1年半におよぶ大改装を経て快適になった武道の一大拠点が再オープンしています。
神奈川県文化スポーツ観光局は、一昨年(2022年)10月から改装工事を行っていた「シンコースポーツ神奈川県立武道館」(岸根町)を今月(2024年)4月20日に再オープンし、記念式典や演武会で再開を祝いました。
県立武道館は、試合場として4面相当の広さを持つ約400畳の「柔道場」(観覧席220人)と、ほぼ同サイズの「剣道場」(観覧席188人)、両道場の約半分ほどの規模となっている「小道場」、12人が同時に立って弓を射ることができる「弓道場」(観覧席94人)などを備えた武道の大型施設。館内の会議室は貸し出しも行われ、同館が主催する書道教室も開かれています。
1982(昭和57)年7月の開館から40年以上が経過して経年劣化が進んだうえ、各道場に冷暖房を備えていなかったため、「弓道場はオープンエアという環境もあって冬場は“日本一寒い”なんて言われ、夏になると最近は道場内で熱中症になるケースも出ていた」(同施設関係者)と改装前の状況を明かします。
今回、1年半の改装工事を経てすべての道場に冷暖房設備が備わり、弓道場には床暖房も設けられました。また、同時にシャワー室の全面改修やトイレの洋式化、照明のLED化や天井の改修、壁紙の貼り換えなども行われています。
県立武道館の指定管理者であるシンコースポーツ株式会社が企画したリニューアルオープンの式典では、県の橋本和也副知事が「県の武道を普及振興する拠点として、これからも皆さまに愛される施設となるよう県と指定管理者でつとめていきたい」とあいさつ。
県の武道10団体で組織する武道連絡協議会の諸井三義(みつよし)会長は、「昭和57年の開館セレモニーでは当時の長洲一二(かずじ)知事が柔道着姿となり、柔道家・山下泰裕氏との乱取りの稽古が披露され、知事が背負い投げで山下氏を投げるというパフォーマンスで花を添えた」と開館時を振り返ります。
そのうえで、「約40年にわたってこの武道館で修行した多くのアスリートが全日本や世界の舞台で活躍された。リニューアルに大いなる感謝を申し上げ、今後も武道10団体でさらなる育成につとめていきたい」との思いを述べました。
神奈川県議会の「武道振興議員連盟」で会長をつとめる松田良昭県議(戸塚区選出)は、「神奈川には“世界の山下(柔道家)”と“世界の宮崎(正裕、剣道家)”がおり、子どもたちは2人を目指していくだろう。武道館はそんな大事な場所として、これからも育てていきましょう」と呼びかけました。
今回のリニューアルでは、県にゆかりを持つ山下泰裕さんと宮崎正裕さんの展示コーナーが玄関ロビーに新設されています。
全日本選手権を9連覇し、ロサンゼルスオリンピック(1984年)の金メダリストとして知られる柔道家の山下さんは、東海大相模高校(相模原市南区)の出身で、現在は東海大学の副学長をつとめ、かつて神奈川県体育協会では会長(2006年~2014年)も担いました。
剣道家の宮崎さんは、神奈川県警の警察官として全日本剣道選手権大会では史上初の連覇を含む6回の優勝を果たすなど、「神奈川が生んだレジェンド」(橋本副知事)で、「当時、全国の有名選手はみな“打倒宮崎”を目指していた」(県剣道連盟の幸野實会長)という剣道界の象徴的な存在です。
式典に招かれた宮崎さんは、東海大相模高の先輩である山下さんとともに展示されていることに「喜びだが、恐縮している」といい、「県立武道館は審査会や大会、稽古会などでたくさん利用させていただいた。(今回展示された)優勝カップを見るたびに身を引き締め、これからも活動していきたい」と話していました。
式典後はリニューアルした柔道場で「奉祝演武会」が催され、県の武道連絡協議会に加盟する合気道連盟、空手道連盟、弓道連盟、剣道連盟、銃剣道連盟、柔道連盟、少林寺拳法連盟、相撲連盟、なぎなた連盟、日本拳法連盟の10団体がそれぞれ演武を披露し、県立武道館の再オープンを祝いました。
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【参考リンク】
・シンコースポーツ神奈川県立武道館(岸根町)