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【沿線レポート】新綱島や羽沢横浜国大といった新駅以上の規模で激変する駅前に驚かされるはずです。

相鉄(相模鉄道)いずみ野線「ゆめが丘」と市営地下鉄ブルーライン「下飯田」の両駅前で建設中の大規模集客施設が今年(2024年)7月にオープンすることが発表されました。近年まで農地のなかにあった両駅は、開業から四半世紀を経て大きな転機を迎えます。

いずみ野線・ゆめが丘駅とブルーライン・下飯田駅の周辺路線図、横浜市の西端に近い位置にあるが、横浜中心部だけでなく相鉄はJR・東急への直通線が開業したことで東京都心部へも直行が可能(相鉄グループ「ゆめが丘のまちづくり」のページより)

藤沢市との市境に近い両駅は、いずみ野線ブルーラインがともに終点とする湘南台駅(藤沢市)の一つ手前、横浜市泉区の下飯田町で1999(平成11)年に開業。

異なる駅名となっていますが、両駅は250メートルほど離れただけの場所にあり、行き来も容易です。

区画整理事業が始まった頃、下飯田駅前からゆめが丘駅(写真右奥)まで見渡すことができたほど近い(2022年11月撮影)

両駅近くでは2006(平成18)年に主要道路の「環状4号線」が全通して交通の利便性がより高まりましたが、近年まで農地や雑種地が占める周辺風景は変わらないまま。

ドーム状となった屋根が印象的なゆめが丘駅だが、1日平均の乗車人員は1108人(2022年度)と相鉄線の駅では圧倒的に少ない(2018年8月撮影)

区画整理事業が始まる前、ゆめが丘駅の目の前は農地だった(2018年8月撮影)

高架上に巨大なアーチ型の鉄骨で築かれた屋根が印象的なゆめが丘駅は、近未来的な雰囲気とは裏腹に駅を降りても商業施設などは皆無で、畑と駐車場くらいしか見られないという未開発の状態が長く続きました。

JR・東急への直通決定で動き出す

横浜市は両駅が開業する前の1993(平成5)年に「いずみ田園文化都市構想」という計画を打ち出し、農地が目立つ沿線一帯で大規模な開発を目論見ましたが、両駅前では対象が広範囲に及んでいたことや経済環境の悪化もあって停滞。

ゆめが丘駅前は少しの家が建つほかは農地と未利用地が広がり、店舗の一つも見当たらなかった(2018年8月撮影)

その後、市は対象を駅に近いエリアに絞り、地元でも駅前開発に向けた議論を地道に続けて、2007(平成19)年には「泉ゆめが丘土地区画整理組合」の設立を目指す「準備会」の発足にこぎ着けます。

以後も具体的な計画を詰めるための議論や手続きが続き、2014(平成26)年には準備会を脱して“本組合”として発足。翌2015(平成27)年12月から区画整理に着手し、水害対策として雨水を貯める「調整池」の建設や下水道などのインフラ整備が始まりました。

整地され大規模集客施設の建設が始まった頃のゆめが丘駅前(2022年11月撮影)

区画整理事業の象徴的な存在となる大規模集客施設は2022年11月に起工式が行われた(2022年11月撮影)

長年に渡って動かなかった開発計画が進むことになったのは、ゆめが丘駅から東京都心部へ直通できることになる「相鉄・JR直通線」と「相鉄・東急直通線(新横浜線)」の進展が大きかったと言われています。

駅前に大型集客施設「ソラトス」

下飯田駅前から見た「ソラトス」、建物はほぼ完成しており、7月のオープンに向けて内外装などの工事が続く(2月9日撮影)

かつて農地が広がっていたことが嘘のように激変したゆめが丘駅前、ソラトスに直結する新改札口の工事(写真真中奥)も行われており、駅舎内ではトイレの全面改装も終えている(2月9日撮影)

東京ドーム5個分超という約23.9万平方メートルにおよぶ土地区画整理事業のなかで、象徴的な存在がゆめが丘駅と下飯田駅に囲まれた「センター地区」と呼ばれるエリアで7月にオープンする大規模集客施設「ゆめが丘ソラトス」です。

区画整理事業の全体図とソラトスなどの位置、図の下部が湘南台寄りとなる(相鉄グループのニュースリリースより)

土地区画整理組合に携わってきた相鉄グループの不動産関連会社である相鉄アーバンクリエイツ(西区南幸)などが開発する同施設は、ゆめが丘駅に直結し、下飯田駅も“目の前”という環境。

ソラトス付近の鳥観図、ゆめが丘駅と下飯田駅の間に建っている。2棟の屋上には約3000枚の太陽光パネルを設置し年間電気使用量の約7.5%をまかなう計画(ニュースリリースの「鳥観図」を加工し、施設名などを追記した)

