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【レポート】きのう(2025年)4月13日に「大阪・関西万博」が開幕し、その行方を注視しなければならないのが横浜市です。瀬谷区(一部区域は旭区)の米軍施設跡を使って開く「2027年国際園芸博覧会『GREEN×EXPO(グリーンエクスポ)2027』」の開催まで2年を切り、急ピッチで準備を進める段階にあります。現状をまとめました。

BIE(The Bureau International des Expositions=博覧会国際事務局)の公式サイトでは、きのう大阪市で開幕した「EXPO 2025 大阪・関西万博」(2025年4月13日~10月13日)に続き、特別博として認定されているイタリアでの美術展覧会「Triennale Milano(ミラノ・トリエンナーレ)2025(第24回)」(2025年5月13日~11月9日)をはさんで、次に横浜市での「国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」(2027年3月19日~9月26日)が紹介されている(BIE公式サイトより)

「GREEN×EXPO (グリーンエクスポ)2027」を主催する2027年国際園芸博覧会協会は、開催の2年前となる2025年3月19日に東京都内で記者発表会を開いた

日吉駅から東急新横浜線で最短24分新横浜駅からは相鉄新横浜線で同19分という距離にある相鉄(相模鉄道)本線・瀬谷駅が最寄りとなる今回のグリーンエクスポ2027。

日吉や綱島、新横浜の各駅から会場最寄りの相鉄・瀬谷駅まで直通できる列車も多い

今から10年ほど前の2015(平成27)年6月、瀬谷駅から約2キロ離れた在日米軍基地上瀬谷通信施設」が日本政府に返還されたことを機に、跡地活用の一環として企画されたものです。

米軍基地跡の平和利用の象徴に

開催2年前の記者発表会であいさつする山中横浜市長(3月19日)

博覧会の主催者である公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会(中区住吉町1)で副会長に就く山中竹春横浜市長は上瀬谷通信基地について、「戦後、アメリカ軍に長らく接収され、土地を使いたくても使えない地元の方々の思いがあった。その土地が返還され、基地の有効利用・平和利用の象徴としてグリーンエクスポが開催される」と説明します。

米軍が戦後70年以上にわたって接収してきた「上瀬谷通信基地」は今から10年前に返還され、活用方法が探られてきた(横浜市脱炭素・GREEN×EXPO推進局、2024年5月~10月「GREEN×EXPO 2027」地域説明会資料より)

一方、市としては「跡地利用に際して国の積極的な支援を得るため」(2017年1月「瀬谷区・旧上瀬谷通信施設ニュース(第2号)」)という思惑に加え、「地域の知名度向上につながる」(同)として博覧会の基本構想案をまとめ、(農林水産省・国土交通省)に招致を要請した経緯がありました。

横浜市の要請を受けた国は、2022年6月に世界的な博覧会の監督を行う国際組織「博覧会国際事務局BIE=The Bureau International des Expositions)」(仏パリ)に国際園芸博の認定申請を行い、最上位クラス(A1クラス)としての開催が認められています。

これまで日本国内では3回の国際園芸博が開かれており、最上位の「A1クラス」で開催されるのは1990(平成2)年の“大阪花博”以来となる(2023年1月、公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会「2027年国際園芸博覧会基本計画」より)

花や緑をテーマとした大型博覧会は、1990(平成2)年の「国際花と緑の博覧会(大阪花の万博)」(大阪市鶴見区ほか)をはじめ、2000(平成12)年の「国際園芸・造園博(ジャパンフローラ2000=淡路花博)」(兵庫県淡路町・東浦町)、2004(平成16)年の「しずおか国際園芸博覧会(パシフィックフローラ2004=浜名湖花博)」(静岡県浜松市)とこれまで3回にわたって開催。

最上位クラス(A1クラス)として開かれるのは1990年の“大阪花博”以来37年ぶりであり、「関東1都3県で初めて開催される国際博覧会」(国際園芸博覧会協会の十倉雅和会長=経団連会長、住友化学株式会社取締役)となる点も特徴です。

経団連(日本経済団体連合会)の十倉(とくら)会長が国際園芸博覧会協会のトップに就いている(3月19日)

