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きのう(2021年)7月22日(木・祝)、「東京2020オリンピック」のサッカー競技日産スタジアム(横浜国際総合競技場)でも始まりました。無観客という異例の形に追い込まれた“五輪サッカー”を迎え、新横浜・小机の街には何をもたらしたのか。港北区内在住のライターで、ラグビーワールドカップなどスポーツ関連のレポートを行ってきた田山勇一氏が初日の様子を報告します。

手持無沙汰にしか見えない関係者

試合開始直前に対戦カードの表示を行っていた(7月22日、東ゲート前広場)

2021年7月22日(木・祝)17時30分、日産スタジアム(横浜国際総合競技場)での男子サッカー競技「コートジボワール対サウジアラビア」で横浜のオリンピックが幕を開けた。

スタジアム内では、確かにサッカー競技が行われていたが、新横浜も小机も街は何一つ変化は無い、ということだけは言える。普段と何も変わらない。新型コロナウイルス禍発生後に当たり前となりつつある静かすぎる休日があるだけだった。

新横浜元石川線沿いに関係者向けゲートが置かれている

オリンピックでの変化といえば、日産スタジアムの周囲を仰々しく金網で囲んで封鎖していたことと、オリンピックの青いシャツを着たスタッフをはじめ、警備員や警察官ら関係者が手持無沙汰にしか見えない様子で“ほぼ無人”の競技場周辺を歩いていたり、スタッフさえ現れそうにもない閑散としたゲートで厳重に見張っていたりしたことは、巨大国際イベントらしいといえる光景かもしれない。

西ゲート橋も電源設備などで半分が占拠されている

新横浜元石川線上にある日産スタジアムバス停付近には関係者向けの入場ゲートがあり、多くのスタッフが配置され、金属探知機や検温器らしき機械とともに、アサガオの鉢植えも幾つか置かれていた。小学生が育てたアサガオを並べよう、というオリンピック全体のプロジェクトだそうだ。

西ゲート橋の先にあるメディア向け出入口では、どこかの国のメディア関係者が2~3組いて、うち1組は閑散とした競技場をバックにレポート映像を撮影している様子。国際イベントらしい雰囲気に初めて出会った。

無観客なのに国際映像には「歓声」

対戦国の関係者とみられる人が記念撮影する様子も(西ゲート前広場)

試合開始前には、多く見積もって東ゲート橋の前に10人くらい、西ゲート前にも10人ほどが集まってオリンピック装飾のゲートやノボリを撮影したり、わずかに流れ聴こえてくる対戦国の国歌らしき音楽に耳を傾ける人もいた。本日、第一戦の日産スタジアム(場外)での観衆は約20人といった数だろうか。

(このうち3~4人はバスケットボールを持って東ゲート前広場に遊びに来た近所の中学生で、5人ほどは犬の散歩途中でたまたま立ち寄っただけだったが……)

試合の様子はライブ中継するサイト「gorin.jp」などで観るしかない

国際映像を使って競技をライブ中継するサイト「gorin.jp」を見ると、日産スタジアムでの初戦となる「コートジボワール対サウジアラビア」の放送冒頭、スタジアム上空にヘリコプターを飛ばし、空撮生中継という豪華演出でライブ中継を始めていた。試合前からヘリが飛んでいたのは、このためだったのか。

その国際映像は、試合中に歓声のような音が常に入っていて、いかにも盛り上がっているように感じられるが、実際には日産スタジアム周辺にいても、選手紹介のアナウンスや試合前の音楽がかすかに漏れてくる程度

少し離れた場所を走る横浜線の電車がレールを打ち鳴らす音や、横浜市長選への立候補予定者らしき人の宣伝カーのスピーカー音は時おり聴こえたが、そもそも観客がいないのに歓声など起きるはずがない。開催地の現実を覆い隠す過剰な演出ではないか。

ただ虚しさだけを感じた「五輪」初日

オオオオ、ワアアアなどと書かれたノボリは無観客による静寂を予想したかのよう

今回のオリンピックは、テレビ生中継用“スタジオライブ”の場所を提供する巨大国際イベントと考えれば分かりやすいのかもしれない。開催地に盛り上がりや経済効果といった恩恵はほぼ無いが、国際映像を通じ、競技実施の地として認知される可能性がわずかにある。

ただ、オリンピック後には無用となるであろう仰々しい金網やテント、巨大な電源設備、記念撮影以外には用途が見当たらない装飾、“ほぼ無人”のスタジアムなのに、必要以上に多いようにしか見えないスタッフ・警備が不可欠なのかどうかはわからない。

五輪サッカーの一次予選は開会式の1日前に始まった(新横浜駅前)

新型コロナという見えない敵に翻弄され続けた末の開催なので、やむを得ないとは分かっていても、もし、この巨大国際イベントの赤字分が日本国民の税金で補てんされるとしたら、納得しがたいところだ。

オリンピックの招致から10年以上にわたってこの国の一部の人々が懸命に準備し、世界中にいる各競技への参加者が1年以上にわたって調整に苦心してきたことを考えれば、中止や再度の延期という選択は難しかったのだろうし、今できる範囲で開催するという気持ちも理解できなくはない。

無観客化で開催地に盛り上がりや経済効果といった恩恵はほぼ無いように見える

しかし、新型コロナ禍で自粛生活を迫られ続ける多くの国民にとって、テレビの生中継を時差なく観られるくらいのメリットしか見いだせないのではないか。開催地も、ただ会場の貸し出しを行うだけの存在になってしまっている。何のための誘致だったのかと思う。

2019年秋、ラグビーワールドカップで大きく賑わい、笑顔があふれたことが幻であったかのように静まり返った新横浜や小机の街を見ていると、先の見えない不安と、虚しさだけを感じさせられる“オリンピック初日”だった。(田山勇一)

レポート・田山勇一(たやまゆういち):港北区在住のライター。全国の街歩き旅スポーツ観戦が趣味。2019年秋には日産スタジアム(横浜国際総合競技場)で行われた「ラグビーワールドカップ」と、岩手県釜石市や埼玉県熊谷市での試合をレポート。コロナ禍でのサッカーJリーグや、アイスホッケーのレポートも。

【関連記事】

<無観客五輪>日産スタジアムで男女サッカー「決勝」含む12試合が終了(2021年8月8日、周辺レポート)リンク追記

【放送予定】あす7/22(木)から日産スタジアムで「五輪サッカー」計11試合(2021年7月21日、ライブ中継へのリンクなど)

日産スタジアムを五輪仕様に装飾も……結局は“無観客オリンピック”(2021年7月9日)

【参考リンク】

サッカー競技「オリンピックスケジュール&結果」(olympics.com)

)オリンピックなどの世界的イベントでは正式名称の「横浜国際総合競技場」を用いなければならないとのルールがありますが、港北区内では通常使用されている「日産スタジアム」の知名度が高く、横浜国際総合競技場では場所が分かりづらいため、見出しや記事では日産スタジアムの名称を優先的に用いています