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【コラム】まだこれだけの開発計画が港北区内に存在し、一部では建築も進んでいます。

横浜市が関与する綱島・新綱島新横浜菊名小机での駅前再開発計画と、民間企業による鳥山町師岡町での開発、日吉大倉山・新羽町のトピックスもあわせ、今年(2025年)1月現在の港北区内におけるまちづくりに関する状況をまとめました。

市の都市整備局が関与する事業だけでも港北区内に6カ所あり、このうち「新横浜駅北部」(北口、オフィス側)は大規模な再開発を行うのではなく、「都心にふさわしい商業・業務・文化・レクリエーション等の機能集積を促進する」ことを目的に関与している(横浜市都市整備局「令和7年度予算概要」内の「令和7年度 主要事業位置図」を一部加工)

民間による開発も行われており、鳥山町では東京ドーム1つ分の山林を切り拓き宅地を造成中(1月10日)

記事は2025年1月時点の内容です。関連記事は「横浜日吉新聞」または「新横浜新聞~しんよこ新聞」にリンクし、一部は公的機関へのリンクもあります。

最も進展する新綱島駅・綱島東口

港北区内の再開発計画で目に見える形で進んでいるのが新綱島駅前。地下駅から直結する29階建ての再開発ビル「新綱島スクエア」と12階建ての「新水ビル(SHINSUI)」、綱島街道を走る路線を対象としたバス乗場も完成しています。

綱島駅の東口では新綱島駅の開業を機に大規模な再開発が進む。図に示された市が関与する事業以外にも「新水ビル」など民間による開発も進行(都市整備局「令和7年度予算概要」内の「綱島駅東口周辺の整備」より)

今後は古民家(池谷家)を中心に周辺敷地を使った低層商業施設の建築が進行し、駅の工事用地として使われていたスペースでも活用計画づくりが始まる見通しです。

新綱島駅の地上部には横浜開港の2年前となる1857(安政4)年に完成した古民家があり、今後の活用も見込まれている(2024年撮影)

一方、綱島駅側の「綱島駅東口駅前地区」は2022年7月に都市計画決定され、地上27階建て再開発ビルの建築に向け、事業施行者である横浜市住宅供給公社は昨年(2024年)、三井不動産レジデンシャルと鹿島建設横浜支店による「TMKグループ」を建設業務を代行する候補者に選定しています。

当初公表された「2028年度の完成」へ向け手続きは進んでいますが、建築費が高騰するなか、既存建物の解体から建築まで順調に進捗するかどうかが鍵。

新綱島駅側から見た駅前東口に建てられる再開発ビルの完成予想図、綱島街道の上部にデッキを設け「新綱島スクエア」と「新水ビル」方面をそれぞれつなぐ計画(都市整備局「令和7年度予算概要」内の「綱島駅東口駅前地区の市街地再開発事業」より)

東口側の再開発が進まないと、新綱島側のビルとつなげる“立体デッキ(歩道)”も設けられないため、「綱島駅~新綱島駅」を往来するたびに直面する綱島街道の信号待ちというネックは解消されないまま。

また、その綱島街道も日吉側の北綱島交差点までの拡幅計画が2018(平成30)年に事業化が決定し、当時は市が2023年3月までに「“一定の進捗”を図る」としていましたが、工事が始まる気配はまだ見えません。

新横浜駅前「篠原口」は市が計画案

オフィス街が広がる新横浜駅の北口から見ると“裏側”に当たるのが「篠原口(南口)」(新横浜南部)。市が1994(平成6)年に東京ドーム約8個分におよぶ37万平方メートルを対象に都市計画決定したものの反対の声が多く頓挫。

新横浜駅篠原口の駅舎側から見た駅前の様子、低層の建物や駐車場が目立つ。写真右奥は最初の都市計画決定前に建てられ、近年になって東急が取得した5階建てのオフィスビル「東急新横浜南ビル(旧加祥ビル)」(2019年7月撮影)

その後、駅前の約3万5000平方メートルに限定して「まちづくりグループ」が結成され、2018(平成30)年3月には「新横浜駅南口市街地再開発準備組合」が発足。翌年3月には日鉄興和不動産東急を事業協力者に選びました。

2023年2月には高層の再開発ビルやアクセス道路を整備するなどの内容を盛り込んだ「新横浜駅篠原口のまちづくり計画(案)」を市が提示しています。

東海道新幹線とJR横浜線によって分断された篠原口側には狭あいな道路しかなく、駅前ながら信号制御による交互通行を行っている区間があるほど。北口側と篠原口側を結ぶ道路整備は再開発計画の実現へ大きなポイントとなりそうです。

赤い線が再開発を検討している範囲、青い点線が頓挫した都市計画の範囲。4月から始まる2025年度は交互通行となっている駅前の道路で対策を行う方針(都市整備局「令和7年度予算概要」内の「新横浜駅南部地区のまちづくり」より)