十倉会長は「『幸せを創る明日の風景』をテーマに掲げ、国際園芸博覧会として圧倒的な花と緑で会場を彩ることはもちろん、地球規模の課題解決に向けた行動を世界に発信する貴重な機会となるよう、開催に向けた準備を鋭意進めている」と話します。

2エリアに分かれ、「圧倒的な花の数」

東京ドームなら50個以上分の広さにあたる約240ヘクタールという広大な上瀬谷通信施設の跡地で、グリーンエクスポは瀬谷駅寄り南側約100ヘクタールを会場として使用。

旧上瀬谷通信施設の全体図、右下に位置する国際園芸博の会場は会期終了後に「公園・防災地区」として再整備される。隣接の「観光・賑わい地区」は三菱地所が「KAMISEYA PARK(カミセヤパーク)(仮称)」と名付け、2031年ごろにテーマパークを開業させる計画(横浜市脱炭素・GREEN×EXPO推進局上瀬谷整備事務所、2023年7月「旧上瀬谷通信施設地区 まちづくりニュース(第2号)」より)

会場内における建物の整備箇所と周辺の位置図、会場の瀬谷駅寄りでは県営住宅に隣接している(2025年3月10日、国際園芸博覧会協会「会場建設費の見通し」の参考資料に施設名を追記するなど一部を加工)

会場は海軍道路につながる「北西」と瀬谷駅寄りの「南東」の2エリアに分かれ、メインゲートは北西側に設置する計画です。

ゲートを入ってすぐの場所に「メインガーデン」を設け、「春から秋にかけて1000万株の花が咲き誇り、訪れるたびに違う花の風景を見ることができる。国内で開かれた過去3回の国際園芸博覧会と比較しても圧倒的な花の数」(国際園芸博覧会協会の脇坂隆一・推進戦略室長)になるといいます。

会場はメインゲートやメインガーデンのある「北西」側と瀬谷駅寄りの「南東」の2エリアに分かれており、結節点に重要施設を置くという(2025年3月10日、国際園芸博覧会協会「会場建設費の見通し」の参考資料より)

メインゲート側(北西側)から見た会場の完成予想イラスト、入ってすぐの場所にメインガーデンも見える(主催者提供)

北西と南東の両エリアが結節する位置には、“すべての生命はつながっている、植物を中心に”とのコンセプトを掲げた「テーマ館」や、江戸時代を中心とした園芸文化を展示するという「園芸文化館」などの主要施設が配置されるのが特徴です。

最大規模の政府出展、北西側に県も

メインゲートの反対側、瀬谷駅寄りから見た会場の完成予想イラスト、手前の南東エリアは政府や自治体などが中心に出展する予定(横浜市脱炭素・GREEN×EXPO推進局、2024年5月~10月「GREEN×EXPO 2027」地域説明会資料より)

結節部の先の南東側には、約2万5000平方メートルと最大規模の出展となる政府の展示施設が置かれます。

この場所は和泉川(瀬谷区・泉区を経て戸塚区で境川に合流する二級河川)の流頭部(源流部)にあたっており、流頭部をはさんで東西に分棟する建築と日本の庭園の伝統技術に新たな知識や技術を結集した庭を造ることで、「日本に受け継がれてきた自然観を通して、今の時代と風土に即した農と里・山の風景を表現します」(農林水産省・国土交通省)とのことです。

政府出展の展示施設は会場の南東エリアで和泉川の源流部をはさんで東西の2棟に分割して建てられる計画(2025年2月3日「2027年国際園芸博覧会政府出展展示施設(仮称)」の農林水産省・国土交通省ニュースリリースより)

神奈川県は「いのち輝く“Vibrant INOCHI(バイブラント イノチ)”」をメインテーマに掲げ、政府とは反対側の北西エリアで約5000平方メートルにおよぶ区画へ出展する計画を決めています。

神奈川県の出展はメインゲートから300メートルほど離れた北西エリアで、約5000平方メートルのうち屋内施設(最大約700平方メートル)と屋外庭園で構成する計画。県の出展エリアに近い「中催事場」(約500人収容)ではステージパフォーマンスを行うとのこと(2024年10月11日、神奈川県環境農政局「2027年国際園芸博覧会神奈川県出展基本構想」より)

