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横浜市最多の児童数で活気あふれる師岡小学校。地域社会とつながるための「特別授業」で、子どもたちの未来の夢を育みます。

大倉山駅から徒歩約14分の環状2号線至近にある横浜市立師岡小学校(師岡町、平田あや校長)は、卒業を控えた6年生全クラスを対象に、昨年(2024年)12月17日と24日に、新元号「令和」を揮毫(きごう=毛筆で文字を書くことの意)したことで知られる茂住菁邨(もずみせいそん)さん(本名:茂住修身=おさみさん)を招いた書道の授業を初めて実施。

新元号「令和」を揮毫(きごう)したことで知られる茂住菁邨(もずみせいそん)さん(中央)が特別授業を実施。応援で駆け付けた鋏切り絵師の柳家松太郎さん(右)、横溝PTA会長と

新元号「令和」を揮毫(きごう)したことで知られる茂住菁邨(もずみせいそん)さん(中央)が特別授業を実施。応援で駆け付けた鋏切り絵師の柳家松太郎さん(右)、横溝PTA会長と

12月24日には、慶應義塾大学(日吉4)のビジョン・目標・ターゲットを提言する活動を行う「塾生会議」に参加する10人の学生が、6年生1クラスが目標として設定した、7月から行われてきた「師岡小版SDGs」の実現を後押しする、実践的な交流による5回の授業の最終回を行いました。

7月から12月まで、5回にわたり慶應義塾大学「塾生会議」とのコラボ授業も行われた(塾生会議提供)

7月から12月まで、5回にわたり慶應義塾大学「塾生会議」とのコラボ授業も行われた(塾生会議提供)

“令和”の茂住さんが伝える「一文字への想い」

2019年5月の「新元号」への改元を前に、当時、内閣官房長官を務めていた菅義偉(すがよしひで)さん(元内閣総理大臣、現衆議院議員)が同年4月1日に掲げた「令和」を揮毫したことで知られる茂住さん。

師岡小学校でPTA会長を務める横溝和宏さんとのつながりがきっかけとなり、茂住さんが来校、同校での初授業が実現したといいます。

体育館は3クラスの児童約100人が机とイスを並べるスケールの大きな「書道」の授業会場に

体育館は3クラスの児童約100人が机とイスを並べるスケールの大きな「書道」の授業会場に

今回の特別授業のテーマは、「茂住さんと紡(つむ)ぐ心の一字」。卒業を前に、想いを込めて一文字を書くことを目標としての授業が行われることになったとのこと。

横浜市最多となる児童数を抱える同校では、6クラス約200人にものぼる児童が一堂に会することは難しいものの、日程を2日間に分けること、また体育館に机とイスを持ち込むことで、3クラスずつ約100人が一つ屋根の下で一斉に書道を行うというスケールでの授業を実現させることに成功しています。

茂住さんが「令和」と記すと間近で見ていた子どもたちから大きな歓声が沸き起こった

茂住さんが「令和」と記すと間近で見ていた子どもたちから大きな歓声が沸き起こった

授業では、茂住さんが自己紹介代わりにと、まず「令和」の文字を筆を用いて書くと、吸い寄せられるように集まった児童からは大きな歓声が寄せられていました。

授業前の打ち合わせの中で、茂住さんは約200人の児童がそれぞれ選んだ「一文字」の手本を、全児童分書いて用意し、この日の授業で配布。

子どもたちが選んだ一文字の「見本」も茂住さんは全員分手書きし用意。「想いを込めて一文字を書く」ことを伝える授業を行った

子どもたちが選んだ一文字の「見本」も茂住さんは全員分手書きし用意。「想いを込めて一文字を書く」ことを伝える授業を行った

「上手、下手という基準はない。気持ちを込めて、書きたいように書くことが大切」と、“想いを込めて”一文字を記す重要性を伝えます。

「6年間の楽しかったこと、自分の顔を思い浮かべて」揮毫する楽しさを、各席をまわり、児童と一緒に筆を持つことで茂住さんは伝え、最後にプレゼントとなる各自の名前印の作り方も伝授し、“生涯忘れられない”であろう書を極める時間を児童や教職員、この日の授業に駆け付けることができた保護者らと分かち合っていました。

