子育てには地域でのつながりが大切だということが横浜市トップとの共通認識となりました。
子育てをテーマに横浜市長と意見交換する「市長と語ろう!」が大倉山3丁目の地域子育て支援拠点「どろっぷ」で今週(2022年)8月29日に開かれ、港北区内の各地域で子育て支援活動を行う9施設から運営6団体の責任者7人が参加し、地域の現状や思いを伝えました。
「市長と語ろう!」は今年5月21日に金沢区を皮切りに始まり、各区の子育て関連団体に山中竹春市長が出向き、意見交換を行う場となっています。
18区でもっとも人口が多く、出生数も最多の港北区では、区内に2カ所ある「地域子育て支援拠点」(どろっぷ・どろっぷサテライト)と「親と子のつどいの広場」(7カ所)を運営する団体の責任者が集まるというめずらしい形で実施。
1つの団体にとどまらず、各地域を知る施設の運営者が集まったことで、地域が抱える個別の課題も飛び出し、予定時間をオーバーするほど話し合いが盛り上がりました。
当日行われた議論の概要をお伝えします。
港北区での「市長と語ろう!」(8月29日)概要
<参加者>
▼港北区「地域子育て支援拠点」
- 「どろっぷ」(大倉山3、運営:認定NPO法人 びーのびーの):田之畑有美さん
- 「どろっぷサテライト」(綱島東3、運営:認定NPO法人 びーのびーの):(田之畑有美さん)
▼港北区「親と子のつどいの広場」
- 「おやこの広場びーのびーの」(篠原北1、運営:認定NPO法人 びーのびーの):斎藤靖子さん
- 「たかたんのおうち」(高田西4、運営:特定非営利活動法人 横浜たかたネットワーク):芹田(せりた)賢治さん
- 「ひだまり」(樽町1、運営:たるぴよ):横溝和子さん
- 「こんぺいとう」(日吉本町4、運営:NPO法人 日吉子育て応援団):左右田(そうだ)美矢さん
- 「つどいの広場ぽっけ」(岸根町、運営:特定非営利活動法人 横浜子育て支援グループぽっけ):渡邉歌子さん
- 「ともとも」(新吉田東6、運営:特定非営利活動法人 ポケット):金田友美さん
- 「つどいの広場ぽっけ新横浜」(新横浜1、運営:特定非営利活動法人 横浜子育て支援グループぽっけ):(渡邉歌子さん)
子育て支援の充実は「都市力」の一つ
<山中竹春市長>
ピアノ演奏で出迎えていただいたのは初めてです。(※参加者の金田さんがピアノをひいて市長を出迎えた)
明日(8月30日)で市長に就任してからちょうど1年になりますが、「子育て支援」を“一丁目一番地”としてきました。自分自身が子育て世代ということもありますが、子育てしやすい町は高齢者が住みやすい街でもあると思っています。横浜市が選ばれる都市であるために一番重要なことの一つです。
子育て団体の皆さんとは、今年5月からこれまで16の区で話し合ってきまして…あ、(港北区が)17区目になったのは他意はありません(参加者一同笑)、私の日程とみなさんが集まれる日のマッチングでこの日になりました。北へ行ったり南へ行ったりしてます。
一口に子育て支援と言っても乳幼児から成人になる直前までの広い範囲にわたっており、各年代で抱えている問題で違い、同じ年齢を対象にしていても地域によって変わったりもします。そのように多様だということを(各団体から)教えていただきました。
最前線で活動されている皆さんからのお話しで理解したのは、地域のつながりのなかで子育てをサポートしていくことの重要性です。
私自身も子どもが小さい頃にはそういう環境に助けられました。皆さんはそんな環境を提供しており、横浜市でもこういう環境をつくっていきたいと思っています。
何らかの答えを求めている親御さんもいるかもしれませんが、居場所をつくるという点でこういった機能が充実しているのは都市力の一つではないでしょうか。
今日はざっくばらんに意見交換させていただければと思います。
出生が年3000人を超えるのは港北区だけ
<地域子育て支援拠点「どろっぷ」・田之畑有美さん>
まず、港北区の特徴について説明をさせていただきます。
データから見る港北区の特徴は3点あり、1つは市内で最大の出生数があることで、年間3000人を超える区は港北区のみです。
2つ目は20代から30代の転出入者が多いという点です。これは慣れない土地で頼れる人がいないなか、妊娠、出産、子育てをスタートする方が多い現状とも言えます。
3つ目が6割の方が第1子ということで、初めて子育てをする方が多いということです。
港北区と「どろっぷ」が連携して行っている4カ月児検診調査でのアンケート結果のデータを見ていきます。港北区では4年前からいち早く取り入れて実施しているもので、毎年85%程度の回収率があります。
産後の家庭状況の把握から産前の支援の必要性など、今後の取り組みの目指すべき方向を支援関係者とも共有したうえで妊娠期支援に反映しています。
<山中市長>
(データ内に)「里帰り出産」とありますが、これは港北ではないということですか?
