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新横浜駅の篠原口駅前で再開発に向けて一歩を踏み出しました。篠原口駅前のまちづくりを検討している「新横浜駅南口市街地再開発準備組合」(金子清隆代表)は、再開発の実務を担う事業協力者として、日鉄興和不動産(旧「新日鉄興和不動産」)と東急電鉄を先月(2019年3月)24日に選び、今後具体的な計画案を策定していく考えです。

再開発が検討されている3.5ヘクタールにおよぶエリアには駐車場として使用されている土地も目立つ(グーグルマップに情報を加筆)

同再開発準備組合は、篠原口駅前の約3万5000平方メートル(約3.5ヘクタール)における再開発を検討するまちづくりグループとして、エリア内の土地所有者らにより昨年(2018年)3月に発足。

同エリア内には土地を所有したり、借地権を持っていたりする人など約40人の地権者がいるとされ、このうち過半数がまちづくりの方向性に賛同していることから、同再開発準備組合が事業を進めるための事業協力者選びを進めていました。

今回協力者に選ばれた2社はJV(共同企業体)として、同再開発準備組合とともに、地権者との話し合いや事業計画案の具体化といった業務を担当します。

東急電鉄では新横浜線の開業を見据え、目黒線への新型車両導入計画も進めている(同社ニュースリリースより)

日鉄興和不動産は、港北区の近隣エリアにおいて、日吉駅を最寄りとする川崎市中原区と高津区に広がる346区画の大規模分譲地「さくらが丘Isaac(アイザック)日吉」(旧新日本製鐵研究所跡地、2003年分譲)の再開発プロジェクトを担当した実績などを持ちます。

東急電鉄は、2023年3月末までに開業を予定する「東急新横浜線」(日吉~新横浜間=「相鉄・東急直通線」の東急電鉄区間)を通じて新横浜駅まで乗り入れることが決まっており、「篠原口のまちづくりに対する意欲が非常に強かった」(再開発準備組合関係者)ことも選定理由の一つとなりました。

新幹線駅ながら篠原口の駅前には商業施設はセブンイレブン(写真左)以外はない。写真真中奥は北口駅ビルの「新横浜中央ビル(キュービックプラザ新横浜など)」

同再開発準備組合が再開発を検討するエリア内では、篠原口の駅前広場の再整備をはじめ、駅北口(新幹線側)に建つ駅ビルのような規模感をイメージした大型ビルの建設を想定。

商業施設や公共集会所、オフィス、住戸などで構成する「複合ビル」とし、周辺では道路をはじめとした公共施設の整備を行う構想を描き、相鉄・東急直通線の開業までをメドに事業化したい考えです。

篠原口の都市計画対象地は「東京ドーム」8つ分

篠原口側の再開発は、今回の駅前エリアだけでなく、篠原町を中心に岸根町の一部と大豆戸町(地下鉄2番出口周辺)にかけて、東京ドーム約8個分におよぶ37万平方メートル(約37ヘクタール)が対象となっており、今から四半世紀前の1994年に横浜市が都市計画決定を行っています。

横浜市が1994年に都市計画決定した「新横浜駅南部地区」は篠原町や岸根町、大豆戸町にわたって、東京ドーム8個分の約37ヘクタールにおよぶ。現在は道路計画などは白紙の状態だが、都市計画による土地利用の制限は残る(市の「新横浜駅南部地区」ページより)

事業化された1997年当時の資料によると、区内外に500人以上いたとされる地権者のうち、新たな道路建設を行うなどの土地区画整理事業案に対して、地元に住む約200人の地権者が反対の意向を表明するなど、計画への反発の声が強かったといいます。

市は10年近くにわたり、8億円以上の調査費や事務所運営費を投入して地権者との話し合いを続けてきたものの、再開発に向けた計画を前へ進めることはできず、2003年3月には当初計画を撤回

この間、市が約72億円をかけて先行取得した周辺の土地も、本来の用途に活用できないまま、現在まで残されています。

篠原口の都市計画決定したエリアには市が先行取得した土地が未活用のまま残っている(篠原町)

その後、市は2008年ごろから地元との話し合いを再開。過去の反省から「地域の合意形成を大切に、合意がとれた所から段階的に進めていきます」などとする「新たなまちづくりの考え方(案)」を2010年に打ち出しました。

ただ、現時点で事業化へ向けた歩みを進めているのは、計画エリアのうち篠原町側の駅前周辺のみにとどまっており、篠原町の岸根公園寄りや駅前の大豆戸町側など、残る大半のエリアで具体的な動きはまだ見えてきません

篠原口の駅前は都市計画決定による土地利用の制限から低層の建物や駐車場が目立つ。写真手前左は新幹線開業時からある「新横浜ビルディング」、右側は都市計画決定前に建てられた5階建てのオフィスビル「加祥ビル」

当初の区画整理事業を施行するための「条例」は住民の反発で廃止されたものの、再開発へ向けた都市計画自体は覆されなかったため、東京ドーム約8個分にもおよぶ計画エリア内では、今も高さ12メートル・3階建てまでといった建築制限をかけられている状態です。

また、まちづくり計画が止まっている影響で、車1台が片道通行しかできないような狭い駅前道路など、公共施設の改善もできずにいます。

一方、1964(昭和39)年に新幹線駅ができる以前から周辺に土地を持っていた住民の間には、長い歴史を持つ所有地をビル化などの形で共同化することへの抵抗感に加え、新横浜駅の新設にともなって一部企業が先導したとされる周辺土地取得の不透明な動きの記憶が残るなか、その後に浮上した篠原口における土地区画整理事業も、地元の広い合意を得ず一方的に決られめたとの思いも残っており、行政が主導するまちづくり計画自体への不信感を完全に拭い去るまでにはいたっていません。

東海道新幹線の新大阪方面行のホームからは、首都圏の新幹線駅なのに“都会的な建物がほとんど見えない”として、時おり全国的な話題にのぼることがある

この先、相鉄・東急直通線(東急新横浜線・相鉄新横浜線)の開業によってさらに発展が期待される新横浜駅周辺。半世紀以上にわたる過去の経緯を乗り越え、都心部としてのまちづくりから残されたエリアで、新たな一歩を踏み出すことができるのか。

先導役を果たすことになる駅前地区の再開発準備組合による今後の動きに注目が集まります。

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【参考リンク】

新横浜駅南部地区(篠原口)について(横浜市都市整備局)

新横浜駅南口駅前地区市街地再開発準備組合について(横浜市都市整備局)