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今年は日本初の鉄道新橋と横浜間に開通してから150周年。“鉄道発祥の地”である横浜市内ではセンター北駅近くの「横浜市歴史博物館」と、日本大通り駅至近の「横浜都市発展記念館」でそれぞれ横浜の鉄道と歴史に焦点を当てた特別展と企画展が今月(2022年3月)から始まりました。

横浜市歴史博物館の特別展「みんなでつなげる鉄道150年~鉄道発祥の地よこはまと沿線の移り変わり」の案内チラシ(ニュースリリースより)

今から約150年前の1872(明治5)年10月14日に東京・新橋駅と横浜駅(現在の桜木町駅)を結ぶことから始まった日本の鉄道は、この間に国内のいたるところへ鉄路を伸ばし、首都圏では私鉄や地下鉄も含めて鉄道網が張り巡らされています。

3月19日に横浜市歴史博物館(都筑区中川中央)で始まった特別展「みんなでつなげる鉄道150年~鉄道発祥の地よこはまと沿線の移り変わり」は、横浜から見た鉄道150年の歴史を網羅しながら、市内に路線や拠点を持つ10社局の鉄道会社それぞれに絞った展示も行っているのが特徴です。

1872(明治5)年の鉄道開業から150年の歴史を網羅

横浜では1872(明治5)年に政府直轄の鉄道が開業後、1904(明治37)年には路面電車横浜電気鉄道(のちに横浜市電=横浜市交通局)」が開通したのを皮切りに、川崎大師への参詣客を運ぶ目的で始まった「京浜電気鉄道(旧大師電気鉄道、現京浜急行電鉄)」や、すぐに国有化された「横浜鉄道(現JR横浜線)」が明治期に誕生

大正末期の1926(大正15)年になると、「神中(じんちゅう)鉄道(現相模鉄道)」が二俣川(旭区)と厚木の間に路線を設け、7年後には横浜駅まで延伸。

企画を担当した学芸員の小林光一郎さん(写真左)はもともと鉄道には詳しくなかったといい、そのためか幅広い層に分かりやすく工夫された展示内容となっている

また1926(大正15)年は、先に目黒と丸子多摩川(現多摩川)と蒲田間の東京都内に路線を開業していた「東京横浜電鉄(現東急電鉄)」が丸子多摩川から先、日吉や綱島温泉(現綱島)、太尾(現大倉山)、菊名妙蓮寺前(現妙蓮寺)などの駅を新設しながら横浜市内まで路線を伸ばしています。

昭和に入ると、貨物需要が急増していた高度経済成長期には、当時の国鉄(日本国有鉄道)が地元自治体出資のもとで京浜地域の貨物輸送を行うために「神奈川臨海鉄道」が1963(昭和38)年に川崎市内で設立され、1969(昭和44)年には横浜市内の根岸駅(磯子区)から本牧埠頭(中区)間にも貨物線を設けました。

JR貨物の横浜羽沢(貨物)駅のヘッドマークや、新交通システム「シーサイドライン」のタイヤ、日本初となった東急電鉄のオールステンレス車両の模型など大型展示物も

明治後期以降、市電(路面電車)路線を着々と伸ばしてきた横浜市交通局でしたが、1972(昭和47)年までに市電を全廃する一方、同年12月には市営地下鉄1号線(現ブルーライン)の伊勢佐木長者町と上大岡間を開業。1985(昭和60)年横浜と新横浜間など、今度は地下鉄路線を伸ばし続けます。

1987(昭和62)年に国鉄の分割民営化でJR各社が誕生し、東海道本線や京浜東北線といった横浜市内の在来線はJR東日本、東海道新幹線と新横浜駅(新幹線部分)はJR東海、横浜羽沢駅(神奈川区)などの貨物駅と貨物列車はJR貨物がそれぞれ運営を担っています。

横浜市内に路線を持つ10社局ごとに展示コーナーがある

平成に入ると、1989(平成元)年に横浜市が出資する第三セクターの新交通システム「横浜シーサイドライン」が金沢区内を中心に路線を設け、2004(平成16)年には東急東横線と相互直通運転する「みなとみらい線」が開業し、その運営会社として第三セクターの横浜高速鉄道が設けられています。

