菊名駅東口の歩道を拡(ひろ)げることはできないのでしょうか――。横浜市に寄せられたそんな声に対し、市は「課題として受け止めております」との認識を示す一方、現時点で具体的に動く予定はないといいます。路線バスとタクシーと一般の乗用車が入り乱れる狭い道を往来しなければならない歩行者にとって、快適な駅前環境の実現は長年の願いです。
港北図書館への玄関口にもなっている駅東口は「駅前広場」といえるようなスペースはほぼ無い状態。そのため、鶴見方面への臨港バスに乗るための乗客は、駅の階段上に並ばざるを得ません。横浜市営バスにいたっては駅前へ乗り入れることができず、200メートル近く離れた綱島街道沿いに「菊名駅前」の停留所を置きます。
駅前を通る狭い旧綱島街道では、他車の通行を妨げないようにタクシーはタイヤの一部を歩道に乗り上げて客を待たなければならず、駅利用者はその横の人が一人通れるくらいのスペースを歩いていくしかない、というのが東口の日常風景です。
このほど公開された「市民の声」への投書内容は、「菊名駅東口では、以前に比べ赤ちゃん連れの方が多くみられますが、車の脇を通れず困っている場面をよく見かけます。歩道の確保をお願いします」との要旨で、東口利用者の多数が感じている不便さや不安を代弁したものといえます。
これに対し市は、「菊名駅前東口前面の道路につきましてはご指摘のとおり車道及び歩道幅員が狭く、歩道者の通行に支障をきたしているほか、バス・タクシーの乗降スペースも十分ではなく、横浜市としても課題として受け止めております」と回答。
一方で「整備を行うには用地を周辺の地権者から買収する必要があります。用地の買収につきましては、地権者の皆様のご理解とご協力が必要なほか、財源の確保等が必要であり、当該か所について現在のところ事業実施の予定はございません」としています。
日吉、綱島、菊名と東急東横線の急行停車駅は、3駅とも利用者の多さに比して駅前がきわめて“狭あい”で、商店などの建物が周辺に密集していて解決が難しいという共通の課題を抱えており、横浜市が対策に手を焼いている様子がうかがえます。
相鉄直通線の開通で「菊名は素通りされかねない」
そんななか、一つの光明といえるのが、商店街の有志らが中心となって2017年に立ち上げた「菊名駅東口まちづくり研究会」(鈴木正代表)の動きです。
2023年3月末までに開業を予定する「相鉄・東急直通線(東急新横浜線)」は、新綱島駅(仮称)から菊名駅を通らずに新横浜へ向かうルートとなっていることから、「今後は菊名が素通りされてしまいかねない」(商店街関係者)との危機感から駅前のまちづくりについて議論を始めたといいます。
菊名駅の周辺では、来年(2020年)3月に鶴見区の法隆寺交差点近くで「横浜北線(きたせん)」の馬場出入口が開業する予定となっており、主要アクセス道路となる菊名エリアの綱島街道でも4車線化に向けた動きが強まると見られています。
そのため、綱島街道と旧綱島街道との間に挟まれた東口駅前エリアでも、「拡幅を見据えたまちづくりの機運が高まりつつある」(同)ことも議論開始の背景にありました。
現在はまだ再開発の方向性が決まっていない状態ではあるものの、議論自体は進めているといいます。鉄道新線と高速道路という二つの大きな周辺変化に押され、菊名駅東口が変わるきっかけとなるのでしょうか。東口利用者の期待が集まります。
【関連記事】
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【参考リンク】
・横浜市市民の声「菊名駅東口の歩道を拡げてください」(2019年5月1日公開、一定期間を過ぎると消されます)
・「菊名駅東口まちづくり研究会」について(横浜市都市整備局)