新横浜・菊名・大倉山・新羽など港北区南部の地域情報サイト

1区1館”の基本方針は変えず、建て替え時の機能拡充や、図書取次所の増設は積極的に行っていく考えです。

横浜市教育委員会は、今後10年から20年後の図書館像を示す「横浜市図書館ビジョン」の原案を今月(2024年)2月14日に開かれた横浜市会(市議会)の「こども青少年・教育委員会」で公表しました。

市立図書館の一覧、築年数は昨年(2023年)4月1日時点で算出されている。築年数では30年から40年が目立ち、港北図書館が突出して古い(「横浜市図書館ビジョン(原案)」資料編の図表に着色する加工を施した)

図書館ビジョンは、市内18区にある各図書館の建物が最新でも築24年(磯子区)、最古では築62年(港北区)と建て替えの検討時期を迎える施設が多くなってきたことなどを背景に策定されたものです。

今後の図書館整備については、人口減公共施設の「規模効率化(ダウンサイジング)」(横浜市の持続的な発展に向けた財政ビジョン)が市全体で求められていることや、財政負担面から現在の「1区1館」という基本方針を堅持。

「図書館の施設整備の考え方」では「1区1館」を明記する一方、機能の拡張や利便性の高い場所での整備についても触れている(「横浜市図書館ビジョン(原案)」より)

そのうえで、建て替えの際には「現地での建替えやリノベーションを基本としつつ、より利便性の高い主要駅周辺等への移転などにより、アクセス性の向上や、機能拡張に必要な空間を確保します」(図書館ビジョン)。

また、「集客圏の広さなど、立地場所が持つ地域特性などを考慮し、より幅広い利用が期待できる場所で整備する場合には、想定される圏域・利用人口を勘案した規模とします」(同)とし、建て替え時に利便性の高い駅近くに移転したり、規模を拡大したりする可能性を示しました。

図書館や図書取次所から2キロ以上、移動図書館(はまかぜ号)からも1キロ以上離れている空白域は港北区や都筑区、緑区、旭区、戸塚区、金沢区などの郊外部で目立つ(「横浜市図書館ビジョン(原案)」より)

加えて、市内では図書館サービスの提供場所から2キロ以上離れた“空白域”が多数点在していることから、交通結節点や集客力の高い商業施設、空白域の地区センターなどに「図書取次所」の設置を進める方針を明記。

サービス面では「デジタル技術を活用し、いつでもどこでも利用できる図書館サービスを提供します」(同)として、電子書籍やデジタルアーカイブの拡充にも触れています。

図書館が提供する蔵書・情報については「コレクション」という名称で充実するとしている。一方、市立図書館の収容能力が限界に近付いているとも記載されており、保存環境の拡充に向けた具体案の策定が望まれる(「横浜市図書館ビジョン(原案)」より)

蔵書についても「コレクション(図書館が提供する蔵書・情報)を充実させます」「紙とデジタル、様々な情報媒体との最適なバランスを考慮します」(同)との考え方を盛り込みました。

今回、市教育委員会が原案を公表した図書館ビジョンは、3月中に策定を目指すとのことです。

今後の図書館は「なんでもあり」?

今回の図書館ビジョンでは、「読書に加えて、触ったり、聞いたりと様々な感覚で『遊ぶ・体験する』ことができ、様々な知や人、文化に出会え『まちとつながり・交流』できる、“わくわく”を見つけられる場になります」と打ち出しました。

「新たな図書館像の5つの基本方針」では、「子育て支援」や「まちとコミュニティのため」など幅広い機能を持たせることをうたっている(「横浜市図書館ビジョン(原案)」より)

具体的には、読書や調査研究といった機能に加え、「市民交流・コミュニティ形成」「子育て支援」「まちづくり・にぎわい創出」「体験・実践プログラム」などの機能を拡充させていくといいます。

地区センター・コミュニティハウスといった市民施設や子育て支援施設が担うような役割も図書館の新たな機能として盛り込んでおり、「夢はあるが、何をしようとしているのか分かりづらい」「財政面もあるので、今何ができるのかをよく考えてほしい」(横浜市会「こども青少年・教育委員会」の委員ら)との声も聞かれました。

横浜市が目指す新たな図書館像のイメージ、地区センターなどの既存市民施設とかぶる機能も見られる(「横浜市図書館ビジョン(原案)」より)

市民から常に要望の多い図書館の増設は行わない方針を打ち出しつつ、老朽化などによる建て替えの時機をとらえて床面積の拡大も視野に入れ、機能の拡充を図っていく考えです。

市教育委員会は、図書館の面積を拡大する場合には現在地での建て替えは難しいとの見方を示しており、複数の鉄道路線が乗り入れ乗降客の多い駅の近くでの建て替えもありうるとのこと。

鶴見が建て替え1号か、港北は築62年

現在、鶴見区ではJR鶴見駅西口から徒歩7分ほどの場所にある豊岡小学校の建て替えを機に、近くの鶴見図書館(築44年)を含めた複合施設化が検討されており、議論が順調に進んだ場合は新たな図書館整備の第一号になるとみられます。

港北図書館の見た目はそれほど古さを感じさせないが、今から60年以上前の1961(昭和36)年11月に建てられた旧港北区庁舎の建物を転用している(資料写真、2020年撮影)

港北区では人口約36万3000人(2月1日現在)に対して1館しかない港北図書館(菊名6)は、市の公共施設でもトップクラスの古さとなる「築62年」の建物を使い続けています。旧区庁舎から図書館・菊名地区センターへの転換時に改修が行われたとはいえ、それからでも40年以上が経過しました。

区内では綱島駅東口の再開発や、新横浜駅前(西広場側)の市有地活用などによる変化も今後控えているだけに、新たな図書館ビジョン基づいた検討と対応が急がれます。

)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です

【関連記事】

横浜市立「図書館」が新年1月14日まで一斉休館、システム刷新で利便性高める(2023年12月21日、予約や検索の機能を拡充させた)

市図書館の取次所「日吉の本だな」は1月19日オープン、駅前の慶應協生館に(横浜日吉新聞、2021年11月24日、日吉駅前に港北区内で初の取次所が新設されている)

【参考リンク】

横浜市図書館ビジョン(原案)を策定しました(2024年2月14日、横浜市教育委員会事務局)