明治末期以来の港の歴史を伝え続ける「横浜赤レンガ倉庫」(中区新港)で、今年(2022年)6月から行われていた大規模改修が終わり、あす12月6日(火)には館内の25テナントが入れ替わるなど刷新され、グランドオープンセレモニーも行われます。
横浜港の新港ふ頭で明治末期から大正初期に建てられた赤レンガづくりの大型倉庫(3階建て)2棟を活用し、商業・文化施設として生まれ変わった「横浜赤レンガ倉庫」は、日産スタジアムが決勝戦などの会場になったサッカー「2002日韓ワールドカップ」の開催に間に合わせる形で2002(平成14)年4月にオープン。
2棟のうち、大さん橋客船ターミナル寄りに位置する小型の「1号館」は約400席のホールや多目的スペースを中心にした文化施設(1階は市内企業を中心とした商業テナント)とし、隣接する大型の「2号館」は約50のテナントによる商業施設として運営されてきました。
建設から約110年、商業・文化施設となってからも20年が経過して老朽化が進んできたことから、昨年(2021年)から外壁や屋根瓦の改修を行い、今年は5月以降に全館を休館して空調や電気設備の更新などを実施。商業・文化施設となってからの大規模改修は初めてだといいます。
同施設では今回の改修に合わせ、館内のテナント25店を入れ替えるとともに、計66店(2号館55店、1号館11店)が出店する形で12月6日(火)にリニューアルオープンを予定。
新店舗を増やすことに加え、2号館の1階にある「フードコート」を刷新したり、テラス席エリアやペット同伴可能エリアを拡大したりするとともに、1号館の1階には「歴史展示スペース」も新設するとのことです。
オープン初日となる6日(火)には2号館の道路側入口で9時45分からグランドオープンセレモニーが開かれ、先着400人に横浜赤レンガ倉庫開業20周年記念ロゴが入った「ありあけ」のオリジナルどら焼きのプレゼントも予定されています。
横浜港の歴史を伝え続けて110年
横浜赤レンガ倉庫に使われている赤レンガの大型倉庫は、国の税関施設として2号館が1911(明治44)年、1号館は1913(大正2)年に完成。すでに建設から110年ほどが経過しました。
2棟の完成から10年後、1923(大正12)年に発生した関東大震災では2号館の被害こそ少なかったものの、1号館が半壊。そのため、1号館は2号館と比べ小型の建物に縮小して復旧されています。
第二次世界大戦後は10年以上にわたって米軍に接収されたものの、その後は新港ふ頭に出入港する貨物船を通じた貿易拠点として日本の高度経済成長を支え、1974(昭和49)年時点ではタイヤや光学機械、羊毛といった輸出入品の倉庫などとして使われていたといいます。
ただ、昭和後期から取扱量が激減したため、1989(平成元)年には倉庫としての役割を終え、残された建物はテレビドラマの撮影地などとしても使われました。
1992(平成4)年には横浜市が建物を保存する方針を決め、所有者だった当時の大蔵省(現財務省)から取得。それから約10年の時間と数十億円の費用をかけて市が再生し、2002年の商業・文化施設のオープンにこぎつけています。
市は施設の運営を民間に委ねる形とし、当初はビアレストランとしての活用を考えたキリンビールやサッポロビール、ニュートーキョー(ビヤホールなど運営)が中心となって「株式会社横浜赤レンガ」を創設して運営に参画。
2013(平成25)年にはこれまで筆頭株主だったキリンホールディングスが持株比率を減らし、現在は三菱商事とサッポロホールディングスが主要株主になっているといいます。
貿易施設から商業・文化施設に変わった横浜赤レンガ倉庫は、オープン当初から人気を集め、初年度の来場目標としていた300万人を4カ月で達成するなど、新型コロナウイルス禍前までは年間500万人が訪問するみなとみらいを代表する観光スポットに成長。
2010(平成22)年10月には優れた文化遺産の保全・修復を行った施設におくられる「ユネスコ文化遺産保全のためのアジア太平洋遺産賞」の優秀賞に日本国内で初めて受賞するなど、開港の歴史を伝える貴重な文化資産としても高い評価を得ています。
今回の改修を機に商業施設としての魅力をさらに高めるとともに、横浜港の歴史を伝える重要な資産として、長期にわたる活用が望まれます。
【参考リンク】
・横浜赤レンガ倉庫の大規模改修工事が完了し、商業施設とともに12月6日(火曜日)にリニューアルオープンします(横浜市港湾局、2022年11月2日)
・横浜赤レンガ倉庫「12月6日(火)にリニューアルオープン決定」(横浜赤レンガ倉庫のリニューアル特設ページ)
・横浜赤レンガ倉庫の歴史(竣工からの歴史について)