2棟に分かれた店内は、本館となる4階建ての「ソラトス1」にスーパー「そうてつローゼン」や飲食店街の「SORATOS DINING(ソラトスダイニング)」、フードコート「FOOD STATION(フードステーション)」に加え、シネマコンプレックス「109シネマズ」が出店。

アミューズメント店舗の「ASOBLE(アソブル)」やアウトドアグッズの「WILD-1(ワイルドワン)」に加え、「TSUTAYA BOOKSTORE(ツタヤブックストア)」や「無印良品」、「GU」「ユニクロ」といった著名チェーンも入りました。

下飯田の駅前にはバスなども乗り入れができる広場が完成しつつあり、その先に「ソラトス2」の建物が見える。ここにはヤマダデンキが入る(2月9日撮影)

上部を駐車場として使う別館的な「ソラトス2」の1階には家電量販店「ヤマダデンキ」が入り、2棟あわせて総店舗数は約130店におよびます。

注目は本館屋上の4階に設けられる「そうにゃんぱーく・そらの広場にゃん」と名付けられた約3000平方メートルの遊具広場。

約3000平方メートルの屋上スペース(写真の雪が積もった部分)を使って開設される「そうにゃんぱーく」をアピールする相鉄のキャラクター「そうにゃん」(2月6日撮影)

相鉄のキャラクターである「そうにゃん」をモチーフにした遊具を揃え、子育て世代が交流する場として「たとえ買物をしなくてもぜひ訪れて楽しんでほしい」と相鉄グループの担当者も力を入れる場所です。

環状4号線(手前の道路)側から見たソラトスの完成予想図。鉄道利用者以外では車で20分の範囲を一次商圏として想定しており、泉区内だけでなく藤沢市内や戸塚区内などからも集客が見込まれる。現時点で初年度の売上は年間200億円、1000万人来場との目標を掲げる(画像はニュースリリースより)

このほか、施設内にはシェアキッチン「Live Kitchen SORATOS(ライブキッチンソラトス)」や催事・展示・セミナーなどで使える「SORATOS Room(ソラトスルーム)」といった地域向けの交流施設も備えました。

また、駅の真横に建てられ、天気が良ければ富士山を遠望できるという場所を生かし、3階のフードコートには列車の発着や遠くに山並みを眺めることができるテラスも設けられる予定です。

ゆめが丘駅前から見えた富士山、今後はソラトスのテラスなどからも楽しめるようになりそう(2022年11月撮影)

病院や賃貸住宅の建設も進む

ゆめが丘ソラトス以外にも土地区画整理事業のエリア内では、大型の「ゆめが丘総合病院」や健診施設「健診プラザ」の開院が控えており、駅付近では賃貸住宅を中心に民間の住宅建設も進んできました。

環状4号線沿いで完成した「ゆめが丘総合病院」、ゆめが丘駅寄りには健康診断などを行う「健診プラザ」も併設(写真左奥)。地元泉区で複数の病院や介護老人保健施設などを開設している医療法人社団鵬友(ほうゆう)会が運営する(2月9日撮影)

相鉄不動産は1階にクリニックモールを備えた木造建築の賃貸住宅「KNOCKS(ノックス)ゆめが丘」(5階建て、74戸)を5月に完成させる予定です。

線路を挟んでソラトスの反対側に位置する駅前エリアでは木造による賃貸マンションの建設も進み、1階はクリニックモールとなる(2月9日撮影)

それでもエリア全体で見ると、駅前の“一等地”といえる場所が空地となっているなど開発は今後も続く見通しで、想定されている5200人という計画人口を達成するまでにはまだ時間がかかりそう。

ソラトスと反対側の駅前にはまだ空地が広がっており、ここには相鉄不動産が10階建て335戸のマンション・店舗を建てると告知しているが、現時点で未着工となっている(2月9日撮影)

もともと、鉄道2駅に加え、主要道路の環状4号線が至近を通るという恵まれた交通環境にある地だけに、この先どのような発展を遂げていくのかに注目が集まります。

)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です

【関連記事】

<ST線フォーラムレポ7>新横浜線の先でもお待ちしています~相鉄・齋賀さん(2022年8月25日、ゆめが丘の開発についても)

【参考リンク】

「ゆめが丘ソラトス」2024年7月開業決定【相鉄アーバンクリエイツ・相鉄ビルマネジメント】(2024年2月6日発表)

ゆめが丘のまちづくり(相鉄グループ)

[泉ゆめが丘]の土地区画整理事業について(泉ゆめが丘土地区画整理組合)