<どろっぷ・田之畑さん>
別の県の方が多く、この新型コロナウイルス禍で里帰りができないという方の率が高くなっています。両親になかなか頼れないとか、来てもらえないという現状があります。
<山中市長>
なるほど。(データを見ると、アンケート対象者の)4割が(居住年齢)2年未満ということで、最近引っ越されてきた方なんですね。
<どろっぷ・田之畑さん>
まだこの街に馴染んでいなかったり、地域で知り合いがいなかったりというなかでの子育てとなっています。
<山中市長>
興味深いデータです。
<どろっぷ・田之畑さん>
本年度も区役所の協力を得て、470通のアンケートを配布しています。回答の戻りを待っているところです。
<山中市長>
まさにこういうデータは活用しなければいけないですね、重要です。
<どろっぷ・田之畑さん>
ありがとうございます。コロナ禍の影響で里帰り出産が10%以上減っていて、親族の協力が得られない、また夫婦のみで子育てをしている家庭が年5%ずつ増えているという状況もあります。
また、「子育て支援拠点」(「どろっぷ」「どろっぷサテライト」)や「親と子のつどいの広場」(区内7カ所)を利用したいと思っていても、「まだ利用できていない」という家庭もおよそ5割程度いることも大きな特徴の一つかと思っています。
<山中市長>
お子さんが生まれたときに手続きすると思いますが、その時に区役所からチラシが配られる形で「子育て支援拠点」や「親と子のつどいの広場」の案内はされていると思うのですが、伝わっているのでしょうか。
<親と子のつどいの広場「ぽっけ」・渡邉歌子さん>
出産から4カ月までに「赤ちゃん訪問」(横浜市の「こんにちは赤ちゃん訪問事業」)が行われていますが、その時には必ず「こういう居場所があるよ」ということはママたちにお知らせしています。
<山中市長>
(赤ちゃん訪問は)うちの家にも来ていただきました。利用したいのにできていないという方が半分くらいいるということなんですね。
<どろっぷ・田之畑さん>
利用したいと思っていても、今の現状(コロナ禍)のなかでなかなか外へ出られない方もいます。また、お子さんが小さいなかで自宅から遠いなど物理的な理由もあります。
<山中市長>
なるほど、このなかの何パーセントくらいが支援拠点や広場を利用されているのでしょうか。
<どろっぷ・田之畑さん>
今回のデータにはないのですが、別のデータでは2割くらいです。
<ぽっけ・渡邉さん>
生後4カ月だとなかなか家から出られないので、もう少し経ってから来られるということもあります。
<山中市長>
この場所(支援拠点や広場)は市としても宝なので、どうやって使ってもらうようにするか……(運営者の皆さんを)サポートしていきます。
子育て支援者が連携して課題を解決
<どろっぷ・田之畑さん>
ありがとうございます。次に港北区9拠点ネットワーク会議「ぎゅっと」についてご説明します。
港北区では平成22(2010)年度から区役所や社会福祉協議会も加わり、「子育て支援拠点」(どろっぷ・どろっぷサテライト)と「親と子のつどいの広場」(7カ所)が連携して情報共有の場を持っています。
また、保育所や乳幼児一時預かり事業などとも連携し、一時預かりを通して見えてきた親子の現状や関わりなどについても意見交換しています。この10月にも第一回の情報共有の場を設定しているところです。
また、「こうほくnetほいっぷ」という「親と子のつどいの広場」から選出された子育て当事者グループの活動も応援してきました。
次に「広場」と行政による妊娠期からの地域へのつながりについて説明させていただきます。
年間3000人の出生がある港北区では、妊娠期からいかに地域につないでいけるか、という部分に重点的に取り組んでいます。
区役所で母子手帳を交付する際に「にんしん・あんしん・セレクト」という妊娠期に特化したリーフレットを全員に配布しています。