国際園芸博覧会協会で副会長に就く黒岩祐治・神奈川県知事は「地球温暖化を防ぐのは花や緑だ。地球を守るのはグリーンの力だということが今回のグリーンエクスポの大きなテーマになる」と力を込め、県として「グリーンが地球を守る、という大きなテーマでミュージカルの出展を予定している」と話していました。

開催2年前の記者発表会であいさつする黒岩神奈川県知事(3月19日)

横浜市については、2025年4月時点で会場への出展計画を明らかにしていません。

主役は企業・団体、377件が出展へ

一方、「グリーンエクスポは主催者だけで成り立つものではなく、主役は出展者のみなさんだと思っている」(脇坂推進戦略室長)と博覧会協会が言うように、企業や団体が共創事業として会場に出展する「Village(ヴィレッジ)出展」や、個人も含め団体や企業、自治体などの花と緑のプロフェッショナルによる「花・緑出展」がグリーンエクスポの大きな見どころ。

主な出展企業・団体と会場の出展位置、今回はすべて北西エリアとなっている(主催者提供)

開催の2年前となる3月19日までにVillage出展は、トヨタモビリティ神奈川などで知られる「KTグループ」(神奈川区栄町)や相鉄ホールディングス、東急グループ、NTT東日本など13件が内定

花・緑出展には企業や団体、自治体、個人を含め360件が内定しており、「花と緑」「農と食」「生物」「環境(カーボンニュートラルやネイチャーポジティブ)」といった取り組みに関連する展示が会場の屋内外で展開されます。

3月19日に都内で開かれた開催2年前の記者発表会には出展者内定者が一同に揃い、記念写真を撮影(3月19日)

このほか、エシカル消費(人や社会、環境を考えた消費行動)や食育などをテーマとした独自の飲食・物販を行う「テーマ営業出店」は、JAグループや株式会社丸兆、明治グループ、山崎製パン株式会社の4件が内定しました。

三ツ境・南町田・十日市場からバス

アクセスについては当初、瀬谷駅から会場近くまで市が新交通システムを整備する構想があったものの現時点で実現の見通しは立っていない状態です。

公共交通による会場へのアクセスは最寄りの瀬谷駅をはじめ、となりの三ツ境駅、東急田園都市線の南町田グランベリーパーク駅、JR横浜線の十日市場駅からそれぞれシャトルバスを走らせる(横浜市脱炭素・GREEN×EXPO推進局、2024年5月~10月「GREEN×EXPO 2027」地域説明会資料より)

そのため、瀬谷三ツ境(相鉄本線)、南町田グランベリーパーク(東急田園都市線)、十日市場(JR横浜線)の4駅からシャトルバスを運行する計画とし、瀬谷駅から約30分の徒歩ルートについても整備を検討するとのこと。

会場周辺には一定数の駐車場を確保し、メインルートとなる「海軍道路(環状4号線)」や「八王子街道(国道16号線)」は、2車線となっている会場周辺を4車線に拡幅する工事を進めている最中です。

会場へのメインルートとなる海軍道路は現在2車線だが、4車線化の拡幅工事が進められている(4月12日)

また、海軍道路と八王子街道が交差して渋滞がたびたび発生する目黒交番前交差点(瀬谷区北町)は立体交差化を決定。加えて、上瀬谷通信施設の跡地内にも新たな道路を設け、交通量の増加に対応する計画です。

会場へのアクセスルートの詳細と周辺での道路拡幅などの計画一覧(横浜市脱炭素・GREEN×EXPO推進局上瀬谷整備事務所、2023年7月「旧上瀬谷通信施設地区 まちづくりニュース(第2号)」より)

上瀬谷通信施設は他国電波の傍受や暗号解読などを行っていたと言われ、電波を受信するためなのか長年にわたって未利用となっていた土地が多く、返還後の開発にあたっては土地の区画整理や道路はもちろん、電気や水道やといった基盤整備から始める必要がある。現在は幾つもの工事が同時並行で行われており、周辺は敷地を囲った白い壁と工事の告知看板ばかり(4月12日)