【関連記事】<新横浜駅>篠原口の再開発と道路拡張へ、市が新たな「計画案」を提示(2023年2月13日)

菊名駅東口は協議会が“構想案”公開

JR横浜線、東急東横線、旧綱島街道、綱島街道と重要な交通インフラがひしめく菊名駅前。東西駅前ともにまとまったスペースが無く、東口では一方通行の狭い旧綱島街道を路線バス、タクシー、一般車、自転車、歩行者が共有し、危険な状態が続きます。

菊名東口駅前の旧綱島街道は道幅が狭く頻繁に車が詰まるが、路線バスも通る重要なルート(2021年撮影)

駅前再開発の機運が何度か高まったものの実現には至らず、現在は2017(平成29)年に駅前の地権者らが設立した「菊名駅東口地区まちづくり協議会」が市や東急の協力を得ながら再開発へ向けた議論を継続。

昨年11月には、まちづくりの構想案(草案)をまとめており、2月28日(金)と3月2日(日)に菊名駅の東急ストア前で模型などを使って公開する予定です。

東急菊名駅改札口前にある東急ストア菊名店前で構想案のパネルや画像、模型の展示が2月28日(金)と3月2日(日)に行われる予定(写真は1月17日の開催時)

なお、その東急ストアはオープンから半世紀が経過して改修が必要となり、3月14日から1年半にわたる長期休業を予定。菊名駅利用者の買物は当面厳しい環境に置かれることになります。

このほか、再開発ではありませんが菊名では菊名小学校(菊名5)で1968(昭和43)年に建てられた校舎などの建て替え工事が進められていることに加え、1960(昭和35)年に建てられ築60年以上が経過した港北図書館(菊名6)についても2025年度の教育委員会予算で「敷地条件の調査等、再整備に向けて検討します」との項目が新たに盛り込まれ、周辺にある公共施設が変化する可能性が高まっています。

小机駅前の東京ドーム4個分で検討

小机駅前の商店街(南口)とは反対側、日産スタジアムへの最短アクセスルートとなる北口の多くは市街化を抑制する「市街化調整区域」となっており、駅を降りるとすぐに田畑が広がる環境。

この東京ドーム約4個分におよぶ区域を「市街化区域」に編入し、新たなまちづくりを検討する動きが2019(平成31)年から進んでいます。

土地区画整理準備組合により開発が検討されている「小机駅北口地区」の範囲、駅前から農地が広がっているエリアは横浜市内でもめずらしく、開発により街の姿が大きく変化する可能性がある。日産スタジアム(6万8313平方メートル)で換算すると2.7個分の広さとなる(2019年6月16日撮影の国土地理院空中写真を新横浜新聞が加工)

人数比で72%(面積比約81%)の地権者が市街化区域への編入に対し前向きだと言われ、2022年7月には「小机駅北口地区まちづくり検討会」が発足。現在は民間企業などの業務代行者を募集している段階です。

駅前でこれほどの未開発地が残っているエリアは横浜市内でもめずらしく、泉区の相鉄いずみ野線「ゆめが丘」駅が近年まで似た環境でしたが、すでに一大再開発が進んでおり、風景は一変しています。

鳥山町で山林を切り拓き大型分譲地

神奈川区菅田(すげた)町との区境に近い鳥山町では東京ドーム1個分の山林を切り拓き、172区画の分譲地「マークヒルズ新横浜」が完成に近づきつつあります。

172区画の分譲地は一部が完成しつつあり、工事終了は2026年4月の予定だという(1月10日撮影)

港北区では1960年から70年代に民間事業者が丘を次々と切り拓くことで、一戸建てを中心とした住宅地化が進んだと言われていますが、宅地化できる山林が区内にまだ残されていたことに驚かされました。販売は今年から本格的に始まります。

師岡は宅地開発、物流倉庫、そして…

師岡町では大倉山駅寄りの丘で営まれていた8000平方メートル弱農地が鉄道系不動産会社に売却され、43戸の宅地開発が行われています。

環状2号線の師岡町会館前交差点に建つマンション「パロス大倉山」の裏手近くに位置する旧農地では43戸の宅地造成が進行中(1月10日撮影)

人口の多い団塊世代が土地の相続期を迎えるなか、相続時に農地としての活用を諦めざるを得ないケースは近年区内でも散見されており、しばらくは続くのかもしれません。

トレッサ横浜付近では、隣接するMeiji Seika(メイジセイカ)ファルマ横浜研究所(2022年1月閉鎖)の跡地と、特装車を手がけるトヨタカスタマイジング&ディベロップメントが使っていた本社敷地の大部分を合わせ、東京ドーム1つ分という敷地が生み出されました。