これは、地域やプラザ、拠点での両親教室や「親と子のつどいの広場」での妊娠期プログラムなど情報を一元化しているものです。デザインは子育て支援拠点の利用者が特技を生かして担ってくれています。
また、子育て支援拠点で開催している「ちょこっと育児体験」や「出産準備プログラム」は、近隣の認可保育園とも共同で実施しています。
さらに両親教室の参加者や、区役所から妊娠8カ月の方へのお手紙を送る際にも「子育て広場体験チケット」を配布し、妊娠中から身近な「親と子のつどいの広場」へつなげる後押しもしています。
「親と子のつどいの広場」では、マタニティプログラムやヨガ、先輩家庭との交流など、それぞれの地域特性を生かしたユニークな妊娠期プログラムを実施することで、先輩家庭や支援関係者とも出会える機会を少しでも多くつくっています。
港北区の妊娠期の取り組みのなかで特徴的なものとして、「土曜両親教室」では年間60回、日中と夜のオンライン開催を含めて実施しています。
毎回参加人数の枠を超える申し込みがあり、殺到している状況です。土曜日開催のため、パートナーとの参加が多いことも特徴です。
「こんぺいとう」(日吉本町4)では、第3土曜日に父親同士の仲間づくりの場として「こんぺいとうさん」を約13年間開催していて、大変人気のある講座です。
「ともとも」(新吉田東6)では“プレママデー”を設け、第1・3土曜日にはニーズの高い沐浴体験をできる日を設けています。
ここでは「親と子のつどいの広場」の取り組みをすべて取り上げられないのですが、今後もここにいる皆さんと一緒に区内で一体となって、応援メッセージを伝え続けていきます。
妊娠・出産は地域への入口となるため、子育ての社会支援が必要とされているエリアについても、この妊娠期支援を通して子育ての情報発信や場づくりに注力していきます。
<親と子のつどいの広場「たかたんのおうち」・芹田賢治さん>
続いて、「親と子のつどいの広場」と地域、それぞれの強みを生かした連携についてお話しします。
ここにいる「親と子のつどいの広場」の代表者の皆さんは、地域との連携を図るため、自治会・町内会や社会福祉協議会、区役所など色んなところと連携を取りながら活動しています。
一例として高田地区の「子育てネットワーク会議」の取り組みをご紹介します。
約14年前に当時の「主任児童委員」が子育て支援者、保健師、地域ケアプラザ、幼稚園の約8人を集めて地域の子育てについて話し合う場をつくり、その後、平成25(2013)年にネットワークの構築を図り、現在は30団体・40人の責任者が集まる会議となりました。
新型コロナ禍では2年間、開催を見送っていましたが、会場参加とオンライン参加のハイブリッドで今年6月に開催することができました。
会場に28人、オンラインに8人が参加しました。2年間、会議を開けなかったこともあって参加者の皆さんは、やはり相談し合いたいという気持ちがが強くみられました。
このネットワーク会議の強みは、地域で子育てに携わる人が一同に顔を合わせて話し合えることです。
たとえば、新しくできた保育園などでは地域のことが分からず、どこに相談して良いのかと困ってしまうことがあります。
その時、この会議に参加している連合町内会をはじめ、他の保育園や幼稚園、主任児童委員などに相談して問題を解決していきます。
また、会議終了後は、これが一番大切なのですが、参加者間で自由に色んな相談事をしています。
今回の会議でも、放課後児童クラブの方が私のほうへ相談に来られましたので、主任児童委員の方や役所の方、保育園の方など、その場で集まって15分ほどかけて話し合って解決することができました。
コロナ禍での子育てに与えた影響
<山中市長>
