鉄道開業の遅れもあり“悲願のオープン”となった開設初日の記念イベントには、多くの学校関係者や地域の人々が集い、その喜びを分かち合いました。
今月(2024年)10月1日(火)、相鉄新横浜線の羽沢横浜国大駅前の再開発エリア「羽沢バレー(HAZAWA VALLEY)」内の複合商業施設「HAZAAR(ハザール)」(神奈川区羽沢南)で、一部テナントがオープン。
横浜国立大学(横国大)(保土ケ谷区常盤台)のサテライト連携施設「YNU BASE HAZAWA(YNUベースハザワ)」と、運営者の寺田倉庫株式会社(東京都品川区)による「農業支援施設」が、オープニングイベント・レセプションと両施設で初となるワークショップを同日午後に行いました。
同駅周辺のまちづくりの推進を図るための施設として、同大学の有する多様な「学術知・実践知」を駆使した分野連携や、自治体や産業界、学校、市民といった多様なステークホルダーと連携するという同施設。
多面的に社会や地域の課題を解決していくための研究や活動を行い、それらを地域に発信する拠点として、地域の発展に貢献していくとしています。
地域の連携活動拠点としての利用のほか、全学年の学生が単位取得可能だという“副専攻プログラム”として実施されている「地域交流科目」での地域課題実習の活動拠点や、小規模講義・会議での利用のほか、教職員の活動、また地域住民との交流スペースとして使用していく予定だといいます。
展示やイベントなどでの利用スケジュールも2カ月先まで発表されており、活気づくスペースとなることが予想される同施設のオープン日の模様を写真でレポートします。

羽沢横浜国大駅周辺の再開発構想を手掛けた工学博士の高見沢実名誉教授が「(常勤でなくなってから)やっと来ることができました」と、2019(平成31)年4月に予定されていた相鉄新横浜線(相鉄・東急直通線)の開業が4年後の昨年(2023年)3月18日までずれ込んだこともあり、新たな施設のオープンに胸を躍らせていました

開会のあいさつを行った梅原学長は「国が作った大学だが、地域で開かれた大学でありたいと思っている。もちろん世界地球規模の課題に挑戦する大学というコンセプトはあるが、地域からしっかりと(課題を)上げていきたい。それをどこでやるのという話がある中、大学の名前まで入れていただいている駅の近くにある、ここからいろいろなことを発信できれば。羽沢バレーがアメリカの『シリコンバレー』のように世界に冠たる『羽沢バレー』にしていけたら嬉しい」との思いを熱く語っていました

来賓として招かれた横浜市神奈川区の小林悦夫副区長は「駅の開業を契機とした街づくり、引き続いての計画的な市街地開発や、この辺は緑、農地に恵まれているのでそういった保全や活用などバランスのよい街づくりを進めていきたいと思っています。商業施設がオープンすると人の動きがかわる。人の動きを踏まえながら皆様と一緒に考えていきたい」と、様々な主体が連携しての地域課題・社会課題の解決や、神奈川区や大学がある保土ケ谷区、そして横国大との新たな連携に向けての決意を示していました

副学長で地域連携推進機構の田中稲子機構長が「地域課題解決拠点」として施設をオープンしたことなどを説明。今年で20周年を迎える実践的な27のプロジェクトが副専攻として動いていること、そのパネル掲出を行っていることについても触れていました

「YNUベースハザワ」は「皆さんのベースになっていただきたい」との思いで命名したとのこと。「羽沢」が象徴的な場所であること、ロゴデザインはたくさんの人が連携して賑わいを育む場であることを連想し決定したとのこと

志村真紀准教授(博士・デザイン学)から8つのテーブルと椅子、ベンチについてのデザインを行ったプロジェクトを学生とともに説明。神奈川県で多く見られる「広葉樹」による製作となっている“特殊性”を解説していました

2017年度から誕生した「アグリッジプロジェクト(Agridge Project)」の「研究の成果」として誕生した小田原産「おひるねみかんジュース」(合同会社小田原かなごてファーム)や、間引いた青みかんを使用しての「青ミカンのマフィン」(社会福祉法人開く会「共働舎」=泉区)が振舞われました

同プロジェクトと青果ミコト屋(青葉区)の鈴木鉄平さん(右から2人目)らにより生まれた「青みかんのクラフトアイス」も振舞われていました。横国大内で採れた山椒(さんしょう)の実や枝、葉を隠し味で使用しているとのこと

経済学部経済学科の教授で同プロジェクトを手掛ける池島祥文教授が「アグリッジは学生たちが自由に動いてくれています。地域に眠っている資源を活用する大学ならではのとんがった商品開発をしていくことができれば」との意欲を示していました

高見沢名誉教授は「なんで私が(常勤で)通っているときにオープンしなかったのか。ここに住まう人、駅を利用する人が一緒に活動し交流してもらえれば。だんだん賑やかに盛り上がっている様子を想像しています」と、施設がオープンした喜びをユーモアたっぷりに表現していました

寺田倉庫株式会社執行役員の田嶋拓也さんが中締めのあいさつ。「まだまだオープンがこれからの施設もあるが、“可能性しかない”と思っています。皆様と力を合わせて盛り上げていくことができれば」とこれからの地域まちづくりへの更なる協力を呼び掛けていました

羽沢横浜国大駅ができることで誕生した「バリアフリー基本構想」により地域と関わることになったという大原一興(かずおき)名誉教授(右)もあいさつ。「先週骨折をしました。松葉杖(づえ)でも歩きやすく安全な街づくりということで歩きやすい駅周辺ということで体験しています。思っていたより(この施設は)空がよく見えて明るく気に入っています」と初めて踏み入れたサテライト施設を“可能性が高い場所”と表現していました

「羽沢駅周辺地域まちづくり連絡会」会長の和田勝己さん(羽沢南町内会前会長)は、「羽沢地区は常盤台地区(保土ケ谷区)とは全くかかわりがない地域だった。ましてや横国大は近くて遠い存在だったが、羽沢横浜国大駅が開業し、感覚的にはだいぶ距離感が縮まったが、本日この施設のオープンによりかなり親しみの持てる存在となりました。本当にありがたいことだと思っています」との感謝の言葉を述べていました

常盤台地区連合町内会の石川源七会長は「東京が近くなっていままでにない利便性を感じている。窓から外が見えるいい環境で今後ここを拠点としてまた地区のいろいろなこと、まちづくりをしていくことで胸がワクワクしています」との期待感を示していました

田中機構長も改めてあいさつし、「10年以上前から横浜市の方が構想をし、寺田倉庫や相鉄(相模鉄道)の皆さんと相談しながらここに至っていると聞いています。ここを利用できることがありがたく(この)拠点を愛してもらえれば」との感謝の想いを語っていました

オープン記念の「やさい色ワークショップ」は、アグリッジプロジェクトとミッケリミッケ(Mikke Remikke=東京都港区)、ズッコロッカ (zucco.rocca=府中市などで活動)により実施されました
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・<横浜国大>羽沢駅前の再開発ビル内に“サテライトキャンパス”を設置へ(2024年1月26日)
【参考リンク】
・寺田倉庫初の複合商業施設「HAZAAR」が2024年10月1日に開業(寺田倉庫株式会社)
・羽沢横浜国大駅前にサテライト施設「YNU BASE HAZAWA」を設置(横浜国立大学、2024年9月27日)