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「ただ今より電波法第52条および関連の法令に従い非常通信訓練を開始します。ジェー・アール・ワン(JR1)ワイ・ダブル・エヌ(YWN)港北区役所総務課応答願います」――。

地域の小学校などで毎年秋に行われる「防災訓練」に参加すると、一度はこんな無線通信を耳にしたことがあるのではないでしょうか。港北区をはじめとした横浜市内には「アマチュア無線」を災害時の非常通信に役立てようというボランティア組織が全18区に存在し、半世紀超にわたって活動を続けています。

横浜市アマチュア無線非常通信協力会は市内18区に支部があり、港北支部では区内29カ所の防災訓練に参加し、通信訓練を行っている(2025年11月30日、小机小学校)

アマチュア無線は「Ham(ハム)」とも呼ばれ、「アマチュア無線技士」の国家資格を取ったうえで趣味として無線通信を行うこと。電波さえ届けば遠く離れた国内外の見知らぬ人とも通信ができるため、1990年代までは特に高い人気を集めていました。

また、電話線が切れたり、電気が使えなくなったりしても無線機とバッテリーさえあれば音声のやり取りができることから、携帯電話が存在しなかった1970年代の米国大地震時にアマチュア無線が活躍。

それを知った当時の飛鳥田一雄(あすかた・いちお)横浜市長が非常時の通信手段としてアマチュア無線を活用する検討を始めます。

携帯電話が無い時代、無線の機動性が災害時にも役立った(イメージ、PhotoACより)

市がアマチュア無線家の団体に協力を呼びかけたことを機に、有志による「横浜市アマチュア無線非常通信協力会」が結成され、1972(昭和47)年8月には市と同会の間で「災害時非常無線通信の協力に関する協定」を締結。

広い市域をカバーするため区ごとに支部が置かれ、アマチュア無線家が地域の防災訓練に参加するなど、行政と組織化されたアマチュア無線家団体が半世紀超にわたって協力関係を維持している横浜市のような例は全国的にめずらしいと言われています。

港北区内29カ所の防災訓練に参加

横浜市アマチュア無線非常通信協力会の港北支部長をつとめる渡辺さん

港北区には非常通信協力会の港北区支部が置かれ、区内在住のアマチュア無線家約80人が所属。各地域の防災拠点(指定避難所)となる区内29カ所の小学校・中学校での防災訓練に参加し、無線機とアンテナを設置して区役所との間で交信試験などを行っています。

支部長をつとめる渡辺裕吾さんは「アマチュア無線は仕事や業務に使うことは許されていないのですが、災害など非常時の通信電波法で認められています」といい、「無線は携帯電話のように1対1で話すのではなく、一斉に伝達できるのが強みで、たとえば港北区役所の本部から各避難所へ一斉に情報を流すような場合にも使えます」と解説します。

近年はトランシーバーを使ったことがない人も多くなっており、港北支部では防災訓練の際に通信を体験できる場を設けている(2025年11月30日、小机小学校)

2011(平成23)年3月の東日本大震災では発生後しばらくして首都圏でも携帯電話の通信が困難になったのは記憶に新しいところ。「トランシーバータイプの無線機なら乾電池でも動き、地形にもよりますが電波も広範囲に届きます。ただ、無線での通信は最後の手段であって、携帯電話やインターネット回線が使えないような事態に陥らないことが一番です」(渡辺さん)

そんな“最後の砦(とりで)”でもある無線通信を確保するため、ボランティアの無線専門家として防災訓練に参加しているのが非常通信協力会のメンバーで、港北支部では区内に29カ所ある防災拠点(指定避難所)ごとに担当を決めているといいます。

防災拠点(指定避難所)の場所(地形)によって電波の飛び方が異なるが、大豆戸町の港北区役所まで届かない場所は無いという(2025年11月30日、小机小学校)

副支部長西山治さんは「現役の会社員から引退した方までさまざまで、地域活動と兼任しているメンバーもいます。以前はすべての防災拠点近所在住者がいたのですが、今は一部の拠点が欠けている状態で、手分けして区内すべての防災訓練に参加しています」と話します。

国家資格が必要なアマチュア無線“趣味の王様”とも呼ばれ、まだ携帯電話が一般化されていない1990年代にその人口がピークを迎えましたが、現在は減少傾向は続き、国内で通信に必要なアマチュア無線局を開いている人の半数超が60歳以上となりました。

アマチュア無線の人口は1994(平成6)年度にピークを迎え、2021(令和3)年度の数値はピーク時の3分の1以下に(総務省総合通信基盤局2023年5月「ワイヤレス人材育成のためのアマチュア無線の活用等に係る制度改正案(要旨)」より)

「港北支部には若いメンバーもおり、最近は海外出身の人も参加してもらえるようになったのですが、有資格者の平均年齢が高くなるにつれてアマチュア無線人口が減っているのは確かです」と西山さん。同支部もメンバーは微減傾向だといいます。

支部長の渡辺さんは「港北区内でアマチュア無線を楽しんでいる方や、かつてアマチュア無線家だった方に、その知識と経験非常通信協力会にお貸しいただけると大変嬉しいです」と港北支部への参加を呼びかけています。

港北支部では「ふるさと港北ふれあい祭り」などの場でブースを出展するなど、アマチュア無線に関心を持ってもらう活動を積極的に行っている(2025年11月8日、横浜アリーナ)

2021年には、非常通信だけでなく地域行事をはじめとしたボランティア活動全般でも使えるよう国が制度改正を行ったアマチュア無線。有資格者への期待は全国で高まりそうです。

)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です

【参考リンク】

横浜市アマチュア無線非常通信協力会「港北支部」の公式サイト(活動紹介など)

総務省「アマチュア無線とは」(アマチュア無線家人口は日本国内で約37万人とみられている)

総務省「アマチュア無線の社会貢献活動での活用に係る基本的な考え方」(2021年3月の制度改正について、ボランティア活動でもアマチュア無線が使えるようになった)