ありがとうございます。子育てに関しては色んなご意見をいただいており、保育園の充実や、あるいは一時預かりを充実してほしいという声もあります。在宅で子育てされている方は、在宅での子育てサポートを広げてとの意見も聴きます。環境が多様なので、細かな対応をしていかなくてはならないと考えています。
皆さんにお伺いしたいことがたくさんあるのですが、港北区9拠点ネットワーク会議「ぎゅっと」で共有されている子育ての支援ニーズにはどういうものが多いのですか。
<どろっぷ・田之畑さん>
今、コロナ禍ということもあって、自分の子育てを肯定的にスタートできなかったといいますか、誰にも手伝ってもらえなかったとか、制度やサービスも使えなかったとか、人と会えないことで子どもに多くの経験をさせてあげられなかった、といった背景があって、自ら悔いてしまうという相談が多くなっています。
私たちとしては、よく子育てを頑張ってきたね、本当によく成長しているねといった言葉で、肯定的な形でバックアップできるように、これまでの子育てに感謝の気持ちを伝えるようにしています。
<山中市長>
子育てに自己肯定感を持ってもらえるようなイメージですね。参加されている方の親御さんは、共働きとか在宅で子育てしているとか、どのような環境の方が多いのですか。
<どろっぷ・田之畑さん>
働いている方が6割くらいでしょうか。
<山中市長>
これは港北区の特徴ですね。
<どろっぷ・田之畑さん>
仕事では頑張れば評価されるということがあっても、子育てはやっても「当たり前」みたいな社会になっていると、キャリアを積んできたような方には、助けを求めたり、今苦しいということを人になかなか伝えられない、頼ってはいけない、と思われている方も現状として多いように感じます。
<山中市長>
そうした方が相談に来られるきっかけは、区役所からの案内などを見て来られるのでしょうか。
<どろっぷ・田之畑さん>
電話の方もいらっしゃいますし、オンラインという場合もあります。先ほど、「ぽっけ」の渡邉歌子さんのお話しにもありましたが、「赤ちゃん訪問員」さんの後押しもあります。
<山中市長>
自分の経験を思い起こしてみても、どうやってこういう場所(支援拠点や広場)につなげるかが大事で、一度輪のなかに飛び込んできていただければ、温かいんだな、ということが分かっていただけると思うんです。
僕自身、市長になる前はこうした場所があることはあまり知りませんでしたが、しばらく経って行ってみたら、温かい場所だなと思ったことがありましたので、飛び込むきっかけをつくるのが行政の役割だと思います。
<港北区子ども家庭支援課・永見徹さん>
私たち区役所でも職員が母子訪問や乳幼児健診といった場面で、親の方が孤立していると感じた時には、ここに行けば、(会場の)こういう人たちがいますよ、ということは伝えるようにしています。
<山中市長>
それはいいですね。必要ではない時に案内を渡されても見ない人が多いと思うので、必要な時に案内すると“ささり”ますよね。
<ぽっけ・渡邉さん>
私たちの広場のスタッフはほとんど「赤ちゃん訪問員」をしています。「私はここ(広場)にいるよ」ということを伝えると、「この人がいるから大丈夫かな」と思って来てくれます。一歩踏み出すには勇気がいります。それだけに顔と顔のつながりはとっても大事なんです。
<山中市長>
そう、おっしゃる通りで、一歩踏み出すには勇気がいる、まさにその一言に尽きます。一歩を踏み出してもらうために、最初はスマートフォンでまずはアクセスできるようなことも、行政がサポートしていく必要があるのかもしれません。まさに“はじめの一歩計画”ですね。(一同笑)
ニーズによって他の施設や支援者も紹介
<山中市長>
芹田さんにお伺いしたいのですが、港北区9拠点ネットワーク会議「ぎゅっと」で各施設が連携されていると思いますが、メリットはどういう部分にありますか。
