【新横浜エリアからの「沿線レポート」】桜木町駅の周辺で大きな変化が続いています。先月(2020年)6月、横浜市役所が同駅近くのみなとみらい側へ移転したことを皮切りに、JR東日本は市役所側に新改札口を設け、新たな駅前ビルも建設。駅周辺エリアでは観光スポットの新設が相次ぎ、来年春の開業に向けて「ロープウェイ」の新建設も進みます。桜木町エリアの現状をレポートします。
JR桜木町駅に新改札、歩行者デッキも
JR京浜東北・根岸線の桜木町駅では、横浜市役所が移転するのに合わせ、駅の改良が行われています。
関内駅寄りにICカード専用の新改札口「新南口(市役所口)」を先月6月27日に設けるとともに、駅前には12階建ての「JR桜木町ビル」を完成させ、同ビル内に「JR東日本ホテルメッツ横浜桜木町」や商業施設「CIAL桜木町ANNEX(アネックス)」などをオープンしました。
JR新南口(市役所口)の駅前では、先月6月25日から「さくらみらい橋」と名付けられた歩行者デッキが設けられ、大岡川の河口に近い海を眺めながら、横浜市役所まで最短でのアクセスが可能となりました。
なお、横浜市営地下鉄ブルーラインの桜木町駅から市役所へは、「1番出入口」(JR新南口前)が最短となっています。
市役所の正面に58階建て「超高層ビル」
今年4月から順次引っ越しが始まり、先月6月29日に“グランドオープン”となった横浜市役所の新庁舎。地下では、みなとみらい線の馬車道駅と直結しており、港北区内からはJR横浜線・ブルーライン・東急東横線(みなとみらい線)の3線から往来が可能となりました。
32階建ての高層ビルは、3階に入退場ゲートを設け、大型オフィスビルのように、ほとんどの執務フロアは用事無き者の立ち入りがシャットアウトされているものの、1階から3階の大半は市民・観光客向けフロアとして開放。
1階と2階には、京浜急行と共同で「LUXS FRONT(ラクシスフロント)」と名付けた商業施設を設け、コンビニやドラッグストアなどの一部テナントは6月29日にオープン。夏ごろには、飲食関連を中心とした全19店が出そろう予定です。
3階には「市民ラウンジ」と題した展望施設的な休憩スペースがあり、港やみなとみらいのビル群を一望することが可能。また、1階から3階までが吹き抜けとなった「アトリウム」では今後、催事や展示会などの場として活用される予定です。
これまで関内駅前にあった旧横浜市役所は、用事がない限り近づく人が少なく、どこか“無骨”な雰囲気を漂わせていましたが、新庁舎は賑わいづくりに積極的で、観光時などでも気軽に立ち寄れるようになりました。
そして、横浜市役所の正面玄関前、みなとみらい大通りを挟んだ場所では、高さ200メートル・58階建ての超高層ビルが完成。
1174戸の大型分譲マンション「ザ・タワー横浜北仲」がビルの大半を占めますが、下層階の商業施設も含めた複合ビルとなっています。
1階から3階は「KITANAKA BRICK&WHITE(北仲ブリック&ホワイト)」という名の商業・文化施設として先月6月25日にオープンしました。
音楽レストラン「ビルボードライブ横浜」(7月20日開店予定)や、プロフェッショナルなダンス環境の整備とクリエイター育成を行うというダンスハウス「Dance Base Yokohama (DaBY)」、神奈川初出店のスーパー「リンコス」など19店舗がテナントとして出店。
市役所の訪問時には、あわせて立ち寄りたいスポットとなっています。
桜木町駅前で「ロープウェイ」の工事中
桜木町駅でもっとも驚かされるのが、JR北口の駅前広場(バス乗場側)で行われている「ロープウェイ」の駅建設工事です。
「YOKOHAMA AIR CABIN(ヨコハマ・エア・キャビン)」という仮の名称が付けられたこのロープウェイ計画は、駅から約630メートル海側にある新港ふ頭の「運河パーク」を一直線に結ぶ計画で、今年1月から本格的な工事が始まっています。
これは、横浜市が市内中心部で「移動自体が楽しく感じられるような多彩な交通サービス」を充実させる目的で、2017(平成27)年に民間企業からアイデアを公募したことを契機に実現したもの。
公募に応じた泉陽(せんよう)興業株式会社(大阪市浪速区)によるロープウェイ案が採用されており、同社は、みなとみらいエリアの遊園地「よこはまコスモワールド」を運営する企業としても知られます。
