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新羽と渋谷・東京を結ぶ通勤用高速バスの実証実験が始まりました。東急バスがきのう(2021年)2月16日(月)から運行する高速バス「サテライトビズライナー(Satellite Biz Liner)」は、東急グループが“新・通勤サービス”として、多様な働き方に対応した通勤スタイルを提案していくもので、4月28日(水)までの平日に限定運行されます。

4月28日(水)までの平日に運行される高速バス「サテライトビズライナー(Satellite Biz Liner)」の案内チラシ(東急バス公式サイトより)

サテライトビズライナーは、東急グループが今年1月から「DENTO(デント)」と名付けて開始した新たな通勤サービスの一環として設定。“デント”という名称が付けられているように、田園都市線沿線の通勤客を主な対象にニーズを見極めたいといいます。

新羽駅から徒歩約5分の「新羽営業所」(新羽町)を始発着地とする一方、田園都市線の市が尾駅と「たまプラーザ駅」に立ち寄り、渋谷駅と東京駅南口を結ぶルートで期間中の平日に限り1日1往復を運行。

東京駅方面行は新羽営業所を8時20分に出発し、市が尾駅(8時45分発)、たまプラーザ駅(南口、9時5分発)を経て、渋谷駅(渋谷フクラス9番のりば)に10時15分着東京駅南口(丸の内南口3番のりば=東京中央郵便局近く)へは10時45分着

新羽駅に近い東急バスの新羽営業所は高速バス路線の運行拠点となっている

復路の新羽方面行は、東京駅南口が16時25分発渋谷駅を17時5分に出発し、たまプラーザ駅北口着は17時35分、市が尾駅が17時55分着、新羽営業所は18時25分着となっています。

運賃は新羽営業所から渋谷駅間が片道1900円東京駅間は同2300円。たまプラーザ駅と渋谷駅間が同1000円、東京駅間が同1400円など。東急線の通勤定期券を持っている場合は100円の割引が受けられます。

新たな通勤スタイルを提案する東急グループによる実証実験「DENTO(デント)」の公式サイト

乗車券はDENTO(デント)の公式「LINE(ライン)」アカウントのほか、高速バスの予約サイト「発車オーライネット」で事前購入と予約が可能です。

公式LINEアカウントで高速バスを予約し、たまプラーザ駅から乗車する場合は、駅直結の「タリーズコーヒーたまプラーザテラスリンクプラザ店」でテイクアウトのコーヒーを税込み190円で購入できるサービスも用意されています。

なお、今回は実証実験のため、4月29日以降は運行する予定はないとのことです。

<乗車レポート>コロナ後に対応した通勤・働き方を占う

高速バスのチケットは主にスマートフォンで購入する

きのう2月16日(火)から始まった高速バス「サテライトビズライナー」の実験運行。新羽営業所から東京駅まで乗ってみました

新羽営業所が発着場所となった理由は、東急バスにおける高速バス運行の拠点となっているため。今回の実証実験の主眼となる「たまプラーザ駅」まで回送するより、「一人でも多く乗ってもらえたなら嬉しい」(東急バス関係者)との考えも背景にあるとのことですが、港北区民にとっては、東急が提案する“新・通勤スタイル”の現状を試せるチャンスといえます。

バスは新羽営業所の正門前から出発

新羽営業所の正門前を8時20分に出発したバスの乗客は5人。初日ということで関係者と見られる人が目立ちますが、新羽からの乗客を1人でも増やして今後の港北区エリアでの展開につなげたいところです。

バスはトイレ付きで、各座席にはUSB充電が可能な差込口も設置。そして“動くシェアオフィス”を目指すという今回の実証実験ならではのサービスが「Yogibo(ヨギボー)」という米国のソファブランドによる“ひざ置き型パソコン台”の貸し出しです。