<たかたんのおうち・芹田さん>
やはり情報交換ができることです。また、各施設によって個性がありますので、たとえば「たかたんのおうち」(高田西4)では“傾聴”を心掛けていますが、(来訪者の)ニーズによっては他の広場を紹介することもできます。区内にはこのメンバーがいるので心強いです。
ネットワーク会議があることで、支援者の側も孤独にはなりません。私自身、代表者なのでスタッフには相談しづらいこともあります。そういう時はこのメンバーに相談して解決する、ということも多いです。
<山中市長>
支援者の側も孤独にならない、という点は重要です。区によっては意外と横展開できていない場合もありますが、港北区の場合、横の連携は自然発生的だったのですか。
<たかたんのおうち・芹田さん>
地域子育て支援拠点である「どろっぷ」が中心になって行っています。
ありがとうございます。渡邉さんに先ほどのお話の続きを伺いたいのですが、来訪された方の相談内容をどのように区役所へつなげていますか。また、普段の連携状況や行政への希望はどういう点でしょうか。
<ぽっけ・渡邉さん>
港北区の区役所へは30年くらい出入りしていまして、私がかかわった頃、ちょうど子育て支援が本格化したころでした。そうした関係から保健師さんとのつながりが深く、保健師さんが渡邉のことを知っていてくれて、何かあると話ができますので、上手く連携できています。
<山中市長>
渡邉さんのように積極的に(行政側とも)人間関係をつくっていただけるといいのですが……。必ずしもそういう区ばかりではないので、保健師さんと会う機会を作っていってもいいかもしれないですね。
<ぽっけ・渡邉さん>
港北区がすごいのはみんな力があるんです。(子育て支援者は)「親と子のつどいの広場」を立ち上げる前に自治会・町内会など地域で活動してきた“土台”があり、地域で根付いています。これは区の強みだと思います。
<親と子のつどいの広場「ひだまり」・横溝和子さん>
地域で子育てサロン「ちびたる」を25年運営しているのですが、かつて利用していたママたちが今は担い手となって運営してくれています。
ここは運営日が少ないことがあり、もっと運営日を増やそうということで、利用者の要望から今の親と子のつどいの広場「ひだまり」が生まれることになりました。広場の部屋を借りる時などもよくしてもらい、地域に支えられ、恵まれていると感じます。
利用者は勤めに出ている方も多く、幼稚園や保育園の話もよくするのですが、“その先”があるんです。
先ほど、自己紹介のときに「港北で唯一(樽町地域には)小学校がない」と申し上げたのですが、樽町の子どもたちは(隣接する地域の)大曽根小学校(大曽根2)や師岡小学校(師岡町)へ通い、そこに入りきれない子どもたちは鶴見川を渡って(対岸の)綱島東小学校(綱島東3)まで行くといった状況です。
そのため、幼稚園や保育園の話をしながら「学校はどっちに行けばいいの?」「通うのが大変だったら転居しなければならないかも」といった話も出てきます。
きょう、この「市長と語ろう!」の場に出るということで、地元町内会の会長から「樽町に小学校がないことを絶対言ってきて!」と要望がありましたので……(一同笑)
<山中市長>
それはまた別の……ご相談させてください(一同笑)。今のお話しから渡邉さんも横溝さんも今の活動を積極的に楽しまれている様子が伝わってきました。
横浜は小さい区でも人口が10万人あり、一つの「市」くらいの規模です。港北の36万人といえば大きな都市、「中核市」の規模です。
それだけに子育て支援者の方と、それを求めている区民をいかにつなげるかが大事で、行政が汗をかかなければならないと思います。皆さんのお話しから、つながりの重要性をあたらめて認識し、頑張っていかなければと感じました。
「パパ」向けの支援で大切なこと
