30周年迎えた「港北芸術祭」の集大成ともいえる朗読劇が開催されます。
港北芸術祭実行委員会(事務局:港北区地域振興課内)と港北区役所(大豆戸町)は、来週末(2023年)9月9日(土)14時から16時まで(13時30分開場)、朗読劇「真昼の夕焼け」公演を横浜市港北公会堂(同)で行います。
区内在住の俳優・五大路子さんが、1999(平成11)年に「横浜から演劇を」との想いで旗揚げした「横浜夢座」が今回の舞台に登場。
2016(同28)年からは小中学生へ向けた「平和授業」の一環として、第二次世界大戦末期の1945(昭和20)年5月29日に起こった「横浜大空襲」の実話を描いた同作品の公演活動を続けてきました。
今回、港北芸術祭として上演することで、より多くの人々に作品を届けることを目的としており、朗読劇の後の第2部では、トークショー「伝えたい 命の大切さを」も開催。
五大さんが港北区内の歴史研究家として知られる大倉精神文化研究所(大倉山2)理事長の平井誠ニさん、漆原順一港北区長とともに登壇し、「横浜大空襲」や、その5日前にあったという大倉山への空襲の様子を体験者へのインタビュー証言とともに振り返る予定となっています。
インタビュー動画は、港北区周辺の郷土史などの作品を多く手掛ける「港北ふるさとテレビ局」(伊藤幸晴代表)が制作し、綱島の古民家「池谷家住宅」当主の池谷(いけのや)道義さんの協力で、池谷家所蔵の焼夷(しょうい)弾の実物展示も行う計画です。
港北芸術祭が開始された1993(平成5)年から実行委員を務めてきた五大さんは、2017(同29)年10月に、新横浜駅近くにある篠原城(城址)を舞台とした「まぼろしの篠原城~語りの楽劇」を港北公会堂で披露して以来の同芸術祭への登場となります。
今回の講演には、平井さんや池谷さんほか、港北区ゆかりの人々が多く支援や協力を行っているとのことで、同芸術祭の30周年を刻む「地域ぐるみ」でのイベントのひとときを共有できる貴重な機会となりそうです。
当日のチケット(前売り券=9月7日まで販売)は一般1500円、中学生以下500円(当日券はそれぞれプラス500円)。電子チケットぴあやローソンチケット、天一書房大倉山店(大倉山2)や同綱島店(綱島西1)、会場となる港北公会堂で購入可能とのこと。
問い合わせは港北区役所地域振興課(045-540-2239)まで。
「港北芸術祭」は30周年の節目に
「港北のまちを芸術でいっぱいにしよう」と、港北区ゆかりの芸術家や地域の代表者らが集まって立ち上がったという「港北芸術祭」。
1992(平成4)に区内在住の文化芸術の専門家による「港北区地域文化振興懇話会」が設立され、その参加メンバーにより翌1993(平成5)年から「港北芸術祭(実行委員会)」がスタート。良質な芸術に低料金で触れられるようにと、自ら事業を企画してきたといいます。
「実行委員会のメンバーは、地域の文化や芸術振興のために、無償で集い活動を行ってくださっています」と、事務局を置く区地域振興課の岸本弘之課長。
現在、年2回ほど区役所で実行委員会を開催しており、今年(2023年)6月に開かれた同委員会には、2017(同29)年度からの実行委員会会長をつとめる日本チェロ協会評議員の堀了介(りょうすけ)さんや、新たに委員として就任した港北区連合町内会長(新吉田あすなろ連合町内会長)の関治美さん、横浜市出身で慶應義塾大学卒のフリーアナウンサー・朝岡聡さんらが参加し、新年度の各イベントの開催に向けた情報共有を行っていました。
結婚を機に港北区に移り住んだという、東京都出身のチェロ奏者である堀会長は、元NHK交響楽団やサイトウ・キネン・オーケストラに在籍するなど、クラシック音楽界では広く知られた存在。
港北芸術祭に参加したきっかけについては、初代会長の故・熊田正春さん(日吉病院名誉院長)や、2代目会長の故・山岡優子さん(ピアニスト)からの声かけがあったからだといい、「発足した当初は、まだまだ港北区内に多くの芸術家がいるとはいえない状況でした」と、区外からアーティストを招いての事業も多くあった当時を振り返ります。
子どもたちに「音楽」や「芸術」の素晴らしさを
堀さんは、2016(同28年)11月に「サンドアート・クラッシック」公演で、チェロ奏者で娘の堀沙也香さんと共演。
翌2017年の「まぼろしの篠原城」では、今回の舞台に立つ五大さん、同じく実行委員会委員の尺八奏者・三橋貴風さんと共演し、約500年前の戦乱期にあった頃の篠原城の歴史を伝えるステージを展開しました。
「この間、30年でだいぶ芸術家が港北区内に増えてきたように感じます」と語る堀さん。
かつて地方公演をしていた際に招かれた九州・長崎県の福祉施設で、「音楽を聴いてくれた男の子が『ありがとう』と言ってくれたのを、施設の院長先生が涙を流して驚いた」というエピソードについて語ります。
男の子には、普段「多くを語ることができない」という障がいがあり、、院長先生がクラシック音楽が大好きでモーツァルトをいつも流していたとのことで、“言葉がなくても音楽で、世代を越えて通じ合える”ことを実感。
以降、子どもたちに音楽の素晴らしさを伝えたいと、演奏活動の傍(かたわ)らに呼ばれた施設などへのチャリティー訪問などにも、より積極的に参加するようになったといいます。
「これからも、子どもたちに音楽や芸術の素晴らしさを伝えることができれば。新型コロナ禍で苦労したから、結構“いいもの”を作りたいという意欲があります」(堀さん)といい、コロナ禍でも公演や活動が多く中止になった苦難を乗り越えて、新しい未来に向けた同芸術祭を、いままで以上に盛り上げていきたい考えです。
なお、「港北芸術祭」に出展(出演)者側として参加するためには、「広く区民の参加が認められ、文化振興への貢献が期待できるもの」といった定めが設けられており、港北区役所に後援や共催の承諾を受けた文化事業などがその対象となっています。
来年(2024年)3月には、新綱島駅で港北区民文化センター「ミズキーホール」(綱島東1)がオープンしますが、運営が指定管理者(港北結マネジメント=株式会社神奈川新聞社・相鉄企業株式会社)によって行われることから、「港北芸術祭」の事業はこれまで通り港北公会堂での開催をメインに実施していく予定(同芸術祭事務局=区地域振興課)とのことです。
(※)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です
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・【過去開催】幻の「篠原城」が五大路子さんの語りで蘇る、10/28(土)・29(日)に公会堂で公演(2017年10月26日)
・【過去開催】世界的巨匠や若手チェリストが区制80周年を祝う、10/19(土)公会堂で記念演奏会(2019年10月9日)
【参考リンク】
・港北芸術祭~朗読劇「真昼の夕焼け」(横浜市港北区)
・【受付中】9月9日(土) 港北芸術祭「朗読劇」 真昼の夕焼け(横浜市港北公会堂)
・港北芸術祭 朗読劇「真昼の夕焼け」を港北公会堂にて上演します。(一般社団法人「横浜夢座」)