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【コラム】新型コロナ禍のなか、市長選は本当に盛り上がっているのか?――。今月(2021年)8月22日(日)に投開票が行われる「横浜市長選」では、過去最多の8人が立候補する乱立模様となっており、争点化した「IR(カジノを含む統合型リゾート)」や、国の政局ともからんで、近年になく賑やかだが、候補者の名前以外はどんな人なのか、今いちよく分からないのも事実。港北区在住のライター・田山勇一氏が各候補者を細かく独自研究しました。

都合の悪い事実も含め調べてみた

告示前の今月8月4日に「“カオス状態”横浜市長選、『IR』巡って分かりづらさ加速」と題した記事を「横浜日吉新聞」と「新横浜新聞~しんよこ新聞」に公開したところ、ありがたいことに多くの方にお読みいただいた。ただ、「立候補者が多すぎて、違いがよく分からない」との声もあった。

確かに8人も候補がいれば、どこかで顔や名前を見聞きしたことがある人は多いものの、細かな経歴や考え方を知っているのかと問われれば、自信はない。

港北区内の選挙掲示板、知っているようで詳しくは知らない候補者も

そこで、候補者8人全員の経歴や考え方・政策をできうる限り調べてみた。政治家(候補者)は落選したり、政党を移ったりしたといった都合の悪い内容は公式プロフィールには載せないので、そうした歩みも含めて調べながら、さらに各候補の選挙公約を読み、膨大に公開されている動画などを見ていくと、1人につきおおむね10時間くらいかかり、8人で計80時間。

加えて、文字や動画情報だけでは不安なので、候補者による街頭演説・街頭PR活動の様子もこっそりチェックに出掛けた。8人中5人しか見ることはできていないが、これも延べ10時間以上要している。

8人の政策や姿勢をごく簡単にイメージで紹介すると、攻め(経済重視)の(現職)に対し、調和の小此木、守り(福祉重視)の山中、政策の松沢、突破の田中、IT革命の福田、対決の太田、ミナトの坪倉(順不同、敬称略)という感じだった。

これまで延べ90時間もかけて(勝手に)候補者と向き合ってきたので、そんな成果発表をお許しいただきたい。

この選挙、本当に盛り上がっている?

というのも、各候補者の街頭演説や活動を見ていると、今回の市長選は、本当は盛り上がっていないのではないか、と感じ、また低投票率になるのかと不安になったことが背景にある。

港北区内の駅に掲出された選挙管理委員会の大型ポスター

今回の市長選は、NHKが夜の全国ニュースで特集するなど、前回2017(平成29)年の選挙時と比べ、テレビや新聞など全国系メディアへの露出は多く、候補者に対するネガティブ情報も含め、インターネット上で発信される選挙関連の情報量も前回より格段に多い

しかし、選挙に興奮しているのは、候補者と一部の支持者政治好き層メディアという“いつものメンバー”だけなのではないか、大半の市民にはどうでも良い政治イベントになってしまっているのではないか、との懸念もある。

市内各地の街頭演説やPR活動の現場へ行くと、それなりに知名度があるはずの候補者がチラシを配ったり、握手代わりの肘タッチ(またはグータッチ)を求めたりしても反応はいまいち

無視されるならいいほうで、なかには「こんな時に選挙なんてするな!」と怒りの捨て台詞を吐いていく通行人もいる(「ごもっとも!」なのだが……)。8人も出馬して話題になっているはずなのに、どの候補者の街頭活動を見ても、盛り上がりを感じられなかった

悪化の一途をたどるコロナ禍もあるのか、どの候補者の街頭宣伝活動を見ても、あまり盛り上がっているようには見えない(市内北部の駅で)

確かに新型コロナウイルス禍が災害級と言われるまで悪化して強く外出自粛が迫られているのに、街頭活動自体に矛盾があるし、「感染対策をしていますし、選挙は例外ですから投票所まで来て投票してください」という呼びかけも説得力が出ない

一方、“投票用紙に鉛筆で自分の名前を書いてもらってこそ1票の価値があるのだ!”などと国民の利便性を無視したロマンを語り続ける国会議員(与野党問わず)のおかげで、インターネットを使った投票は今も実現していない(もちろんセキュリティやシステムの難しさもあるが)。

自治体の選挙管理委員会は、投票率を上げるために緊急事態宣言中のコロナ禍でも外出を促すという矛盾したメッセージを流さなければならず、さらには莫大な投開票経費をかけたうえ、投票所や開票所では人と人の接触を増やしてしまうことにもつながる。

悲しい現実だが、与えられたルールのなかで、選挙管理委員会は少しでも投票率を上げようと、一人でも多く投票してもらえるようPR活動などで努力しているし、候補者も炎天下や荒天のなかでも必死に声を涸らせて思いを伝えようと頑張って、さらに、動画や写真でインターネットでも発信している。

外出自粛が求められているなか、投票するには外出しなければならないという矛盾がある

個人的にも、前回の投票率(37.21%)を上げなければ横浜市民として少し恥ずかしいし、半分にも満たない有権者が選んだ市長でいいのか、との思いが強い。

「新横浜新聞~しんよこ新聞」や「横浜日吉新聞」に載せたところで投票率が上がるかどうかは疑わしいが、各候補者の経歴や訴えなどを詳しく、そして都合の悪そうなことも含め長々と記してみた。候補者を通じて関心を持ち、投票に行ってみようというきっかけになれば嬉しい。

今回は各候補者とも特にインターネットでの情報発信が充実しており、誰もがいつでも見られて共有できる点を重視し、政策や訴えなどの情報元はインターネット上に公開されている内容に限定した(一般に販売されている書籍の情報も一部も含めた)。街頭で配っているチラシの類は参照していない。

なお、<筆者の感想・メモ>の部分は、筆者(田山)個人の感想と見解であり、掲載先の「新横浜新聞~しんよこ新聞」や「横浜日吉新聞」を代表するものではないという点をお断りしておく。候補者や支持者には不快であろう内容も少し含まれているので、この部分は飛ばしてお読みいただいてもまったく構わない。

また、筆者自身は支持する政党は無く、支持したい候補者もいない。8人はいずれも相応の経歴や能力を持つということは、1人あたり10時間以上向き合ってみてよく分かったので、誰が当選しても良いと思っている。唯一の目標は、投票率の上昇だけである。(田山勇一)

横浜市長選・候補者8人の独自研究

【独自研究:市長選候補(1)】あふれる対決姿勢とバイタリティ(太田氏)
【独自研究:市長選候補(2)】あの“ヤッシー”が描いた横浜改革(田中氏)
【独自研究:市長選候補(3)】覚悟の出馬、素直な思い伝わるか(小此木氏)
【独自研究:市長選候補(4)】市場の熱き男、お金かけぬ選挙戦(坪倉氏)
【独自研究:市長選候補(5)】元副大臣が挑む“ヨコハマIT革命”(福田氏)
【独自研究:市長選候補(6)】学術界から政治へ、背負った期待(山中氏)
【独自研究:市長選候補(7)】12年間の最終決戦、実現への意地(林氏)
【独自研究:市長選候補(8)】元知事が鋭く分析、横浜の処方箋(松沢氏)

)告示順

田山勇一(たやまゆういち):港北区在住のライター。全国の街歩き旅スポーツ観戦が趣味。2019年秋には日産スタジアム(横浜国際総合競技場)で行われた「ラグビーワールドカップ」と、岩手県釜石市や埼玉県熊谷市での試合をレポート。コロナ禍でのサッカーJリーグや、アイスホッケーのレポート、無観客五輪の落胆報告記も。人生の一時期、政治の取材も経験したことがある

)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です

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