泉陽興業の案は、桜木町駅前と運河パークにロープウェイの停留所を新設し、約630メートルの距離を8人乗りのゴンドラ36基によって最短2分30秒で結ぶとの内容。「鉄道事業法」に基づいて建設が行われていると言われますが、イメージとしては、スキー場の大型ゴンドラに似ています。
「汽車道」に沿うように、最大40メートルの高い位置から港やみなとみらいの風景が眺められるというのがポイントで、市によると、新港ふ頭方面へのアクセス強化の役割も見込んでいるといいます。
新港ふ頭では昨年(2019年)10月、レストランなど25店から成る商業施設と、ホテル「インターコンチネンタル横浜Pier 8(ピアエイト)」(173室)が一体となった客船ターミナル「横浜ハンマーヘッド」がオープン済み。
同時に新設された市営バス路線「ピアライン」(桜木町駅~馬車道駅~ハンマーヘッド)以外に公共交通機関が増えるという点でも、このロープウェイ計画は市が歓迎したものとみられます。
当初、ロープウェイは今月7月下旬からの開催が予定されていた「東京2020オリンピック」までに完成させる予定でしたが、現在では今年度末(2021年3月末)に開業する計画に変更。1年延期後のオリンピックが予定通り開かれることになれば、結果的に“オリンピックに間に合う”ということになりそうです。
港の景観に懸念の声、色調など変更も
ただ、このロープウェイ計画は、地上に2基と海上にも3基の巨大な支柱を設けてロープを張ったうえで、空中にゴンドラを往復させることになるため、汽車道付近の「景観を損ねる」と懸念する声も上がっていました。
民間企業による事業であり、市が直接運営するわけではないものの、「横浜市は派手で不要なものばかり導入する傾向がありますが、本当に必要なところに税金を使い、市民の生活を守ってください」(2019年12月横浜市「市民の声」)などといった意見があるのも事実。
景観面での懸念に対して市は、市内の建物や街並みの美観・デザインを検討する「横浜市都市美対策審議会」の議題としてロープウェイ計画を取り上げ、複数回にわたって議論を重ねたうえで、駅舎や支柱、ゴンドラのデザインを周囲に馴染んだ色調とするなどの変更を行っています。
市民が「みなとみらい」観光を楽しむ時
昨年11月、新しくなった新港ふ頭客船ターミナルに着岸した第一号がクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号でした。
その3カ月後、同船内で新型コロナウイルスの感染が発生して大騒ぎとなって以後、新型コロナウイルスの世界的な蔓延で、横浜港へのクルーズ船入港計画は消滅。ロープウェイの建設は、新港ふ頭へ入港するクルーズ船客の観光利用も見込んでの計画だけに、クルーズ観光の早期復活は横浜市の悲願といえます。
市ではこのほかにも観光強化策として、大量輸送が可能な連接バス「BAYSIDE BLUE(ベイサイドブルー)」を今月7月23日(木)から横浜駅東口バスターミナルと山下ふ頭の間に投入し、横浜駅から新港ふ頭や中華街・山下公園などへのアクセスを強化する計画も進めます。
年初のように賑やかだった「みなとみらい」の姿を取り戻すまでの間にこそ、横浜市民にとって“近所の観光地”を楽しみ、支えていく時かもしれません。
【関連記事】
・横浜市役所は関内ではなく「桜木町」、32階建て高層ビルに商業施設も(2020年6月8日)
・新横浜駅から「みなとみらい」へ、土産&食事付きのフリー乗車券を新発売(2020年2月20日)
【参考リンク】
・横浜市「新市庁舎の整備」について(案内や経緯)
・2020年6月27日(土)JR桜木町駅「新南口(市役所口)」「JR東日本ホテルメッツ 横浜桜木町」、「CIAL桜木町ANNEX」オープン(PDF、JR東日本横浜支社など)
・横浜市「桜木町駅前と新港ふ頭とを結ぶロープウェイ事業の実施に向けた協定を締結」(2019年12月6日、来年2021年春に開業予定)
・KITANAKA BRICK&WHITE(北仲ブリック&ホワイト)(市役所の真正面、6月25日オープン)
・新港ふ頭客船ターミナル「横浜ハンマーヘッド」(2019年10月オープン)
・連接バス「BAYSIDE BLUEベイサイドブルー」の案内(7月23日運行開始、横浜駅東口~山下ふ頭)