<山中市長>
父親向けの取り組みを工夫されているということで、「こんぺいとう」の左右田(そうだ)さんにお尋ねしたいのですが、父親に向けた支援のポイントはどんなところでしょうか。(自分自身も父親なので)耳が痛い話かもしれないのですが……、きちんと聴いていきます。(一同笑)
<親と子のつどいの広場「こんぺいとう」・左右田美矢さん>
こんぺいとうで月に1回開いている父親向けの「こんぺいとうさん!」に参加されている方は、主体的に子育てに関わっている方がすごく多いです。
自身も仕事を持つなかでも、奥さんをねぎらって支え、ともに子育てしていますので、「パパたちをねぎらう」ということをメインとした活動としています。
<山中市長>
ご家庭によっては「お父さんを巻き込みづらい」ということもあるかと思うのですが。
<こんぺいとう・左右田さん>
そうですね、ママが「こんぺいとうさん」のチラシを置いていても、スルーされてしまう、シャイで恥ずかしいからパパは来れないという方もいたりして、全員が参加していただくには難しいところもあります。ただ、毎回5組の定員はすぐに埋まります。
今のパパたちは情報をしっかり得ているところがあって、オムツや離乳食に詳しかったり、育児休暇をとっていたり、すごいと思うことはたくさんあります。
<山中市長>
市役所の例なのですが、育児休暇は100%を目標にして「取って当たり前」「取らないといけない」という雰囲気を醸成していきたいと考えており、企業でもそうした方向へ向かって加速しているので、左右田さんが行っている活動はもっと需要が増えてくるのではないでしょうか。行政としても父親を巻き込む雰囲気を醸成しなければと思っています。
<こんぺいとう・左右田さん>
パパも初めての時はすごく緊張して来られることが多いんですね、まずはママとの関係をしっかりつくったうえで、「安心できて楽しいところだよ」といった情報をパパにも伝えてもらうことが大切かもしれません。
<山中市長>
初めて訪れる時は緊張する……、すごくわかります。ありがとうございます。
支援の情報をどうやって伝えるか
<山中市長>
金田さんの「ともとも」では、妊娠期からのサポートをされていますが、地域につなげていく取り組みを充実させていくうえではどういったことが必要ですか。
<親と子のつどいの広場「ともとも」・金田友美さん>
他の広場と比べ、妊婦さんが一番来づらい広場ではあるので、一生懸命いろんな取り組みをしていおり、今度の土曜日もプレママのための「癒しのマタニティコンサート」を開きます。
付加価値を付ければ来ていただけるかな、ということで、場所も「新羽地域ケアプラザ」(新羽町)をお借りし、コンサート以外にも先輩ママやパパとのお話もできる、という場を設けましたが、やっと1組の方から申し込みがありました。
周知は一生懸命やっているのですが、なかなか集まりません。あとは産婦人科にチラシを置いてもらうとかでしょうか。
<山中市長>
(告知の面で)行政のほうでもなんとかしなければなりませんね。
<港北区子ども家庭支援課・永見さん>
港北区には産婦人科がそれほど多いわけではありませんので、個別にお願いすることもできるかもしれません。
<山中市長>
もし、大変でしたら本庁を通して医師会などにお願いします。最初に(情報に)触れる機会をつくることが重要なところですね。訴求力のある「タウンニュース」さんとかにご支援とかしてもらえると……。SNSでは見る限界があるのかもしれませんので。
「一時預かり」の高い需要と現状
<山中市長>
びーのびーの・斎藤さんに教えていただきたいのですが、今、一時預かり機能の需要は今どういう状況でしょうか。
<親と子のつどいの広場「おやこの広場びーのびーの」・斎藤靖子さん>
一カ月先の予約まで埋まっています。
<山中市長>
えっ、一カ月先まで!
