今年(2016年)は「相鉄・東急直通線」(日吉~新綱島~新横浜~羽沢=約10キロ、神奈川東部方面線)の計画が大きく動く出来事が多くありました。この1年の変化と今後の動向をまとめてみました。(2016年12月27日現在)
相鉄・東急直通線とは
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東急東横線・目黒線の日吉駅から分岐し、羽沢駅(神奈川区羽沢町)までを結ぶ約10キロの新たな鉄道計画。先に開通する羽沢駅から相模鉄道(相鉄)線の西谷(保土ケ谷区西谷町)までを結ぶ「相鉄・JR直通線」(2.7km)を経て、相鉄線と東急線が相互直通運転を行う。
- ほとんどの区間で地下を通り、途中には地下駅として新綱島(仮称=綱島東1)と新横浜(仮称=新横浜2=環状2号線地下)の2駅が設けられる。東急東横線の大倉山駅付近の地下を通っているが、速達性の確保や土地不足などを理由に駅は設けられていない。
- 相鉄線沿線から都心部へのアクセスを向上させることが主な目的。また、横浜の副都心で新幹線駅である新横浜への利便性向上も期待される。
開業時期
- 今年夏までは「2019(平成31)年4月に開業予定」としていたが、必要な土地入手が遅れたうえ、工事を開始したところ、地盤の悪さが見つかったことなどを理由に、開通時期を「2022(平成34)年度下期(10月~2023年3月末)」に延期することを発表した。
- なお、相鉄・JR直通線は「2019(平成31)年度下期(10月~2020年3月末)」に開通するとしている。
整備と運営を行う主体
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整備:鉄道・運輸機構(独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」)
※鉄道建設を請け負う国の公益法人、北陸新幹線や北海道新幹線の建設もここが担当している
※建設にかかる費用は、同機構・国・神奈川県/横浜市の3者が負担。横浜市の税金が約900億円、神奈川県からも税金約447億円が投入される - 運営:相鉄と東急の2社。鉄道・運輸機構から線路などの施設を借りる形となる
※正式発表は行われていないが、日吉~新横浜間が東急、新横浜~羽沢間は相鉄が担当するとみられている
運行形態・運賃・使用車両
- 運行形態
朝のラッシュ時は1時間あたり10本~14本程度、日中は4~6本程度 - 想定運行パターン(1):相鉄線方面~新横浜~日吉~渋谷(→副都心線方面への乗り入れは不明)
- 想定運行パターン(2):相鉄線方面~新横浜~日吉~目黒(→南北線・三田線方面への乗り入れは不明だが、現在は目黒駅に列車折り返し設備はない)
- 想定運行パターン(3):新横浜~日吉~目黒または渋谷方面(→相鉄線には乗り入れない新横浜始発着列車)
※開通後も日吉始発の目黒線列車は大幅に減るものの残される
※急行などの速達列車が運転されるかどうかは不明
- 運賃
運賃は未定だが、線路を鉄道・運輸機構から借りる形での運行となるため、東急線よりは高い水準となる可能性がある - 使用車両
詳細は発表されていないが、使用する車両についてはすでに決定したことが12月に鉄道・運輸機構が発表した資料で明かしている
工事の進捗と各駅の概況
- 日吉駅
目黒線のホーム停止位置を8月に、折り返し設備を今年10月から渋谷寄りに移動。目黒線の線路を伸ばす形で、相鉄直通線のトンネルに入れるための措置。2・3番線(現目黒線ホーム)が主に相鉄直通線用のホームに使われるとみられる。新横浜方面への乗り換え駅となるため、現在未停車の特急をどのようにするかが焦点。
- 日吉駅周辺の工事
・高架橋の工事が進展中。来年以降、東横線の左右に作った高架橋へ東横線を移し、空いたスペースを相鉄直通線に使う。
・箕輪町1丁目の綱島街道から同3丁目を結ぶ「日吉第1架道橋」を11月で廃止し、現在は歩行者・自転車用の仮通路を確保。来年以降に歩行者用の地下歩道の整備を検討。
- 「綱島トンネル」工事
・箕輪町2丁目~新綱島駅間(約1.1キロ)を結ぶ「綱島トンネル」は掘削(くっさく)の準備段階
・地下を通る2本の雨水管(北綱島第2雨水幹線)とトンネルが接触する可能性があり、トンネルの勾配を深くする計画に変更 - 新綱島駅の工事
・日吉・新横浜方面へトンネルを掘削するための重要拠点であるため、今後、工事用施設を「ピーチゴルフセンター」閉店後の跡地などに整備予定
・新綱島駅の工事は「土留(どど)め工事も終盤に差し掛かっており、(地下35~36メートル掘る予定のうち)地下12メートル付近を掘削している」(鉄道・運輸機構)・ホームは地下35メートルの場所に1本(島式)が設けられ、駅上部にはバスターミナルのほか、28階建てのマンションや商業施設の建設を予定。出入口は3カ所。さらにもう1棟の高層ビルを綱島駅側に建設し、2つの高層ビルを通じて綱島駅と連絡する構想がある
- 「新横浜トンネル」工事
・新綱島駅と新横浜駅間(約3.3キロ)を結ぶ「新横浜トンネル」は、鶴見川下の掘削制限があるため2018年10月に本掘削を開始する
・住宅街下をトンネルが貫く大倉山3丁目や菊名7丁目、環状2号線に近い大豆戸町住民は、軟弱地盤下での工事を不安視。一方、今年夏までに「区分地上権」(地下を使う権利)の契約は75%が終了。鉄道・運輸機構は土地収用法による解決も視野 - 新横浜駅の工事
・環状2号線の地下約33メートルの場所に上下ホーム2本と、その真ん中に1線を設置し、始発着列車が運転できる構造とする計画
・工事は「掘削も終盤になっており、年明けからコンクリート構造物に取り掛かる」(鉄道・運輸機構)との状況
・工事にともない上部の環状2号線で車線規制を行っているため、2019年のラグビーワールドカップ時や2020年東京五輪時に混雑不安も - 「羽沢トンネル」工事
・新横浜駅と羽沢駅間を結ぶ「羽沢トンネル」(約3.4キロ)はすでに掘進中 - 羽沢駅の工事
・2019年度後半の「相鉄・JR直通線」の開通に向け、すでに駅の構造物が出来上がっている
2022年10月以降に開通するまでに5年以上かかる長い道のりですが、来年(2017年)はどこまで進展させることができるでしょうか。
【関連記事】
・<東急・相鉄直通線>開通後の日吉地区「高架橋区間」での騒音対策にも言及(横浜日吉新聞、2016年12月23日)
・東急高架下くぐる箕輪町の「日吉第1架道橋」を11/1(火)廃止、相鉄直通線の影響で(横浜日吉新聞、2016年10月17日)
・<機構が公表>相鉄・東急直通の進捗率30%、新綱島の軟弱地盤や地下雨水管に苦戦(横浜日吉新聞、2016年12月4日)
・「新横浜トンネル」で説明会、2019年夏ごろ大倉山3や菊名7の住宅街下で掘削(2016年11月27日)
・相鉄・東急直通線の工事規制、「ラグビーW杯」時は環状2号線での解除要請も(2016年9月10日)