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【市長候補の独自研究・第2回】8人もの候補者が乱立する横浜市長選(2021年8月22日投開票)。なんとなく名前は分かるけど、詳しい人となりはよく分からないという候補者一人ひとりの歩みや政策を独自に研究し、公式プロフィールに載っていない内容も含め、港北区在住のライター・田山勇一氏がまとめました。告示順に第2回は田中康夫氏(作家・元長野県知事)の紹介です。

  • 本連載の元となる記事「<横浜市長選>実は名前程度しか分からない? 候補者8人の徹底研究を試みる」はこちらに掲載している
  • 誰もが情報を共有できるよう情報元はインターネット上に公開されているホームページやSNS、動画などの内容に限定した。市販されている書籍の内容も一部あり、その場合は出典元を記載した。また、街頭などリアルの場で見聞きしたことはその旨を記した。
  • 街頭で配っていたり、新聞に折り込まれたりしたチラシの類は情報源から外した
  • 候補者の選挙ポスターはコロナ禍で外出しなくても見られるよう、掲示板から接写して転載した
  • <筆者の感想・メモ>の部分など、本ページは筆者(ライター・田山)個人の見解と感想によって構成したもので、「横浜日吉新聞」や「新横浜新聞~しんよこ新聞」を代表するものではない(田山勇一)

田中康夫氏(作家、元長野県知事・元国会議員)

田中康夫氏の選挙ポスター、候補者番号(2)

田中康夫氏の選挙ポスター、候補者番号(2)

【各種公開情報による経歴】1956(昭和31)年、東京都武蔵野市生まれ、65歳。父親が信州大学教授だったため、小学2年生から高校卒業まで信州で過ごす。県立松本深志高校、一橋大学法学部卒。大学在学中に小説『なんとなく、クリスタル』で「文藝賞」受賞。1995(平成7)年の「阪神・淡路大震災」発生直後から1年間にわたりボランティア活動。
2000(平成12)年から2006(平成18)年まで長野県知事。2005(平成17)年から2015(平成27)年まで政党「新党日本」代表。2007(平成19)年から2009(平成21)年まで参院議員。2009年から2012(平成24)年まで衆院議員。2015(平成27)年10月からFMヨコハマで音楽番組「たまらなく、AOR」のDJを担当中

<公式経歴以外の事項>

  • 今年4月に横浜市へ引っ越してきて中区山手町の外れ、本牧に近いワシン坂付近に住んでいる。当初は相鉄沿線なども検討したという
  • 長野県知事時代の2002年、急進的な「脱ダム宣言」などで県議会の怒りを買い、不信任案を突きつけられて知事失職を選んだが、後の知事選ではダブルスコアで圧勝して再選。しかし4年後の知事選で敗れ、自ら代表をつとめる「新党日本」から国政へ転身。2007年の参院比例区と2009年の衆院兵庫8区(民主党が支援)で当選
  • 2012年の衆院選で落選(兵庫8区、新党日本、※前回支援の民主党も対抗馬)、2016(平成28)年の参院選でも落選(東京選挙区、おおさか維新の会=現日本維新の会)
  • 愛称は「ヤッシー」(2000年ごろは誰もが知っていた)