<おやこの広場びーのびーの・斎藤さん>
一時預かりは対面での予約になっていまして、これはお母さんとお子さんの状況をスタッフが把握し、また対面することで利用者の方とスタッフの信頼関係を築くことも目的としています。
そうしたことから、まずは「広場」を5回利用したうえでの登録という形になっているのですが、需要が多くて枠がすぐに埋まってしまう状況です。
ただ、「親と子のつどいの広場」では一時預かりに特化しているわけではなく、広場のなかでお母さんたちがみんなで見守るという形を大切にしたいと思っています。
また、一時預かりの需要に応えるシステムとして横浜市内には「乳幼児一時預かり事業」(港北区内4カ所の保育園など)や「横浜子育てサポートシステム」(地域の会員間で預かる仕組み)もありますので、広場の一時預かりも含めて3つの一時預かりがあるということをお話しし、それぞれ登録しておくとチョイスしやすいということはご説明しています。
地域での子育てを「孤立させない」
<山中市長>
(職員から「そろそろお時間です」)あと、10分くらい……最初は50分くらいで終わる予定だったのですが、オーバーしてしまいすみません。地域に子育て支援の場があることの意義をあらためてお聴きしたいのですが。
<ぽっけ・渡邉さん>
安心して行ける場所があることで、子育てで孤立しないことです。「親と子のつどいの広場」だけでなく、道で会った時もそうですが、地域で見守っている安心感が大事です。少子化は不安だから子どもが増えないので、親じゃない人も見守ってくれる大切さ、これが一番の基本です。
港北区には「広場」が7カ所あって多いほうなのですが、サンダルで行けるような範囲にもっと増えたらいいな、と思っています。
<山中市長>
今、(私のほうに)ボールが飛んできたという感じがします。(一同笑)
<どろっぷ・田之畑さん>
子育ての「社会化」、つまり地域全体で子育てを支えていくとのメッセージが大事です。そして、支えられることで、今度は自分が支える側に回る、というように循環していくことで地域人材をつくっていくことにつながります。
妊娠・出産という地域の入口のところで、先ほどの「はじめの一歩」のところをいかに敷居を低く、広く開いていくかが大事だと思いました。
また、「親と子のつどいの広場」や「地域子育て支援拠点」に来られない方との接点をつくることが重要ですので、最近は電動自転車で区内の公園などを回り、お母さんたちの声を聴くこともしています。
お話を伺っていると、一日子どもとどうやって過ごしていいか分からないといった声も聞きます。区が広いからこそ、どうしていいのか分からない人もまだまだいると感じています。
自分たちから出かけて声を聴き、(子育て拠点や広場が)少しでも本音を話せるような社会資源となるようにしていけたらと思います。
「広場」を維持していくための苦労
<たかたんのおうち・芹田さん>
市長、もう一つボールを投げていいですか。切実な問題なんですが、「親と子のつどいの広場」の事業は市の補助事業として運営しており、つまり、私たちは横浜市から運営費を補助してもらって運営しています。
その予算の8割から9割は人件費と施設の家賃ですが、最低賃金の額も上がっており、予算がひっ迫してきます。広場を維持していくうえで、ご配慮をいただけたらと思います。
<山中市長>
これは庁内に持ち帰り検討していきたいと思います。本日は色々な取り組みや思いをお聞かせいただきありがとうございました。何より、皆さんが生き生きと活動されているのが嬉しく、お支えしていかなければと思いました。
地域で見守るという形は、横浜がやってきた形ですが、担い手不足や新型コロナの影響、あるいはお父さんお母さん世代が若年化するにしたがって、アウトリーチ(働きかけ)がしづらくなったりとかさまざまな課題があるかと思います。
地域で見守っていく、という横浜の姿勢は、課題はあるものの、それを克服してより強めていかなければならないと感じています。
皆さんのような気持ちを持っている方々にどれだけ関わっていただけるかが重要になってきます。
私としては地域とのつながりという部分はさらに強化していかなければと思います。今日はお時間いただきありがとうございました。
(2022年8月29日の港北区における「市長と語ろう!」は以上です)
(※)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」と「横浜日吉新聞」の共通記事です
【参考リンク】
・「市長と語ろう!」について(横浜市市民局)
・横浜市「地域子育て支援拠点」の案内(横浜市こども青少年局)
・横浜市「親と子のつどいの広場」の案内(横浜市こども青少年局)