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コラム「横浜ウオッチ」

【コラム:横浜ウオッチ(1)】きょう(2021年)8月30日(月)から新たな市長を迎える横浜市。377万8000人超が住み、4万4200人超の職員が働く市役所にどんな変化が現れるのでしょうか。港北区民の目線から“ヨコハマの動向”を区内在住の田山勇一ライターがコラム形式で連載します。

 「横浜市」を無視すると不利益を被る

コラム「横浜ウオッチ」少し昔、小学生の間で大流行したアニメ作品のような名が付けられたコラム「横浜ウオッチ」では、新たな市長を迎える横浜市政を中心に、“ヨコハマ”の動きを定期的に追っていきたい。

日々東京都内へ通う“横浜都民”の多い港北区(青葉区など北部はだいたいそうだろう)の在住者からすると、横浜市政の動きなど、どこか遠い街の出来事のようにも感じてしまいそうだが、税金を払う先である“横浜市”に無関心であった結果が、人口がいくら増えても増えない図書館とか、いつまでも解決しない保育所不足の問題とか、全然予約できない64歳以下のワクチン接種(国の責任も大きいが)とかにつながっているのではないか。

候補者の演説を聞く人々(港北区綱島東)

先日の市長選挙で港北区は、市の平均(49.05%)より高い投票率(49.38%)を記録しており、少しくらい市政に文句を言わせていただく権利はあるはずだ(青葉区民や都筑区民は港北区よりも投票率が高かったので、もっと言っていい)。

観光客を誘致して税収を増やそうという考えを否定するものではないが、カジノを含んだ「IR」とか「新たな劇場」とか、多くの住宅地住民の税金を使って市役所の近所で遊ぶ計画を立てて騒ぎを起こすのは、そろそろ止めていただきたいとの思いがある。

このコラムでは、普通の何気ない住宅地に住むいち横浜市民として、32階建て市役所の界隈(かいわい)で決められている市の動向を定期的にウオッチしていきたい。

東電やJALより大きい「横浜市役所」

きょう8月30日(月)から山中竹春新市長を迎える横浜市。市の公開資料によると、昨年(2020年)4月1日現在で市役所では4万4227人の正職員が働いているという。

馬車道駅近くにある横浜市役所

4万4200人超という職員数は、JR東日本(4万9780人=2021年4月)やANA(4万6580人=同)の社員数より若干少ない規模だが、東京電力(3万7891人=2021年3月)やJAL(3万6060人=同)の社員数よりも多く、職員数だけで見ると、かなりの“大企業”といえる。

ここには、小・中学校の教員など教育関係(1万5000人超)や消防局の職員(3600人超)、地下鉄やバスを運行する交通局の職員(約2500人)、市立病院などの医療関係職員(1600人超)、水道局の職員(約1500人)といった専門職も含まれているので、いわゆる純粋な“市役所の職員”(「知事部局」と呼ばれる)は1万6700人ほどということになりそうだ。

この知事部局(1万6700人)のうち7800人超は、鶴見区(567人)や港北区(543人)、中区(494人)、青葉区(484人)、戸塚区(480人)など18の区役所に配置。各区の人口と比べて若干アンバランスな配置数となっているのは気になるが、市職員のうち半分弱は、住民に身近な区役所に勤務しているわけだ。

とはいえ、市の重要な事項のほとんどは中区の馬車道駅近くにある市役所(職員9000人弱)内で決められており、企業で言えば“本社”である市役所に対し、区役所は住民へのサービスを提供する“営業所”のような存在。営業所なので、営業手法くらいは独自に決めることはできるが、肝心の予算や人事は本社に握られている

 “伏魔殿”へ一人で乗り込む新市長

8月22日の市長選で当選した山中竹春氏の選挙ポスター(掲示板より)

そんな巨大組織・横浜市で、間接的には4万4227人、直接的には1万6698人のトップに立つことになったのが山中新市長だ。市民の投票によって選ばれたとはいえ、横浜市のいち組織である市立大学の教授から、いきなり巨大企業の代表者として乗り込んでいくことになる。

タレントから宮崎県知事に転じた経験を持つ東国原(ひがしこくばる)英夫氏は、「しかし山中新市長、これから議会運営等大変だろうな。市議会・市役所(伏魔殿)・神奈川県・国(政府)、正に四面楚歌。魑魅魍魎・百鬼夜行・伏魔殿の世界。まぁ、山中氏もサンドバッグを覚悟して入って来たのだろうから」と実感のこもった内容を自身のTwitterに投稿していたが、トップとして役所へ単身で乗り込んでいくのは、それだけ大変だということだ。

