【沿線レポート】新綱島や羽沢横浜国大といった新駅以上の規模で激変する駅前に驚かされるはずです。
相鉄(相模鉄道)いずみ野線「ゆめが丘」と市営地下鉄ブルーライン「下飯田」の両駅前で建設中の大規模集客施設が今年(2024年)7月にオープンすることが発表されました。近年まで農地のなかにあった両駅は、開業から四半世紀を経て大きな転機を迎えます。(※2024年5月21日追記:「ゆめが丘ソラトス」のオープン日は7月25日(木)となりました。)
藤沢市との市境に近い両駅は、いずみ野線とブルーラインがともに終点とする湘南台駅(藤沢市)の一つ手前、横浜市泉区の下飯田町で1999(平成11)年に開業。
異なる駅名となっていますが、両駅は250メートルほど離れただけの場所にあり、行き来も容易です。
両駅近くでは2006(平成18)年に主要道路の「環状4号線」が全通して交通の利便性がより高まりましたが、近年まで農地や雑種地が占める周辺風景は変わらないまま。
高架上に巨大なアーチ型の鉄骨で築かれた屋根が印象的なゆめが丘駅は、近未来的な雰囲気とは裏腹に駅を降りても商業施設などは皆無で、畑と駐車場くらいしか見られないという未開発の状態が長く続きました。
JR・東急への直通決定で動き出す
横浜市は両駅が開業する前の1993(平成5)年に「いずみ田園文化都市構想」という計画を打ち出し、農地が目立つ沿線一帯で大規模な開発を目論見ましたが、両駅前では対象が広範囲に及んでいたことや経済環境の悪化もあって停滞。
その後、市は対象を駅に近いエリアに絞り、地元でも駅前開発に向けた議論を地道に続けて、2007(平成19)年には「泉ゆめが丘土地区画整理組合」の設立を目指す「準備会」の発足にこぎ着けます。
以後も具体的な計画を詰めるための議論や手続きが続き、2014(平成26)年には準備会を脱して“本組合”として発足。翌2015(平成27)年12月から区画整理に着手し、水害対策として雨水を貯める「調整池」の建設や下水道などのインフラ整備が始まりました。
長年に渡って動かなかった開発計画が進むことになったのは、ゆめが丘駅から東京都心部へ直通できることになる「相鉄・JR直通線」と「相鉄・東急直通線(新横浜線)」の進展が大きかったと言われています。
駅前に大型集客施設「ソラトス」
東京ドーム5個分超という約23.9万平方メートルにおよぶ土地区画整理事業のなかで、象徴的な存在がゆめが丘駅と下飯田駅に囲まれた「センター地区」と呼ばれるエリアで7月にオープンする大規模集客施設「ゆめが丘ソラトス」です。
土地区画整理組合に携わってきた相鉄グループの不動産関連会社である相鉄アーバンクリエイツ(西区南幸)などが開発する同施設は、ゆめが丘駅に直結し、下飯田駅も“目の前”という環境。
2棟に分かれた店内は、本館となる4階建ての「ソラトス1」にスーパー「そうてつローゼン」や飲食店街の「SORATOS DINING(ソラトスダイニング)」、フードコート「FOOD STATION(フードステーション)」に加え、シネマコンプレックス「109シネマズ」が出店。
アミューズメント店舗の「ASOBLE(アソブル)」やアウトドアグッズの「WILD-1(ワイルドワン)」に加え、「TSUTAYA BOOKSTORE(ツタヤブックストア)」や「無印良品」、「GU」「ユニクロ」といった著名チェーンも入りました。
上部を駐車場として使う別館的な「ソラトス2」の1階には家電量販店「ヤマダデンキ」が入り、2棟あわせて総店舗数は約130店におよびます。
注目は本館屋上の4階に設けられる「そうにゃんぱーく・そらの広場にゃん」と名付けられた約3000平方メートルの遊具広場。
相鉄のキャラクターである「そうにゃん」をモチーフにした遊具を揃え、子育て世代が交流する場として「たとえ買物をしなくてもぜひ訪れて楽しんでほしい」と相鉄グループの担当者も力を入れる場所です。
このほか、施設内にはシェアキッチン「Live Kitchen SORATOS(ライブキッチンソラトス)」や催事・展示・セミナーなどで使える「SORATOS Room(ソラトスルーム)」といった地域向けの交流施設も備えました。
また、駅の真横に建てられ、天気が良ければ富士山を遠望できるという場所を生かし、3階のフードコートには列車の発着や遠くに山並みを眺めることができるテラスも設けられる予定です。
病院や賃貸住宅の建設も進む
ゆめが丘ソラトス以外にも土地区画整理事業のエリア内では、大型の「ゆめが丘総合病院」や健診施設「健診プラザ」の開院が控えており、駅付近では賃貸住宅を中心に民間の住宅建設も進んできました。
相鉄不動産は1階にクリニックモールを備えた木造建築の賃貸住宅「KNOCKS(ノックス)ゆめが丘」(5階建て、74戸)を5月に完成させる予定です。
それでもエリア全体で見ると、駅前の“一等地”といえる場所が空地となっているなど開発は今後も続く見通しで、想定されている5200人という計画人口を達成するまでにはまだ時間がかかりそう。
もともと、鉄道2駅に加え、主要道路の環状4号線が至近を通るという恵まれた交通環境にある地だけに、この先どのような発展を遂げていくのかに注目が集まります。
(※)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です
【関連記事】
・<ST線フォーラムレポ7>新横浜線の先でもお待ちしています~相鉄・齋賀さん(2022年8月25日、ゆめが丘の開発についても)
【参考リンク】
・「ゆめが丘ソラトス」2024年7月開業決定【相鉄アーバンクリエイツ・相鉄ビルマネジメント】(2024年2月6日発表)
・ゆめが丘のまちづくり(相鉄グループ)
・[泉ゆめが丘]の土地区画整理事業について(泉ゆめが丘土地区画整理組合)