自分の膝の上に置いて使う形のパソコン台レンタルも

やわらかいクッション上に板の台が付けたこのパソコン台は、ものを書く際にも最適で、ひざの上に置いていてもあまり苦にはならない不思議な感覚が味わえます。

バスは首都高「横浜北線」の新横浜入口から高速道路に入り、「横浜北西線」を経由して快適に田園都市線の沿線である青葉区へ。一般道が混雑気味で5分ほど遅れて市が尾駅のバスターミナルに到着したものの、ここでの乗客はありませんでした。

今回の実験運行は主に「たまプラーザ駅」からの需要を探ることにある(写真は2月15日)

国道246号線の混雑に巻き込まれながら、たまプラーザ駅には約8分遅れの9時13分に着き、7人ほどを乗せて、ここから都心へ向けて出発します。

たまプラーザ駅を9時過ぎの出発に設定されている点は、今回の実証実験のなかでも重要な部分

都心のオフィスなら9時30分や10時の始業には間に合わない出発時刻ですが、新型コロナウイルス禍で在宅勤務が多くなった今、乗車と同時にリモートで業務を開始するという形も認められるのではないか、との考え方を反映したものです。

車内にはフリーWiFiもあってリモート業務にも適した環境

在宅勤務が増えても、オフィスで顔を合わせて行うべき業務も定期的に存在するはずで、その際には高速バスでリモートワークをこなしながら出社してほしい、というのが東急グループの狙い。たまプラーザ駅から渋谷駅までは片道1000円、定期券を持っていれば100円を割引するという価格設定にも、そうした狙いの一端が現れています。

たまプラーザ駅を出たバスは、東名川崎インターチェンジから再び高速道路に入ったものの、首都高渋谷線へ合流前後に大渋滞

あらかじめ渋滞を想定したダイヤとなっている

ほとんど“高速”で走行できなかったにも関わらず、渋谷駅西口の商業施設「渋谷フクラス(FUKURAS)」にあるバスターミナルに到着したのは、ほぼ定刻通りの10時13分。あらかじめ渋滞を見透かしたかのような運行ダイヤ設定に驚かされます。

たまプラーザ駅から都心への高速バス運行の実証実験は一昨年(2019年)1月にも行われており、当時のノウハウも生かされている様子です。

渋谷駅西口にある「フクラス」内のバスターミナルから発着(写真は2月15日)

渋谷フクラスで4人を下ろし、三たび高速道路に乗って東京駅の赤いレンガの駅舎を見ながら、定刻の10時45分に東京駅南口に到着。降車場所は東京中央郵便局の真横といえる位置で、丸の内エリアに出社するなら絶好の環境です。

新羽営業所から東京駅まで2時間25分、新羽駅から地下鉄ブルーライン経由で新横浜駅から東海道新幹線を使えば1時間弱で移動できる距離ですが、車内でパソコンなどを使って業務を行う時間と考えれば、利用価値はありそう。特に新羽と渋谷駅間は、鉄道で直通できないだけに利便性は高まります。

東京駅は丸の内南口から発着、写真は回送中のバス

もとは「MaaSマース=Mobility as a Service)」と呼ばれる交通のIT化や移動の相互連携といった観点で、東急グループが2018年から始めた実証実験の流れで行われている今回の高速バス運行。

昨年(2020年)3月以降の新型コロナ禍で働き方の変革が迫られ、通勤に対するニーズや考え方が複雑化するなか、約2カ月半にわたる実験運行を経て、“新型コロナ後”の通勤スタイルがどのような方向へ導かれるのかに注目です。

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東急が「伊豆観光」でスマホ化実験、多数の“デジタル周遊券”も(横浜日吉新聞、2020年10月30日、東急グループは伊豆で「MaaS」の実験を展開)

【参考リンク】

東急グループ「DENTO(デント)」(新たな通勤スタイルの実証実験)

バス車内で快適テレワーク!シェアオフィスバス「Satellite Biz Liner」を実証運行します、2021年2月16日~4月28日(平日のみ)(東急バス)