市長は自らの秘書のような人は連れていけるが、極端に言えば現時点では「1人(市長)vs 1万6700人(市職員)」という状態ではないだろうか。この1万6700人のなかから(または外部から)自らの手足となって動いてくれる市の最高幹部「副市長」4人を選び(3人でも可)、徐々に“山中体制”を築いていくことになる。

IR推進の担当だった平原副市長(右)(2020年2月、港北公会堂)

現在、副市長は、平原敏英氏(筆頭副市長、都市整備局やIRなど担当)をはじめ、小林一美氏(デジタル統括本部や政策局など担当)、城博俊氏(こども青少年局や健康福祉局など担当)、林琢己氏(財政局や市民局、港北や青葉、鶴見など北部の区役所も担当)の4人がおり、そのまま「続投」という判断もできる。

IRの中止を掲げる新市長が、IR推進の実質的トップだった平原副市長を続投させることは難しいだろうが、新型コロナウイルス禍への継続的な対応が重要視されるなか、すべての副市長を代える必要はないのかもしれない。

副市長選びも「議会」の同意が必要

山中新市長に立ちはだかるのは、市の組織だけではない。もう一方の「市民の代表」である横浜市議会(正式には「横浜市会」という名称)も難関だ。副市長を就任させるにも、議会で「同意」を得ることが必要となる。

横浜市議会(市会)の出入口は市役所とは別に設けられている

85人(定数は86人だが1人欠員)いる議員のうち、新市長の味方となりそうなのが、今のところ立憲民主党の市議と国民民主党の市議(2人)で結成した「立憲・国民フォーラム」という会派の20人と、山中新市長の選挙を後方支援した日本共産党の9人くらいしかおらず、残る56人は少なくとも今のところ「味方」ではない

たとえば、IR推進の観点から林文子前市長を支持していた自民党の山本尚志市議(磯子区)は自らの公式サイトで、「自称、『コロナの専門家』」として当選した山中新市長に対し、「具体的なコロナ対策については示されておらず、その手腕は未知数」との見方を示し、「言動をおおいに注目したいと思います」といった内容の文章を公開。手ぐすね引いて待っているぞ、といった雰囲気を漂わせている。

現在、自民党の会派「自由民主党・無所属の会」には36人公明党は16人の市議がおり、この2会派だけで議会の過半数(43人)を軽く超えているため、両会派の協力を得なければ副市長も選べないし、予算も通らない。

きのうまでが任期だった林前市長は、市議会の少数与党だった民主党(当時)から出馬して当選したが、市長就任後はいつの間にか自民党と公明党が“与党”となって支えていた経緯がある。多数を持つ“議会のセンセイ”の意向は、市政運営にとってそれだけ重要ということの証だろう。

来週9月10日(金)に待ち構える議会

きょう就任したばかりの山中新市長だが、市の全体像をじっくり把握する間もなく、来週9月10日(金)に控える横浜市議会の第3回定例会の本会議に臨まなくてはならない。同日には今後の運営方針などを発表するとともに、10月22日(金)までの議会期間中は、市議から突きつけられる無数の質問に答えていく必要がある。

市長とともに市議会も市民を代表する存在(DVD教材「議会ってなんだろう?~わたしたちのくらしと横浜市会」より)

山中新市長が選挙時に掲げた「敬老パスの自己負担ゼロ化」などの公約はお金のかかる内容が多かっただけに、自民党や公明党などからは、どう実現する考えなのかを問われることになるだろう。

一方、前回議会時までIRを推進していた両会派新市長の「IR中止方針」に対して、どう反応していくかも見どころといえるし、IR以外の市の方針は「ハマ弁中学校給食」なども含め立憲民主党系の会派もほぼ賛成してきた経緯があるので、市長の公約実現に向けてどう折り合いを付けていくのかも注目ポイントだ。

これから先、手練手管(てれんてくだ)に長けた政治家に操られたり、市幹部による「(公約を諦めさせるための)現状ご説明」で説得されたりして、「(政治家や市幹部にとって)ものわかりの良い市長」になるのか、あるいは市長自らが議会も市幹部もねじ伏せて公約実現へまい進できるような力を付けていくことができるのか。これからの山中新市政の動きを見守っていきたい。(田山勇一)

田山勇一(たやまゆういち):港北区在住のライター。全国の街歩き旅スポーツ観戦が趣味。2019年秋には日産スタジアム(横浜国際総合競技場)で行われた「ラグビーワールドカップ」の試合をレポート。コロナ禍でのサッカーJリーグや、アイスホッケーのレポート、無観客五輪の落胆報告記も。人生の一時期、政治の取材も経験したことから、今回の横浜市長選を取材

)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」と「横浜日吉新聞」の共通記事です

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