この150年の間に横浜市内では、旧国鉄を引き継いだJRや、市が関与して設けた鉄道、京急や相鉄、東急といった民間会社が鉄道路線網を張り巡らせ、2019年12月には貨物線を一部活用した「相鉄・JR直通線」が開業し、さらに来年(2022年)春は「相鉄・東急直通線」という新たな鉄道路線も加わります。

貴重な展示物も多い

横浜市歴史博物館の特別展では、横浜の鉄道150年を幅広い層に分かりやすい解説で概観できる内容となっており、開業以来移転が重なった横浜駅の様子や、各鉄道会社の誕生から現在までの歩みがコンパクトにまとめられています。

港北区民が特に注目したいのは、東急電鉄やJR東海の展示で、東急のコーナーには沿線開発の一例として日吉が取り上げられ、JR東海コーナーには新横浜駅の模型や開業当時の写真などがあり、チェックしておきたいところ。

常設展示の部屋では横浜市電保存館(磯子区)の協力による大型の鉄道模型展示も

企画展は6月19日(日)までの「前期」と6月22日(水)から9月25日(日)までの「後期」でそれぞれ展示物の入れ替えが予定されています。

開館は9時から17時で入場料は一般1200円、大学生・高校生が1000円、中学生・小学生と65歳以上は500円。期間中の月曜日(祝日の場合は開館)と6月21日(火)、7月19日(火)、9月20日(火)は休館日となっています。

セピア色の写真が伝える関東大震災

横浜都市発展記念館の企画展「激震、鉄道を襲う!~関東大震災と横浜の交通網」の案内チラシ(ニュースリリースより)

一方、横浜の鉄道が150年の歴史を歩んできたなかで、最大の危機となったのが今から約99年前の1923(大正12)年9月1日に発生した「関東大震災」でした。

みなとみらい線・日本大通り駅の至近にある「横浜都市発展記念館」で3月12日に始まった企画展激震、鉄道を襲う!~関東大震災と横浜の交通網」は、横浜近郊の鉄道が受けた被害と復興の様子を当時の貴重な写真で振り返る内容となっています。

大正期、横浜の重要なインフラとなりつつあった鉄道ですが、5分ほどの間に三度発生した最大マグニチュード7.9の大地震と、その後の大火災で壊滅させられてしまった惨状を記録したセピア色の写真が伝えます。

貴重な写真で約99年前の「関東大震災」がもたらした鉄道の惨状を伝える(横浜都市発展記念館所蔵写真より)

建物に押しつぶされたり、火事で焼失したりした路面電車をはじめ、焼失前の横浜駅ホームで立ち尽くす駅員と乗客など、特に横浜駅は地震後すぐの時点で無事だったため、多くの避難者が押し寄せるなか、その後に広がった火災で焼け落ちたといいます。

東日本大震災時も地震での被害より、その後の津波によって壊滅させられてしまった状況にも似ています。現在も大きな地震が頻発し、鉄道にも被害を与え続けているなかだけに1世紀近く前の出来事とは思えないような現実味を感じるかもしれません。

日本大通り駅の至近にある「横浜都市発展記念館」

横浜都市発展記念館(中区日本大通)の企画展「激震、鉄道を襲う!~関東大震災と横浜の交通網」は、7月3日(日)まで開催し、開館は9時30分から17時で入場料は一般500円、中学生・小学生と65歳以上の市民は250円。期間中の月曜日(祝日の場合は開館)は休館となります。

なお、同企画展は今年1月から3月の間に行われる予定でしたが、同館の空調機器故障により3月から7月に会期が変更となっています。

【関連記事】

日吉村にあった巨大貨物拠点、「新鶴見操車場」に焦点を当てた企画展(横浜日吉新聞、2022年2月10日、鉄道150周年の一環で企画、横浜市歴史博物館の常設展内でもパネルの一部を展示中)

【参考リンク】

横浜市歴史博物館(センター北駅)「みんなでつなげる鉄道150年~鉄道発祥の地よこはまと沿線の移り変わり」(2022年3月19日~6月19日/6月22日~9月25日開催)

横浜都市発展記念館(日本大通り駅)「激震、鉄道を襲う!~関東大震災と横浜の交通網」(2022年3月12日~7月3日開催)