<主な支持者(推定)>

  • 全国に相応の数がいるとみられる田中康夫ファンと政治家時代の支持者

<主な政策・訴え>

  • 【中学校給食】温かい中学校完全給食を実現する。中学給食がない政令指定都市は横浜市だけだ。市内3400戸の農家と協力して「地域食材」活用する。小学校には調理施設があるのだから、冷たい「ハマ弁」給食ではなく、完全給食を実施すべき
  • 【IR】カジノは巨大資本が利益を吸い上げ、宿泊も食事も建物・敷地内で独り占めするもので地元経済に寄与しないものだ。山下ふ頭は保税地域であり、海外から展示品を持ってきて税金がかからず展示できるメリットがある。こうした利点を生かす案を考える
  • 【子育て】横浜市は「待機児童」が16人だと豪語しているが、全国の基礎自治体では唯一、「保留児童」という摩訶不思議な数字のトリックである独自呼称を用いて2842人を放置しており、早急に改善する必要がある
  • 【高齢・福祉】人口378万人の横浜市には高齢者が97万人おり、51万人は「独居老人」である。保健師の増員や民生委員の待遇改善を実施する
  • 【防災】在日米軍の「上瀬谷通信施設」(瀬谷区)の跡地には「医療・保健」「消防・救急」統合型レスキュー拠点を建設する。横浜の消防の訓練施設は老朽化しているし、上瀬谷は道路交通環境が良く、津波も来ない
  • 【空き家対策】市内には18万戸もの空き家がある。地元の土木建設業・造園業の協力を得て、治安・防火の観点でミニ緑地、地域菜園化する
  • 【交通】横浜駅は巨大すぎるので、ラッシュ時以外の時間帯に、海外のショッピングセンターにあるような電動カートを運行する
  • 【再開発】関内の旧横浜市庁舎をわずか7700万で特定不動産会社とホテル事業者(※)に“売却”する計画は不透明であり見直す(※京急・DeNA・東急・星野リゾート子会社などが参画し、三井不動産を代表とする事業体)
  • 【議会】市会議員は86人いるが、地元を熟知している存在なので「議員提案予算枠」をつくる。また、18区にも独自予算枠を創設する
  • 【コロナ対策】新型コロナウイルス対策として飲食店に酒類の提供停止や営業時間短縮を求めるのは 「飲食店イジメ」である。夜だけ新型コロナが存在するわけではない。アクリル板があって市が認定した飲食店は静かな食事を求めることで制限を無くす
  • 【公共料金】水道料金値上げは行政努力の怠慢を市民に押し付ける愚策であり、白紙撤回する

<筆者の感想・メモ>

  • “ヤッシー”と聞いて即座に田中康夫という名が浮かび、20年ほど前の長野県知事時代の熱狂を思い出す人(年代)なら、政治家・田中康夫を支持する人は少なくないのではないか。それだけ全国的なブームを巻き起こした(ただ、急進的な改革も多かったので、長野県の人はどう思っているかは分からない)
  • 2015年に「おおさか維新の会(現日本維新の会)」から参院選に出馬したことを自身は「黒歴史」と言っているが、議会との対決を再選挙で突破しようとした知事時代を振り返れば、大阪における日本維新の会知事・市長とも似た点がないともいえないのではないか
  • 市長選の政策で、市議に予算権限の一部を与える「議員提案予算枠」の案は、議会と激しく対立していた知事時代を思えば、少々驚き。自ら国会議員を経験したことで議員という立場なりの重要性を認識したのだろうか。政治家として成熟したのかもしれない
  • 上瀬谷通信施設」の跡地は主要道路が近くて交通の便は良いのだが、港北区民からするとかなり遠いので、レスキュー拠点としては若干不安もある
  • 横浜は海に面している区が6区しかなく、課題や強みは内陸部の12区、“横浜都民”と呼ばれる人が暮らしている場所にこそあるのではないか、と第一声で話していたが、その認識は個人的に共感した
  • 保留児童」の多さも、その“横浜都民”が住む地を中心に課題となっている
  • 飲食店に対する考え方は、神奈川県の「マスク飲食認証店」の制度に近いものではないだろうか。横浜市独自の制度設計もいいのかもしれないが、県が運用に苦心しているのを見ると、市独自にできるのかどうか
  • 4月に横浜へ引っ越してきたばかりの同氏、横浜にあまり染まっていないからこそ良いのか、悪いのか、この点も個人によって異なる評価ポイントか(染まっていないから改革をしやすいと考えるのか、何も知らない“よそ者”と考えるのか)

<公開情報一覧>

横浜市長選・候補者8人の独自研究

【本連載の記事】<横浜市長選>実は名前程度しか分からない? 候補者8人の徹底研究を試みる
【独自研究:市長選候補(1)】あふれる対決姿勢とバイタリティ(太田氏)
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【独自研究:市長選候補(4)】市場の熱き男、お金かけぬ選挙戦(坪倉氏)
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【独自研究:市長選候補(8)】元知事が鋭く分析、横浜の処方箋(松沢氏)

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