Meiji Seikaファルマ横浜研究所の跡地とトヨタ系企業の本社敷地を合わせた東京ドーム1つ分の空間には物流倉庫が建てられる、写真奥はトレッサ横浜の北棟と駐車場(1月10日撮影)

当初、トヨタ系企業が住宅開発を考えたものの、市内トップの児童数となっている師岡小学校のさらなる大規模化を避けたい横浜市が難色を示したとされ、土地利用方針を転換。トヨタ系企業など3社が大型物流倉庫(2026年春から夏ごろまでに完成予定)の建設を進めています。

一方、トレッサ横浜付近では昨年末にさらなる開発の動きも明らかになりました。こちらは住民にとって少し楽しみかもしれません。

トレッサの臨時駐車場などに使われていた環状2号線沿いの2500平方メートル弱の敷地で、日本マクドナルドホールディングス(東京都新宿区)が「マクドナルド環状2号線師岡店新築工事」(3階建て、駐車場台数29台)を今年4月に着工し、11月に完了させるという内容の建築看板を現地に掲出しました。

師岡交差点に面した一画はかつてトレッサの臨時駐車場として使われていた。12月から「マクドナルド環状2号線師岡店新築工事」と題した建築看板が掲げられている。右手奥が熊野神社市民の森(1月10日撮影)

マクドナルドはトレッサの南棟1階にも店舗を置いていますが、今回の新築計画は北棟に近い場所(「熊野神社市民の森」寄り)であり、規模も大きいのが特徴。年内に新店舗は実現するのでしょうか。

再開発とは無縁な日吉駅前の課題

一戸建て住宅地と慶應キャンパスが駅近くの多くを占める日吉では、駅前で大規模な再開発を行おうという動きはまったく見えませんが、バスや車と共存せざるを得ない商店街の歩行環境や、商業ビルの老朽化といった課題は横たわっており、一部ビルでは建て替えの動きも見られます。

2022年12月には日吉駅前で一方通行化の実証実験も行われている

そんな日吉駅前で、2020年から市が主導して進めているのが商店街の一部通りにおける車の一方通行化。来街者など歩行者の反応は良好とのことで、議論開始から5年を迎える新年度中に実現にこぎつけられるかどうかが鍵となりそう。

一方、駅近くの住民が中心となって市に求めてきたのが日吉駅前の「喫煙禁止地区」化です。

駅周辺から徹底して灰皿を撤去した結果、一部の路地や店先が密かに“無断喫煙所”のような場所となり、吸い殻のポイ捨ても横行。禁止地区となれば公的な喫煙場所が設けられる一方で、それ以外の屋外で喫煙を防止することにつながるため、実現が長年期待されています。

大倉山・新羽エリアの注目は「架橋」

すでにレモンロードとエルム通りという商店街主導の大型再開発を成功させてきた大倉山駅前。今も残る周辺農地で宅地化する動きが一部で見られるほか、近年は区役所近くの大豆戸交差点付近でマンション建設が活発化していますが、駅前周辺で大規模な再開発計画の話は聞えてきません。

そんななか、鶴見川に近い大倉山6・7丁目付近と対岸の新羽町側で注目したいのが新たな橋を設けようという動きです。

港北高校に近い太尾公園付近と北新横浜駅に近い新羽ポンプ場間に架かっている「送管橋」を人や車が通る橋に転換できないか検討が行われたこともあった(2020年撮影)

10年ほど前から市によって検討が行われてきましたが、それより先に鶴見区側で人道橋を新設しなければならない状況もあり、港北区内での架橋に関する検討は、この数年休眠している状態でした。

昨年は鶴見区の人道橋新設にもメドが付き、港北区内で住民アンケートを実施するなど議論再開への“地ならし”は終えており、4月から始まる新年度でどこまで進めるのかに注視したいところです。

新羽駅にほど近い「新田緑道」ではリニューアルを機に民間活用も期待されている、写真奥が港北産業道路(2024年1月撮影)

一方、新羽町内の動きでは、北新横浜駅近くまでつながる「新田緑道」でリニューアル工事の未着工区間が残されているほか、都筑区との区境付近の農地を中心とした一帯でまちづくりグループ「新羽町大竹耕地地区まちづくり検討会」が2023年6月に立ち上がっています。


以上が2025年1月時点で港北区内に存在する再開発やまちづくりに関する計画の概要です。このほかマンション建設は相変わらず区内全域で続いており(北部の記事一覧南部の記事一覧)、新横浜ではオフィスを新たに建設する動き(記事一覧)も見られます。

今後も区内北部(日吉・綱島周辺)の動きは主に「横浜日吉新聞」で、南部(菊名・新横浜周辺)はこちら「新横浜新聞~しんよこ新聞」で伝えていく予定です。

)記事内容は2025年1月時点の情報をもとに作成したものです

)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です