収が715万円超(同、同47.4才)という状態だといいます。
そうした点を念頭に、「運行費は委託先の方が低い現状を踏まえ、運行効率化が見込める路線については、更なる移管を進めていくことも必要であると考える」と指摘しています。
赤字路線の廃止などには言及されていませんが、さらなる赤字対策を求める形となった今回の外部監査報告書。港北区内には、綱島や大倉山、菊名、新横浜など多くのエリアで市営バスが運行されているだけに、人ごとではありません。
では、区内の路線別収支はどうなっているのでしょうか。現在の最新データである2014年度の結果をまとめたのが下記の表です。「営業係数」は、100円を稼ぐために必要な金額を示すもので、100を超えると赤字ということになります。
港北区内でも11路線中6路線が赤字という状況で、横浜市営バスの縮図のようになっていました。
綱島や新横浜などの港北区内と鶴見駅を結ぶ路線の多くは黒字でしたが、新横浜駅から太尾新道と大倉山駅前を経由して鶴見駅を結ぶ「6系統」に限っては、年間で1372万円の赤字を叩き出しています。
横浜駅西口を出発し、神奈川区の浦島丘から綱島街道を走り続けて綱島駅へいたる「59系統」は年間3000万円近い損失。新横浜駅から日産スタジアム前を経由して地下鉄ブルーラインの仲町台駅を結ぶ「300系統」は3410万円の赤字です。
ただ、全体で見ると、鶴見駅を発着するドル箱の3路線(104・13・41系統)だけで3億円以上の利益が出ており、6路線による1億円超の赤字額を大きく上回ります。
港北区内を走る市営バスは、鶴見駅系統の路線が収益を支えているため、現在のところは赤字対策や民間委託といった議論からまだ遠いといえそうです。
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・日吉・綱島住民はぜひダウンロードしたい!身近な地図とバスの路線図(2016年4月8日、横浜日吉新聞)
【参考リンク】
・平成28年度包括外部監査結果「交通事業について」(横浜市)