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こんな何もないところに入場料を払ってラーメンを食べに来るわけがない――。

新横浜ラーメン博物館が今年(2022年)7月から始めたプロジェクト「あの銘店(めいてん)をもう一度」のなかで、同館が開館した1994(平成6)年3月の創業メンバー店がリレー形式で3カ月ずつ再出店していく企画が今週11月7日(月)から始まり、出店当時の状況を振り返る貴重なページも公開されています。

2年間かけて40店が期間限定で出店する「あの銘店をもう一度」の特設ページ

「あの銘店をもう一度」は再来年(2024年)に同館が開館30周年を迎えるのにあたり、2年かけて過去に出店していた40店を期間限定で再招致するとの内容で、今年7月1日にスタート。

11月までに和歌山県の「井出商店」(1998年10月~1999年5月)や福島県会津の「牛乳屋食堂」(2009年3月~2010年2月)など8店舗が3週間のリレー形式で再出店を終えており、現在は11月24日(木)までの日程で北海道札幌の「名人の味 爐(いろり)」(1996年3月~9月)が営業しています。

開館時から営業を続ける「こむらさき」

このなかで“別格”という扱いになっているのが1994年の開館当時に店を構えていた「94年組」の再出店です。

開館時に出店していた8店舗のうち、現在も営業を続ける熊本県の「こむらさき」を除いた7店舗が3カ月前後の期間をリレー形式で出店し、当時の味を再現する計画となりました。

その第一弾として今週11月7日から東京都目黒区の「支那そば勝丸」(~2003年11月)が来年2月26日までのスケジュールで営業を開始。

“創業メンバー”だった「支那そば勝丸」は11月7日に再出店し当時の味を提供(来年2月26日まで)

同店創業者としてラーメン職人として半世紀を歩み、11月11日で80歳を迎える後藤勝彦さんの引退へ向けた最後の舞台になるといいます。

「こんなところに人は来ない!」

この「1994年シリーズ」の再出店企画にあわせて公開されたのが「ラー博は8人の決断により始まった」と題した1枚のページで、ここには開館に至るまでのプロセスや当時の写真、当時出店した店主の偽らぬ思いが盛り込まれました。

ラーメン博物館開業前の新横浜、空地の手前部分が建設場所(新横浜1・奈良建設提供)

ラーメン博物館構想を実現させるためのプロジェクトがスタートした1990(平成2)年ごろの新横浜は、東海道新幹線の駅とはいえ今ほど列車本数も多くなく、まだ「新横浜プリンスホテル」は建設途中で、オフィスビルもまばらというなか「横浜アリーナ」が開館したばかりの街。

「駅を降りて建設現場まで歩く中、空き地だらけで、人がほとんど歩いておらず『こんなところに人は来ない!すぐに断ろう』と瞬時に思いました」(博多・一風堂の河原成美さん)というコメントが当時の新横浜の“閑散ぶり”を物語ります。

1994年創業時メンバーの店主と岩岡館長ら(ニュースリリースより)

また、月商1000万円などという目論見を示しながら熱心に出店を説き続けるラーメン博物館の岩岡洋志館長らスタッフに対し、「最初は詐欺師かと思いました」(札幌・すみれの村中伸宜さん)と呆れ、「支那そば勝丸」も当時は「この手の詐欺も多いので慎重に考えたい」と警戒していたといいます。

それでも、新横浜で開設準備に取り組んでいたメンバーの情熱はみなぎっていたようで、「若いスタッフが夢に向かってイキイキとしている光景がありました。あの光景はあまりにもまぶしく、立地なんて関係ない、このスタッフたちと一緒に働きたいと思った」(一風堂の河原さん)

開館時を振り返るコメントからは30年前の新横浜で、前例のない“フードアミューズメントパーク”を創ることがいかに無謀な挑戦だったかが伝わります。

現在のラーメン博物館(2022年11月)

現在営業中の「支那そば勝丸」を皮切りに、この先は札幌の「すみれ」や喜多方の「大安食堂」、東京阿佐ヶ谷の「げんこつ屋」、東京中野区環七の「野方ホープ」、横浜の「六角家」、博多の「一風堂」といった“創業メンバー”の再出店が順次予定されています。

現在の新横浜が形作られるまでの歴史を思い起こしながら再び食せば、さらに味わい深い一杯となりそうです。

【参考リンク】

・【4年前記事】ラーメン博物館の原点的な人気店舗「札幌すみれ」、12/2(日)での“卒業”を発表(2018年9月27日)

・【2年半以上前の記事】今週末2/8(土)の「アド街」は新横浜、23年間で街はどう変わったか(2020年2月3日、1995年に放送された同番組のランキング紹介も)

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ラー博は8人の決断により始まった。 創業メンバーが出店する「あの銘店をもう一度“94年組”」が 2022年11月7日(月)にスタート(30年前の写真やコメントなど)

「あの銘店をもう一度」特設ページ(新横浜ラーメン博物館)