選手も監督も「生まれていなかった」1982(昭和57)年以来の偉業を達成。駆け付けた観客が“歴史的瞬間”を大きな歓声で包み込みます。
きのう(2024年)5月4日(土・祝)12時から、高校野球「春季神奈川県大会(春季大会)」の決勝戦が横浜スタジアム(中区横浜公園)で行われ、武相高校(仲手原2)が9対8で東海大相模高校(相模原市)に勝利。
今から42年前となる1982年以来の“歴史的勝利”を、約1万人の観客が見守り、球場がその偉業を称える大きな歓声に包まれました。
試合は、両チームで27安打、17得点が飛び交う打撃戦として手に汗握る展開に。
初回、4番打者・平野敏久(としき)君のタイムリー2塁打など3安打で3点を先制した武相高校は、東海大相模打線のパワーで4回裏に1本塁打を浴び、3対3の同点となります。
しかし5回表に、平野君の2塁打や広橋大成(たいせい)君、投手の三上煌貴(こうき)君などによる3安打などで2点を挙げ、5対3とリードします。
武相高校は、5回裏にも1本塁打を浴びたものの、7回と8回にも2点ずつ得点し9対4とリードを広げることに成功。
しかし、8回裏にはエラーなどを交えて4点を失い、9対8の1点差となり最終回に突入。
最後は、東海大相模の粘りで2アウト満塁のピンチを迎え緊迫した試合展開となったものの、三上君が最後は打者を内野ゴロに打ち取りゲームセット。
最後は、観客の割れるような拍手や歓声の下、“歴史的”な選手たちの偉業の瞬間、「優勝」シーンの感動を体中に表現し、その喜びを分かち合っていました。
「皆が一つになった結果」と豊田監督
武相高校を率いる豊田圭史(けいし)監督は横浜市泉区出身。同校を卒業後、富士大学(岩手県花巻市)に進学。
同大学の野球部を引退後、コーチを経て監督に就任した後、北東北大学野球連盟10季連続優勝、全国大会に8回(全日本大学野球選手権5回、明治神宮大会3回)出場するという輝かしい経歴を持っているといいます。
プロ野球や社会人野球にも多く卒業生を送り出してきたという豊田監督を慕い、武相高校の野球部の門を叩いた部員数は現在約90人。
保護者会の会長を務める、主将(キャプテン)の仲宗根琉空(りく)君の父・仲宗根康弘さんは、豊田監督と小・中学校時代の「野球仲間」。
琉空君が武相高校を選んだ理由については、「(琉空君の)野球チームに豊田監督が見に来てくれて、『豊田野球』に共感して、一緒に野球をすることになりました」と説明します。
「人とのつながり」を大切にし、粘り強く、勝負強い野球を指導する豊田監督とともに、約180人の保護者会のメンバーが現役部員たちの活動をサポートし、日々部員たちを応援し激励していると語ります。
県内屈指の強豪校である東海大相模を破り「42年ぶり」に春の神奈川を制した快挙を成し遂げた豊田監督は、「もちろん、選手は頑張ってくれましたが」と断った上で、「選手、スタッフ、保護者、OB、学校など応援してくださる皆さんが一つになった結果だと思っています」と、一人ひとりが団結して戦った結果が今回の勝因と分析。
武相高校側のスタンドを埋め尽くした観客から「ありがとう」という声が上がったことについては、「私が生まれた年(に決勝進出)、または生まれる前(優勝)の話なので(感慨深い)。春とはいえ、素晴らしい結果を(部員たちは)出してくれたなと思います」と、OBや保護者、学校を含めた関係者たちからの激励、そして現役部員の頑張りがあってこその“歴史的勝利”について熱く語っていました。
“仲間”を信じ粘る「雑草野球」で勝利
神奈川県の高校野球界でも屈指の強豪校・東海大相模に対し、この日は「一人もメンバー交代なし」のわずか9人で試合に挑んだ武相高校。
この日、9回を最後まで投げ切った投手の三上君は、「(東海大相模が相手ということで)もちろん緊張しましたが、(最後追い上げられた場面でも)同点になったわけではないし、先輩たちならやってくれるだろうと思って、信じて打たせていきました」と、“チームの仲間を信じた”ことでの勝利を得られたことを喜びます。
「東海大相模を相手に、何点差も付けて勝てるほど甘くないので、ここまで追いつめられることもわかったので、なんとか最後に1点でも多く取っていれば勝ちなので」と主将の仲宗根君も、「9イニング勝負」との指導を受けての勝利であることを明かします。
4番打者の平野君も「自分たちはエリートではなく、『雑草』って監督から植え付けられています」と語り、ボールに食らいつき、三振をしないで粘っていくことについても、「練習でやってきたので、練習をやってきたことを信じて打席に立ちました」と結果が出たことを喜び、緊張の中にも野球をプレーする「楽しさ」があったと、この日の試合について振り返っていました。
「関東大会」を経て夏の本番へ
県春季大会の準決勝に残ったことで、7月上旬に始まる予定の「夏の県大会(第106回全国高校野球選手権神奈川大会)」の「第1シード」権を得られた武相高校。
上位2校が出場できる今月(2024年)5月18日から群馬県で行われる予定の「関東大会」にも、「神奈川県第1代表」として出場することで、夏の大会に向けての“勢い”がチームに付くことが予想されます。
主将の仲宗根君は、「関東大会もレベルが高いので、いままで自分たちがやってきたことを、しっかり試合で発揮できるように、また2週間くらい期間があるので、本当にしっかり準備していきたい」との意気込みを語ります。
「とにかく、現場を朝から晩まで見て、朝から晩まで一緒に汗かく、それだけです」と語る豊田監督の采配(さいはい)により、より高いレベルに到達する「武相野球」。
関東大会での戦いにより、新しい歴史が開かれ、「夏の大会」での活躍につながることが望まれます。
【関連記事】
・【前日記事】<春の高校野球>武相高校が40年ぶり「決勝」進出、関東大会にも出場決定(2024年5月4日)
・<春の高校野球>武相が40年ぶりベスト4、慶應は横浜に敗れ夏は第2シードに(2024年4月30日)
【参考リンク】
・神奈川県高等学校野球連盟公式サイト(大会情報、観戦案内)
・春季関東地区高等学校野球大会(同)※関東大会は5月18日(土)12時から、埼玉県第2代表の昌平高校と高崎市城南野球場(群馬県高崎市)で対戦予定 (※リンク追記)