利用者が気づかないうちにバスの車内アナウンスが進化し、新たなサービスも生まれました。
臨港バス(川崎鶴見臨港バス)は昨年(2025年)6月に合成音声を使って車内アナウンスを短時間で変更できる新システムを導入するとともに、アナウンス広告をインターネット上で出稿者が自ら作成し、期間や区間ごとに申し込めるサイトも公開しています。
行先や次の停留所を案内する車内アナウンスは、かつて路線(系統)ごとに音声を吹き込んだカセットテープなどを作成し、バスに持ち込んで流すのが一般的なスタイル。
現在では音声こそ電子データ化されたものの、あらかじめプロのナレーターなどに依頼してアナウンスを吹き込む手間は変わらず、それらの音声データをバスごとに書き込む必要があったといいます。
たとえば、臨港バスの鶴見営業所(駒岡車庫、鶴見区駒岡1)では84台のバスそれぞれに人が乗り込んでデータを移す作業を行うため、ダイヤ改正などでアナウンスを変更する際に大きな手間となっていました。
オンライン化で随時更新が可能に
臨港バスでは一昨年(2024年)6月から車内アナウンスの効率化に向け、専用サーバーとバス車載機器をオンラインでつなぎ、合成音声を新たに導入するなどの実証実験を鶴見営業所で開始。
5カ月超にわたる実験期間を経て、昨年(2025年)6月にオンライン化した「AOIシステム(Advanced Omnibus IoT System)」と呼ばれる新システム導入を全営業所に広げ、333台あるすべてのバスで運用を始めたものです。
車内アナウンスの“オンライン更新”によってバスごとに手作業で音声データを移す作業が省略できるうえ、合成音声の導入で車内アナウンス変更も短時間でできるようになったといいます。
臨港バス運輸部の内村祐太主任は「現在は準備段階ですが、渋滞や遅延が予想される際にあらかじめ車内アナウンスの内容を変えておくようなことも可能となり、お客さまサービスの向上に加え、運転士業務の負担軽減にもつながる」といい、「合成音声の品質も向上していて、違和感を感じたという声はいただいていません」と話します。
アナウンス広告はネットで制作&申込
もう一つ、オンライン更新と合成音声の導入で大きく進化したのがバス車内に流される「車内アナウンス広告」でした。
これまでは年に1回程度、車内アナウンスを変更する際にしか広告内容を変えられなかったものが、オンライン化により短期間での変更ができるようになっています。
臨港バスでは昨年6月から車内アナウンス広告専用の申込サイトを設けるとともに、臨港バスの全路線からどこの停留所間でどの時間帯に流すのかを指定したり、配信期間も最短7日間から選べるようにしました。
また、広告の配信内容は、サイト上から自ら文章を打ち込んで制作する形とし、合成音声による実際の音声を聞きながら、長さや文節を調整することも可能。申込と広告制作の過程を効率化したことで、広告価格も1時間あたり300円からと従来のアナウンス広告と比べて低く抑えています。
AOIシステムの開発に携わり、全国で車内アナウンス広告を取り扱う株式会社ケイエムアドシステム(東京都豊島区)経営企画室の遠藤幹代さんは「インターネットでこんな簡単に出せるのですか、と驚かれることが多く、アナウンス広告を使うハードルを下げつつあります」と話し、商業施設や店舗がチラシのようにセール・イベント告知に使用するケースも出てきたといいます。
車内アナウンスの新たなシステムを本格導入してから半年超。臨港バスでは今後も積極的に活用していくといい、乗車時は車内アナウンスに耳を傾けてみると、停留所の案内だけでなく、近所の役立つ情報が得られるかもしれません。
(※)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です
【参考リンク】
・「臨港バスの新しいアナウンス広告が始まります」(広告の案内・申込サイト、株式会社ケイエムアドシステム)
・臨港バス「完全オンライン化されたバス放送システムおよびWebでの車内アナウンス広告販売、6月2日より本格運用開始(PDF、2025年6月9日発表)






