大倉山2丁目の「歓成院(かんじょういん)」に隈研吾さんが設計した新たな建物が完成しました。
今月(2022年)10月2日、高野山真言宗の寺院「歓成院」で、新たな「客殿(きゃくでん)」が完成したことを祝う落慶(らっけい)法要が営まれ、港北区内外10寺院の住職が参列して庭儀(ていぎ)などの儀式を行い、設計した隈さんが「初めて古里に建物を作ることができて感無量」とあいさつしました。
2020年に歓成院は12年に一度の本尊開帳を迎えたこと契機とし、建築から約50年が経過して老朽化が進んでいた客殿の建て替えと、関東大震災や第二次世界大戦を経た築約125年という本堂の耐震化を計画。大倉山出身の建築家である隈さんに設計などを依頼しています。
完成を記念して営まれた落慶法要は、鳥山町にある三会寺(三會寺=さんねじ)住職の安藤尊仁(そんにん)さんが導師をつとめ、光明寺(新羽町)や青蓮寺(神奈川区羽沢町)、長光寺(大曽根台)、龍泉寺(鶴見区岸谷)、遍照(へんじょう)院(神奈川区子安通)、東泉寺(神奈川区羽沢町)、薬王寺(神奈川区七島町)、久光院(綱島西2)の横浜市内9寺院に加え、高野山真言宗の別格本山である金剛院(東京都八王子市)からも住職が参列し、法要の職衆(しきしゅう=職務)をつとめています。
運営を支えた長泉寺(緑区中山町)、最勝寺(神奈川区菅田町)の住職らを含め計18人が携わったほか、玉泉寺(南区中村町)の住職が来賓に招かれ、歓成院の名誉住職・摩尼之法(まにしほう)さんも参列しています。
法要は、各寺院の住職が本堂前に並んで経を唱える「庭儀」で厳(おごそ)かに始まり、本堂へ入る際には華を模した色とりどりの紙を散らす「散華(さんげ)」などが行われました。
歓成院の第26世住職をつとめる摩尼(まに)秀法さんが「慶讃(けいさん)文」を読み上げ、室町永禄3年(1560年)に開山してからの歴史を振り返り、旧太尾町(現大倉山)の中間に位置していることから「中の寺」と言われ、本尊とする十一面観世音菩薩を由来として周辺が「字観音前」や「観音耕地」、大倉山は観音山と呼ばれていたことなどを紹介。
続いて開かれた式典では、法要の導師をつとめた三会寺住職の安藤さんが「外を見ていただくと、燦燦(さんさん)と太陽がこの伽藍(がらん)を照らし、歓成院のエネルギーをますます増やすようだ。大倉山の中心になったんだな、という思いが心から湧いてきた」と祝辞を述べました。
来賓を代表してあいさつに立った隈さんは、「摩尼住職から声をかけられて本当に驚き、自分の古里の一番大事なお寺に仕事で携わることができる、なんて光栄なことだろうと感じた」といいます。
新築した客殿については「古くから大倉山の中心が歓成院だった。そこにふさわしい建物は何だろうかと考え、木造で庇(ひさし)を深く出した建物とした。本殿も木造の美しい梁(はり)だが、その木肌に負けないような木の使い方をしたいと思った」と話し、「木の建物を見て地域の人たちが元気になって一つにまとまり、となりの(アソカ)幼稚園の子どもたちが木の建物を見て育ち、心の優しい子になってくれると信じています」とメッセージをおくりました。
2年かけて行われてきた客殿の新築や本堂の耐震化では、隈さんが「江尻先生は清水寺や善光寺など日本を代表するお寺の耐震補強に携わってきた第一人者」と評する江尻建築構造設計事務所(東京都新宿区)代表の江尻憲泰(のりひろ)さんが構造設計を担当し、寺社建築で定評のある中島工務店(岐阜県中津川市、中島紀于(のりお)社長)が建築を行っています。
3氏は「寺門の興隆に貢献した」として高野山真言宗を代表する葛西光義管長(総本山「金剛峯寺」第414世座主)から褒賞(ほうしょう)状が届き、歓成院住職の摩尼さんが各氏に手渡しました。
式典の最後に摩尼さんは「今日は太尾神社のお祭り(神事)が行われており、土地の神様にも(完成を)ご報告できる良いタイミング」と述べ、「大倉山は里山があって昔の風景が残っているので、たくさんの方に来ていただければ。隈さんとの縁をつなげてくれた大倉山の地に感謝したい」と話していました。
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・建築家・隈研吾さん、生まれ育った「大倉山」への深い思いを語る(2022年9月12日、歓成院の客殿についても詳しく話している)
【参考リンク】
・高野山真言宗「歓成院」・大倉山アソカ幼稚園(大倉山2丁目)