新横浜・菊名・大倉山・新羽など港北区南部の地域情報サイト

相鉄と東急間の乗り継ぎに割引を――。先週(2022年)10月21日、国土交通省は「相鉄・東急直通線(新横浜線)」の加算運賃の上限額を正式に認可すると同時に、パブリックコメント(意見公募)で沿線住民などから寄せられた30件の内容と同省の見解を公表しました。

相鉄と東急電鉄から出されていた加算運賃の申請内容(2022年8月23日「運輸審議会」時の国土交通省説明資料より)

今回の認可は、相鉄(相模鉄道)と東急電鉄から来年(2022年)3月に開業する相鉄・東急直通線(新横浜線)の加算運賃について、今年8月9日に上限額の申請が行われていたもの。

相鉄が「羽沢横浜国大駅~新横浜駅」の4.2キロ区間で40円(通勤定期1カ月1520円、通学定期同580円)、東急電鉄が「新横浜駅~新綱島駅」の3.6キロ区間で70円(通勤定期1カ月2620円、通学定期同970円)を上限として普通運賃に加算するとの内容です。

加算運賃を設定しない場合は開業後80年間にわたって累計資金が黒字にならないという(同)

国や横浜市、神奈川県、JRTT鉄道・運輸機構などが負担した4022億円の建設費(相鉄・JR直通線分含む)に対し、鉄道会社は「施設利用料」という形で支払っていく必要があるため、加算運賃は利用者にも一部負担を求める考え方によるものです。

これにより、日吉駅・新綱島駅新横浜駅間の運賃は片道250円(※東急の値上げ後運賃、IC同額)、通勤定期券は1カ月9400円、通学定期券は1カ月3440円とすることを計画。日吉と新綱島の2駅から新横浜駅までの区間は同額の運賃となる予定。

2022年8月時点の新横浜駅の概略図、相鉄と東急電鉄が分かれる駅となる(同)

また、羽沢横浜国大駅新横浜駅間の普通運賃は片道220円(IC運賃218円)となる見通しで、これに相鉄が10月21日に新たに申請した「鉄道駅バリアフリー料金制度」による一律負担(3月以降は普通運賃に10円を加算する計画)が今後加わる予定です。

たとえば、相鉄線の羽沢横浜国大駅から日吉駅まで10キロ区間の普通運賃は、新横浜駅までの相鉄線分の230円(バリアフリー料金含む想定額)と新横浜駅から先の東急線の250円を合計して480円となる見通し

新横浜駅を境に会社が変わって初乗り運賃がかかるうえ、加算運賃を含んだ割高な運賃設定となっていることから、パブリックコメントには両社を乗り継ぐ際に割引を求める意見が寄せられていました。

加算運賃「やむを得ない」が割引を

今回の加算運賃の認可に際し、国土交通省が今年8月10日から23日まで行ったパブリックコメントの募集に計30件の意見が寄せられ、その内容と同省の見解が今月10月21日に公表されています。

2026年度に需要が成熟した時の需要予測結果では、羽沢横浜国大駅が約3万1200人、新横浜駅は約4万8600人の利用を予測(2022年9月1日「運輸審議会」時の国土交通省説明資料より)

加算運賃に対しては「やむを得ない」との意見が多く見られた一方、「西谷~日吉間の加算運賃が2社合わせて140円はあまりにも高すぎる」「相鉄・東急の直通利用では基本運賃でも初乗り運賃が2重に掛かるところ、110~140円の加算は利用者にとって過大な負担」「直通の効果が薄れる」などの声があり、両社を乗り継ぐ際には、何らかの割引を設けてほしいとの意見が目立ちました。

これに対し、国土交通省は「利用者便益(需要)の最大化を目指しつつ、速達性向上計画の認定基準を満たす事業性を確保する観点、また、加算運賃を加えた運賃額が他の交通機関を利用した場合の運賃と同程度となり、利用者の納得感を得られやすいよう、加算運賃額を設定すると聞いております」と説明。

そのうえで、「施設使用料は、普通運賃に加算運賃を加味した場合の受益相当額に基づき設定されており、これを減額した場合には、合理的な期間内に整備主体である鉄道・運輸機構の累積資金収支が黒字転換できず、本事業の事業性が確保できなくなることから、乗継割引の導入には課題があると聞いております」との見方を示します。

現時点で相鉄・東急ともに独自の特例を設ける予定(2022年8月23日「運輸審議会」時の国土交通省説明資料より)

一方、パブリックコメントには「相鉄側は横浜、東急側は菊名で横浜線に乗り換えて新横浜に行くより安くなるなら問題ない」との意見も寄せられていました。

なお、来年3月に予定されている東急電鉄の運賃値上げや、JR東日本の首都圏路線と相鉄で計画されているバリアフリー料金制度の導入後のICカード普通運賃を想定し、「西谷駅~新横浜駅間(横浜乗り換え)」、「日吉駅・綱島駅~新横浜駅間(菊名乗り換え)」と新横浜線経由の運賃をそれぞれ比較した場合では、加算運賃があっても新横浜線の運賃が安くなる予定です。

大倉山方面から新綱島駅の扱いは?

今回のパブリックコメントには、大倉山駅や菊名駅、妙蓮寺駅などから新綱島駅東急新横浜線に乗り継ぐ際に運賃はどうなるのか、綱島駅と新綱島駅を同一駅扱いとみなし「改札外乗り換え」を認めてほしいといった意見もありました。

工事中の新綱島駅(2022年9月)

国土交通省は、「大倉山方面からの利用についてですが、綱島駅、新綱島駅は同一駅ではなく、綱島駅で下車し、新綱島駅で再度乗車する場合には、綱島駅で一度運賃精算を行う必要があり、大倉山方面から日吉で乗り換え、新横浜まで利用の際には、実際に乗車した距離に応じた基本運賃に加算運賃を合算することとしております」と回答。

新綱島駅については、目黒駅や渋谷駅方面へ向けては加算運賃を設定せずに綱島駅と同一の運賃設定とし、東横線の綱島駅と日吉駅間を含む「定期券」では新綱島駅も使えるようになる予定ですが、国土交通省の説明では、現時点で大倉山駅方面から普通乗車券の利用時に特別な扱いを行う計画はないとのことです。

【関連記事】

<国交省>相鉄・東急直通線の「加算運賃」でパブリックコメント募集(2022年8月10日)

<東急電鉄>1年以上先の「値上げ」を申請、菊名・大倉山~渋谷は288円(2022年1月11日、来年3月に運賃値上げを予定)

【参考リンク】

相鉄・東急直通線の旅客運賃(加算運賃)上限設定の認可について(国土交通省鉄道局、2022年10月21日)

相模鉄道株式会社及び東急電鉄株式会社の鉄道事業の旅客運賃(加算運賃)上限設定認可申請に関する意見募集について(10月21日に「結果概要と回答」を公表)

「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用し、ホームドアの全駅整備などを確実に推進します(相模鉄道、2022年10月21日、運賃に一律10円加算などを計画)