便利になって東京方面へ吸い上げられないようにしなければ――。今週(2019年)11月30日(土)に開業する「相鉄・JR直通線」の羽沢横浜国大駅(神奈川区)で、きのう11月25日に記念式典が行われ、国や神奈川県、横浜市の関係者らが開業への期待や思いを述べました。
「相鉄・JR直通線発車式」と題した記念式典は、鉄道の整備を行う国の鉄道・運輸機構と、運営を行う相鉄(相模鉄道)が共同で主催。建設や運営に携わる関係者を招き、完成した駅を公開するとともに、記念列車の出発式を行ったものです。
式典では、鉄道・運輸機構の北村隆志理事長が「沿線地域の多くの皆様に末永くご利用いただけることを心から願っている」とあいさつし、相鉄の千原広司社長は羽沢横浜国大駅を「相鉄線としては20年ぶりとなる、26番目の新駅だ」と紹介。
国土交通省の赤羽一嘉(かずよし)大臣は、同じ内閣の一員で、横浜市内選出の衆議院議員でもある菅義偉(よしひで)内閣官房長官が式典への出席を心待ちにしていたものの、公務で叶わなかったことを会場に報告。
相鉄・JR直通線の建設では、羽沢横浜国大駅と東海道貨物線を接続する際などの工事で技術的な困難があったことから、「難工事を乗り越え、我が国の都市鉄道の発展に大変意義のある開業だ」と喜びました。
自らの体験をもとに実感のこもった話を披露したのが神奈川県の黒岩祐治知事。大学生時代からフジテレビに入社2年後まで相鉄沿線の二俣川に住んでいたことを明かし、「横浜で乗り換える大変さを肌で感じていたが、JRと直接つながることがどれだけ便利なことか」と相鉄・JR直通線を絶賛。
一方で知事は「便利なことは素晴らしいが、次の新たな戦いが始まる」といい、「便利になって東京方面へ吸い上げられるだけでなく、神奈川のほうへ(人を)引っ張ってこなければならなければならない。マグネット(磁力)の力があふれる神奈川にしていきたい」と力を込めました。
横浜市の林文子市長に代わって出席した平原敏英副市長は、「市では瀬谷区の旧上瀬谷通信施設(在日米軍施設の跡地、相鉄瀬谷駅などが最寄り)で、2027年に国際園芸博覧会の開催を目指しており、神奈川東部方面線(相鉄・JR直通線と相鉄・東急直通線)は、市内外からお客様を迎え入れる大変重要な路線となる」などとの市長メッセージを代読しました。
“陸の孤島駅”が今後どう変わっていくか
今週11月30日(土)に開業する羽沢横浜国大駅は、相鉄・JR直通線と相鉄・東急直通線が分岐する拠点駅。
相鉄・東急直通線の開業後は新横浜(仮称)や新綱島(仮称)、日吉の港北区内3駅からも沿線となりますが、11月30日の時点では相鉄・JR直通線の列車が1時間に最大で4本、日中は2本程度が運行されるのみです。
駅前再開発も相鉄・東急直通線の開業を見据えて行われる予定となっているため、住宅街から若干離れて設けられている駅の周辺には、買物や飲食のできる店舗は一切見当たらない状態。駅構内にも売店は設けられず、飲料と菓子類を売る自動販売機しかありません。
羽沢横浜国大駅に停留所を置く唯一のバス路線で、新横浜駅と保土ヶ谷駅を結ぶ神奈川中央交通の「121系統」は1時間に1本程度の運行となっており、現時点では鉄道駅があるだけの“陸の孤島”といった雰囲気も漂わせています。
また、駅出入口から横浜国立大学の北門へは徒歩13~14分の距離となっているものの、神奈川区から保土ヶ谷区へ「区境」を越えるため、途中にアップダウンがあり、ルートも分かりづらいのが難点です。
ただ、今後は駅前に商業施設も含めた高層ビルの建設が予定されており、新たなまちづくりのなかで、横浜国立大学への徒歩アクセスルートの整備も期待されます。
2023年3月までに相鉄・東急直通線が開業し、新横浜などの港北区の街と直結した時に、羽沢横浜国大駅がどのように変わっているのか。駅から始まる街の変化に注目です。
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・新駅至近の神奈中バス停、「羽沢貨物駅」を「羽沢横浜国大駅」に変更(2019年11月22日、駅前から発着する唯一のバス路線)
・JR武蔵小杉の“隣駅”羽沢横浜国大、11/30(土)の開業日に記念イベント(横浜日吉新聞、2019年11月19日、開業日にイベントも)
・<レポート>早ければ1年後に開業の「羽沢横浜国大駅」、再開発は“東急直通”時に照準(2018年10月1日、1年ほど前と状況はあまり変わっていない)
【参考リンク】
・羽沢横浜国大駅の時刻表ページ(JR東日本)