土地の価値を算出した「基準地価」(7月時点)や「公示地価」(1月時点)が発表されると、全国最高の地価として銀座や丸の内といった都心部の商業地ばかりがクローズアップされますが、実は全国ランキングで地価のベスト10に入った土地が港北区内に存在します。都内と大阪中心部の地点ばかりが並ぶなか、10位にその場所が突然登場していました。
このほど発表された2017年7月の基準地価では、日吉駅に近い日吉本町1丁目や大倉山駅至近の大倉山3丁目など、閑静な住宅地の地価が神奈川県内のベスト10に入りましたが、全国で見ると、ランキングの10位までを占めるのは千代田区や港区など都内中心部ばかり。商業地分野でも、区内最高値の新横浜駅前が県内ベスト10にさえ入れません。
そんななか、港北区が基準地価で全国ランキングの10位に入っていたのが「工業地」分野です。全国812カ所を対象に調査が行われており、1位は港区のレインボーブリッジに近い「芝浦ふ頭」(ゆりかもめ)駅前にある運輸会社倉庫で、1平方メートルあたり95万7000円。
2位以下は都内と大阪中心部が並ぶなか、10位に食い込んでいたのが樽町4丁目です。価格は1平方メートルあたり23万1000円で、昨年調査時と比べ1.3%の上昇。9位に付けた大阪市浪速区の工業地に1000円差に迫っていました。
この場所は、東海道新幹線高架橋の鶴見区寄りで、付近にはスーパー「フードワン綱島店」(樽町3)や292戸の大型マンション「パークシティ綱島壱番街」(同)などがあり、住宅地としても居住者が多いエリア。調査対象の樽町4丁目13番地も、工場が目立つ一方で、同じ区画内には複数のマンションが位置しています。
1960年代から80年代にかけて、「都心に近く土地が安い」として多数の工場が進出した港北区。特に樽町は、自動車サスペンション部品大手で、東証一部上場企業のヨロズ(樽町3)に代表されるように“ものづくり”企業が多く進出しています。
高度経済成長期から日本のものづくりを支えてきた工業地帯でしたが、今では住宅への転換が続出。そうした影響か全国10番目の価格となるほどの“高価な工業用地”に変化しています。工場が次々と撤退し、マンションへと変わっていくのは、利便性の高い港北区ならではの宿命といえそうです。
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・<基準地価>大倉山3丁目が区内2位、日吉~白楽間の東横線沿線で目立つ上昇(2017年9月21日)
・50年前の港北区小学生向け資料集を発見、巨大な区の姿や高度成長期の変化に注目(2017年2月19日、多数の工場が進出していることを記載)
【参考リンク】
・基準地価格高順位表(全国)(国土交通省、3番目「工業地」の10位に樽町4丁目)