横溝PTA会長とのつながりがきっかけとなり、茂住さんが来校。神奈川県内の小学校教育の場で茂住さんが登壇することは初めて。貴重なつながりが師岡小にとっても大きな財産となった。平田校長(右)と(横溝和宏さん提供)

横溝PTA会長とのつながりがきっかけとなり、茂住さんが来校。神奈川県内の小学校教育の場で茂住さんが登壇することは初めて。貴重なつながりが師岡小にとっても大きな財産となった。平田校長(右)と(横溝和宏さん提供)

慶應学生とコラボで「師岡小版SDGs」を実現へ

一方、慶應義塾大学(日吉4)で新型コロナ禍の影響もまだ強く残る2022年度からスタートした「塾生会議」

大学の全10学部を対象に選抜した学生が、専門家からアドバイスを重ね、SDGs(エスディージーズ=持続可能な開発目標)を実現するためにと学びを深め、さらにそれを発展させるための「2024塾生会議」として、今年度(2024年度)の活動を行いました。

実際に体を動かしながらSDGsのクイズを行った(塾生会議提供)

実際に体を動かしながらSDGsのクイズを行った(塾生会議提供)

今回行われた「総合的な学習の時間」の授業でのテーマは「師岡小版SDGsを実践しよう」

6年生1クラスの担任を務める呉屋雄紀教諭から登壇の打診があったといい、「地域」と「SDGs」をテーマにつながりを調べていたところ、学生たちの取り組みを知り、慶應義塾に連絡があったといいます。

「総合的な学習」で何を目標にするかの言語化を行った(同)

「総合的な学習」で何を目標にするかの言語化を行った(同)

今回の授業を担当したのは、「塾生プロジェクト3~慶應生と日吉の街交流」の担当メンバー(担当:牛島利明商学部長・教授)。

リーダーを務める安島芽生(めい)さんも、昨年度(2023年度)の「塾生会議」で、日吉台小学校(日吉本町1)での交流を経験していたこともあり、師岡小学校からの依頼にも快く応じることになったと今回の授業が実現した経緯について説明します。

小学生と大学生がともに人々が集まる空間を創出するためのイルミネーションを考案した(同)

小学生と大学生がともに人々が集まる空間を創出するためのイルミネーションを考案した(同)

授業は7月10日に「キャンパスSDGsの紹介」、9月24日には目標設定、11月26日には3つの班に分かれてのグループワーク、12月13日には動画や写真を用いた「日吉キャンパスツアー」、そして最終回でのまとめに至るまで、“児童の主体性”を大切にした授業が実現したとのこと。

「今回の探究授業の最も良かったところは、先生・小学生・大学生が共に学ぶ姿勢で取り組めたことだと感じています」と安島さん。

イルミネーションを「師岡小らしく」するための工夫も(同)

イルミネーションを「師岡小らしく」するための工夫も(同)

子どもたちが大学生を「送り迎え」してくれたこと、一人ひとりの名前を憶えていてくれたこと、またタブレットを使いこなしていたことも印象的だったといい、「大学生と小学生が協働することは、互いに新しい視点を得る貴重な機会になりました。慶應義塾の学生がより身近な存在になれば嬉しい」との想いを抱いたとのことです。

地域と学校、そこに生き活動する人々が「つながる」学習機会を得ることができた師岡小学校の取り組みは、子どもたちの未来のみならず、地域全体にも、近い将来により大きな「学びの成果」をもたらすことになりそうです。

SDGsの目標と、目標達成のために個人ができることを「宣言」。一人ひとりができることから取り組み、両校の未来に向け理念をつなげていく(同)

SDGsの目標と、目標達成のために個人ができることを「宣言」。一人ひとりができることから取り組み、両校の未来に向け理念をつなげていく(同)

)この記事は「新横浜新聞~しんよこ新聞」「横浜日吉新聞」の共通記事です

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【参考リンク】

横浜市立師岡小学校公式サイト

令和の書家「茂住菁邨」公式サイト

2024塾生会議(慶應義塾大学自然科学研究教育センター)