犯人の手口を学び、港北区内での「振り込め詐欺」や「オレオレ詐欺」を少しでも減らす――。港北警察署と港北区老人クラブ連合会は、今月(2017年4月)17日に初めてとなる「振り込め詐欺撲滅対策講習会」を同署内で開き、各地域の老人クラブに所属するメンバーや、日ごろ高齢者と接する機会の多い地域ケアプラザの職員ら約100人が参加し、区内で急増する詐欺の手口や対策法を学びました。
港北警察署の管内では昨年(2016年)、振り込め詐欺の被害が前年と比べ66%増(29件増)の73件となり、神奈川県警内ではワースト1の数字を記録。被害総額が3億60万円におよぶ危機的状況にあります。
今年4月に着任したばかりの牧智明署長は、警察庁での勤務や県警での振り込め詐欺対策責任者だった経験を振り返り、「この4~5年間、詐欺の手口はまったく変わっていない。港北署としては区内に5万人ほどいる高齢者の方全員と会って手口や対策をお伝えしたいが、まだ2万5000人くらいしか会えていない。ここにいる方々にクチコミで伝えていただくことで、1件でも被害を減らしたい」と決意を述べました。
講習会では、詐欺の手口をドラマ仕立てで分かりやすく再現した神奈川県警の映像作品「狙われる高齢者」を視聴し、どうやって騙されてしまうのかの実例と対策を習得。
たとえば「オレオレ詐欺」では、必ず息子などを名乗る犯人が「携帯電話を無くしたから電話番号が変わった」と騙ることから、「まずはいったん電話を切ることが効果的。そして、必ず知っている元の携帯電話番号にかけてみる」(同署生活安全課)との具体策を紹介します。
また、犯人が警察官と騙るケースが港北区内でも発生していることから、「制服の警察官以外の人物が来たら、遠慮なく警察手帳の提示を求めてください」(同)とアドバイスしました。
さらに、昨年6月に振り込め詐欺被害を阻止した経験を持つ大豆戸ケアプラザの柳田好美所長が登壇し、還付金詐欺で騙されている高齢者がどのような心理状態にあるのかの実例を報告。利用者の比較的少ないATMでお金を振り込もうとしていた高齢者に声をかけたものの、肩を叩いても動じず、声をかけ続けると逆に怒られたといいます。
それでも「万が一間違えていたとしても自分で弁償できる額だった」(同所長)ことから粘り強く説得。騙されていることに気付いてくれたことで被害はなかったものの、「1万数千円の還付金で、ここまで洗脳されてしまうのかと思った。騙されたと気付いた人はショックを受け、心も病んでしまう」と話し、初期段階で防止することの重要性を参加者に伝えました。
老人クラブ連合会の酒井松雄会長は「しっかりと受け止めて会員に伝え、被害を少しでも減らしていきたい」と話します。「こうした会合へ来る人は詐欺に引っかからない」(同署生活安全課)だけに、手口や実態をクチコミでどれだけ拡散できるかが鍵となりそうです。
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【参考リンク】
・港北区内の振り込め詐欺発生情報(港北区役所)