錦が丘や富士塚、大豆戸町などの菊名エリアを週に1度走る“コミュニティバス”の利用者が増えています。
「菊名おでかけバス」を運行する地域団体「コミバス市民の会」(事務局:錦が丘、入江勝通・砂田正子・山田平保の3氏が共同代表)は先月(2025年)5月29日に総会を開き、前年度の年間利用者が延べ1316人に達し、新型コロナ禍前の2018年の水準に迫っていたことを報告しました。
菊名おでかけバスは、坂道が多く路線バスの通らない錦が丘などの住宅地に移動手段を確保しようと2004(平成16)年ごろから試運行の取り組みを始め、2011(平成23)年1月から週に1回の定期運行を開始したコミュニティバス。
周辺に住む港北区民が中心となってボランティアで運転手などの運行スタッフをつとめ、会員による会費と寄付、区社会福祉協議会の助成金だけで運営しているのが特徴で、ワゴン型車両も周辺住民が好意で提供しています。
2025年5月現在は毎週火曜日に菊名駅西口を起点とし、錦が丘や富士塚の住宅街を細かく経由して菊名池公園近くのスーパー「オーケー妙蓮寺店」で折り返し、今度は菊名駅東口から旧綱島街道と綱島街道経由で、港北公会堂(区役所)や港北図書館、サミットストア菊名店を経由して菊名駅西口近くに戻ってくる1周約7キロほどのルートを朝9時から7回走ります。

2025年現在の毎週火曜日(9~15時)の運行ルート、地図上の乗降スポットほか、旧綱島街道と環状2号線の交差点(オリンピック裏→港北公会堂裏間)で2024年にオープンした複合施設「楽じゅ苑」でも乗降が可能となっている(コミバス市民の会公式サイトより)
ルート上には、近くにバス停がなく坂道の多いエリアが目立っており、2つのスーパーへの買物時や、港北区役所や図書館などの公共施設、医療施設へのアクセスに使う人が目立ち、自動車免許の自主返納者による利用もみられます。
道路運送法上の「バス」ではないため、運賃制ではなく会員制としており、1000円の年会費で1年間は何度でも利用が可能です。
2011年の運行開始から順調に会員・利用者が増え、2019(平成31/令和元)年度には過去最多となる年間延べ1390回(94会員)の利用がありましたが、翌2020年に始まった新型コロナ禍の影響で同年度は799人に減少。
その後、利用者数はじわじわと回復し、2024年度はコロナ禍前の2018年度に迫る年間1316人にまで戻しています。
満員で添乗員が降りるケースも
5月29日に菊名4丁目の「び・すけっと菊名」で開かれたコミバス市民の会の総会では、乗車人数が増えたことで、便によっては車の定員を超える乗車希望者が出ている日もあることが報告されました。
「地元の皆さんのご協力やご支援の結果として利用者される方が多くなっており、大変嬉しい話」(山田共同代表)と話す一方、乗車をサポートするために添乗しているスタッフがいったん車を降りて座席を空け、のちに合流するケースも発生しているといいます。
「当日でも気楽に利用できることで増えてきた」(同会)とみており、利用者(会員)に空いている時間帯の便を移ってもらうなど、利用者の協力を得ながら対応していく考えです。
地域が運行、車内は常に和やか
もともと、路線バスの空白地帯となっていた錦が丘にバスを走らせようとの強い思いから始まった菊名おでかけバス。
当初は市交通局に大型バスと運転士を借りて試験運行をしたものの、採算面で継続的な運行が難しく、幾度も議論を重ねた末にボランティアスタッフだけで自主的に運行することを決めたものです。
車両をどう確保するかや、不足気味な運転手の数など、現在も運営面での課題は常に尽きないものの、地域のボランティアによる運営ならではの「車内はいつも和やかで、走るサロン状態」(同会スタッフ)という雰囲気となっています。
総会に参加した利用者からは「一人暮らしのうちでは喋らないので、皆さんとお話しするのが楽しい」との感想や、「日常の買物や区役所での手続きなど、菊名おでかけバスがライフラインとなっている」という声が聞かれました。

5月29日に行われた2024年度の総会では活動報告や方針を決定するだけでなく、西区の藤棚(ふじだな)地区で運行する移動支援バス「おでかけ3(さん)」の関係者を招き、運行者間ならではの細かな情報交換が行われていた
定期運行から15年の節目を迎えた今年も毎週火曜日に菊名駅付近や錦が丘、富士塚、大豆戸町などでは、菊名おでかけバスが元気に走る姿を見ることができるはずです。
【関連記事】
・地域の善意と熱意が支える移動手段、「菊名おでかけバス」10周年の軌跡(2021年11月15日、歴史について)
【参考リンク】
・コミバス市民の会・菊名おでかけバス(毎週火曜日運行、菊名駅西口~錦が丘~富士塚~菊名池=オーケー前~菊名地区センター裏~港北公会堂裏~港北図書館前~スーパーサミット前~菊名駅前)