桜並木は再生、一部は会場へ移植

瀬谷区の名所となっている海軍道路の「桜並木」については、地元住民が参加する懇談会や市民意見募集を通じ、市が「旧上瀬谷通信施設地区新たな桜の名所づくりに向けた基本計画」を策定。

1995(平成7)年度には600本あった桜の木が2023年度には200本まで減るなど老木化が年々進んでおり、現在も年平均で20本程度を撤去する状況にあることから、「健全か健全に近い」と診断された木々については、グリーンエクスポの会場内で会期後も残す公園内へ移植する計画としました。

海軍道路の両脇に続く桜並木は昭和50年代に植樹され、現在は老木化が進み年々減っている状態にあるという。4車線への拡幅工事を機に植え替えや移植などで再生を図る(4月12日)

グリーンエクスポの会場には40種類600本の桜が植えられ、約2カ月間にわたって桜を楽しめるようにする構想があり、一部は海軍道路から移植する計画。また会期終了後も公園内に桜の名所として残す方針(横浜市脱炭素・GREEN×EXPO推進局上瀬谷整備事務所「旧上瀬谷通信施設地区新たな桜の名所づくりに向けた基本計画」より)

一方、倒木の危険性が高いなどと判断された木については、「ソメイヨシノ」から病害虫などに強く安全度が高い「コシノヒガン」に植え替え、海軍道路を拡張するとともに桜並木も再生する予定としています。

大阪・関西万博の1年半後に開催

きのう4月13日(日)から大阪市此花区の人工島「夢洲(ゆめしま)」で始まった「大阪・関西万博」(10月13日まで開催)は開催前から評判が芳しくなく、前売り入場券の販売が低迷していることや、“税金の無駄遣い”といった論調での報道も目立ちます。

会場の南東エリアにおける工事の様子、今も周辺には自然が多く残る(4月12日)

同万博終了から1年半後に始まるグリーンエクスポは、物価や人件費の上昇にともない会場建設費が当初計画から最大で97億円増の417億円となる見通しを3月10日に主催者が公表しており、横浜市の負担も最大で25.9億円増の111.2億円まで増える可能性が明らかになりました。大阪・関西万博の現時点での人気低迷と相まって“反・大型博覧会”の機運が高まらないとも限りません。

会場の北西エリアにおける工事の様子、まずは土地区画整理事業からはじめ、次に公園内の基盤整備を実施し、最後に博覧会協会による会場整備が行われる予定(4月12日)

グリーンエクスポは、米軍接収という形で太平洋戦争後の負担を70年以上にわたって押し付けられた末の“再生イベント”であることや、横浜市内には2017(平成29)年3月から72日間にわたって開かれた「ガーデンネックレス横浜(都市緑化よこはまフェア)」が好評を集めるなど花と緑のイベント開催に対する素地があった点も訴求していきたいところです。

2027年国際園芸博覧会「GREEN×EXPO(グリーンエクスポ)2027」について

  • 会期:2027年3月19日(金)~ 9月26日(日)(192日間)
  • テーマ:幸せを創る明日の風景~Scenery of the Future for Happiness
  • 有料来場者数:1000万人以上
  • 1日あたり来場者数:平日平均5.3万人/休日平均7.7万人
  • 会場建設費:最大417億円(国・地方公共団体・民間による負担)
  • 運営費:360億円(入場料や営業権利金などで充当)

)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です

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港北区が独自企画、新横浜線&相鉄線で10カ所歩き「ウォーキングポイント」(2023年10月25日、旧上瀬谷通信施設も立ち寄り場所に)

・【約5年前のレポート】国際園芸博&大型テーマパーク構想の「瀬谷」、3年内には日吉・綱島の沿線(横浜日吉新聞、2020年7月27日)

【参考リンク】

2027年国際園芸博覧会「GREEN×EXPO(グリーンエクスポ)2027」の公式サイト(公益社団法人「2027年国際園芸博覧会協会」)

横浜市「GREEN×EXPO 2027 取組一覧」(脱炭素・GREEN×EXPO推進局、市におけるこれまでの動きと詳細)