普段はどこか取っつきづらい「日本国憲法」をアートで自由に表現してみよう――そんなコンセプトの企画展が菊名駅西口の住宅街で始まりました。
篠原北1丁目の「ギャラリー&スペース弥平(やへい)」(菊名駅西口から錦が丘方面へ徒歩約7分)では今月(2024年)6月16日(日)まで「私たちのくらしと憲法展」が開かれています。
この展示会は、同ギャラリーを自身が80歳の時に創設した中島弥平さんが2010(平成22)年に始めた企画で、もともとは気になった憲法の前文や条文を書き写して展示しようというコンセプトでした。
「最初は父が一人で始めた企画で、色んな展覧会へ行っては作者の方に参加を呼びかけていたようです」と2015(平成27)年に同ギャラリーの運営を受け継いだ中島真弓さんは振り返ります。
13回目を迎えた今年は、昨年までの「憲法を書き展示する会」とのイベント名を変え、“私たちのくらし”という身近なテーマも取り入れられました。
同展では生前の中島弥平さんが書き写した達筆な筆文字による憲法前文のとなりに、海外にルーツを持つ子どもらが「平和」をテーマに描いた賑やかなイラスト作品が飾られており、誰もが自由に憲法を表現してみようという企画への思いが世代を超えて受け継がれているかのよう。
また、障害を持つため高校に受け入れられず、1年間の浪人を経て公立高校への入学が叶った高校生が入学前に書いた「高校生になりたいです」と書かれた文字とイラスト、入学後の「高校楽しいです」という喜びの文字と写真は、危ういながらも“教育を受ける権利”が守られたことを伝えます。
亡き母が生前に書き写したというジョン・レノンの「イマジン」の歌詞や、一見しただけでは憲法がモチーフであると気付きづらい本格的な絵画、幾人も参加して制作した巨大なパッチワーク作品など、憲法の理念を伝える方法の多彩さは見どころの一つです。
今週末の6月15日(土)にはウクライナの民族楽器・バンドゥーラの演奏家として知られるカテリーナさんを招いたコンサート(15時、17時30分の2回、各回入場料1人2000円)も予定。
今も戦火が続くウクライナに生まれ、かつてチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所による事故では避難も経験している演奏家が音楽を通じ平和の重要性を訴えます。
翌16日(日)は同会場で「街を耕やす会・港北」の主催で元横浜市教員の赤田圭亮さんを招いた「横浜市中学生自死問題を考えるつどい」(13時30分~15時30分、資料代500円)も企画され、身近な地域で起きている教育現場の課題についての議論も行われる予定です。
私たちのくらしと憲法展は、コンサート開催時などを除き期間中の毎日11時から17時(最終日は16時まで)に公開され入場は無料。
今回は14人(団体)が出品する小さな展示会ですが、憲法という遠くて近い存在をあらためて見つめ直すことができるはずです。
(※)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です
【関連記事】
・丸10年を迎える菊名の「ギャラリー弥平」、亡き創設者の思い継ぎ新たな落語イベント(2016年11月19日、ギャラリー弥平の紹介記事)
【参考リンク】
・2024年6月9日(日)~6月16日(日)開催「弥平私たちのくらしと憲法展」(ギャラリー&スペース弥平)
・菊名駅西口から徒歩約7分「ギャラリー&スペース弥平」の場所(グーグルマップ、錦が丘方面へ上り坂あり)