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“室内農業”なら区内障害者の就労が拡充でき、将来の見通しも明るくなる――。

新横浜エリアに近い大豆戸町に置かれている「しんよこはま地域活動ホーム」は港北区における障害者支援の拠点的な施設

新横浜エリアに近い大豆戸町の「しんよこはま地域活動ホーム」を舞台に、障害者が新たな働ける場を作るため、地元企業の経営者らを巻き込んだ新たなプロジェクトが動き始めました。新たな設備の導入やビジネスモデル化など、乗り越えるべきハードルはまだ高い状態ですが、実現へ向けて奔走しています。

今回の舞台、しんよこはま地域活動ホームは、環状2号線からほど近く、神奈川税務署の裏手付近の大豆戸町に位置。港北区内で複数の地域ケアプラザや福祉施設の運営を担う社会福祉法人横浜共生会(新吉田町、村松紀美枝理事長)が2001年に開設したものです。

同施設は、「社会福祉法人型・障害者地域活動ホーム」と呼ばれる横浜市の独自制度によって設けられており、市内各区に1カ所ずつしかない比較的大規模な障害者支援の拠点施設

18歳以上の障害者を対象として、日中に作業や創作などの活動を行ったり、障害児童や障害者のショートステイや一時ケアを提供したりといった事業を行っています。

しんよこはま地域活動ホームの公式サイト

しんよこはま地域活動ホームでは、区の拠点施設として、利用者が幅広く身体から精神まで個々が持つ障害に合わせる形で、作業プログラムを作る必要があります。

また、利用する人数も多いため、施設から外出しての作業活動が難しく、スペースに制約のある室内作業では、限定的にならざるを得ないのが現状。また“仕事”として日中にペンづくりや部品加工といった作業を行っても、一定の賃金に達することは多くないといいます。

そうしたなか、新たなプログラムとして浮上したアイデアが、屋内で野菜を栽培する“室内農業”でした。

室内農業である「有機水耕栽培(ゆうきすいこうさいばい)」のイメージ(株式会社エネショウ提供)

屋内での農業は「植物工場」とも呼ばれ、太陽の代わりとなるLED照明ITシステムを駆使し、天候に左右されることなく野菜類を収穫できることから、将来性のある農業ビジネスとして新規参入が増えるとともに、そのシステムも進化する傾向にあります。

新吉田東5丁目株式会社エネショウを経営する藤原雅仁さんも「有機水耕栽培(ゆうきすいこうさいばい)」と呼ばれる室内農業の普及に取り組む一人。

しんよこはま地域活動ホーム所長の本田さん(左)と株式会社エネショウの藤原さん

しんよこはま地域活動ホームに室内農業のアイデアをもたらした“仕掛け人”である藤原さんは、障害者の福祉施設に関わっている高校時代の同級生が、地元の廃校を活用してカフェを成功させたことに感銘を受け、自らも「笑顔あふれる福祉施設を増やす」との目標を掲げて事業を行っています。

そして、「有機水耕栽培をビジネス化できれば、障害者の就労機会を増やし、賃金ももっと増やせるのではないか」(藤原さん)との思いにいたったといいます。

首都圏の福祉施設をまわって有機水耕栽培の実証を行う施設を探し続けるなかで、「もし、栽培時に困ったことがあっても、区内なら自転車ですぐに駆け付けてサポートできる」と気づき、自らの地元である港北区に目を向けます。

しんよこはま地域活動ホームの一部屋を使った具体的な計画は出来ているが、数百万円かかる初期費用が課題(株式会社エネショウ提供)

同じ新吉田エリアに本部を置く横浜共生会に話を持ちかけたところ、障害者の作業プログラム拡充を模索していた「しんよこはま地域活動ホーム」所長の本田和徳さんが「新たな作業プログラムとなるだけでなく、収穫した作物の販売を通じて地域とよりつながれる」と、同法人の村松理事長とともに実証への参加を決断。

これに勇気づけられたエネショウの藤原さんは、栽培技術や研究開発の専門家らに協力を依頼し、今回の実証を成功させるための専門家チームを結成。横浜共生会のメンバーとともに、今年春から有機水耕栽培の開始へ向けた一歩を踏み出しました。

ただ、有機水耕栽培を始めるためには、機器の導入などで最低でも数百万円単位の初期資金が必要。現段階ではビジネスとして成り立つ道筋が立っていないだけに、銀行から借りるのも難しい状況です。

そこで、理念に共感した不特定多数の人から少額を“出資”してもらい、その返礼として、しんよこはま地域活動ホームの利用者が製作した手作り雑貨などをプレゼントするという仕組みの「クラウドファンディング」を活用

今回の実証を成功させるため、室内農業や福祉の専門家と横浜共生会によるチームが結成された(クラウドファンディング「GoodMorning」のページより)

5月下旬から今回の実証を始めるための資金として、1000万円を目標に全国から“出資”を募っていますが、現時点で集まっているのは60万円ほどと苦しい状況です。募集期間が今月(7月)末までと区切られているだけに、メンバーは焦りながら日々奔走しています。

「しんよこはま地域活動ホームでの実証が上手くいけば、そのノウハウは全国の福祉施設に展開でき、多くの雇用を生むことができます。今回の試みを一人でも多くの人に関心を持っていただき、知ってもらいたいと願っています」と藤原さんは話します。

障害者雇用の新たな受け皿となるべく、しんよこはま地域活動ホームで始まった今回の取り組み。成功となれば、港北区だけでなく、全国の福祉施設でも障害者の雇用や日中活動の拡充につながる可能性があるだけに、注目が集まります。

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大豆戸町の「しんよこはま地域活動ホーム」で11/3(土)に“秋まつり”(2018年10月31日、毎年11月に地域イベントを開催)

【参考リンク】

障害のある方の「生きがい」と「笑顔」を育てる日本一の室内有機水耕栽培場をつくる!(クラウドファンディングサイト「GoodMorning」、今回の取り組み紹介と出資募集ページ)

しんよこはま地域活動ホームの案内(横浜共生会)