サトザクラ(里桜、別名:関山=カンザン・セキヤマ)と呼ばれる「八重桜」がほぼ見頃の“八分咲き”に。
地域の人々と守った公園を彩る「桜まつり」が4年ぶりに再開されることになりました。
かつて第一カーボンという企業の所有地だったことから“カーボン山”の名で知られる「菊名桜山公園」(菊名3=菊名駅東口徒歩約7分)では、今月(2023年)4月16日(日)11時から15時まで、4年ぶりとなる「カーボン山桜まつり」を開催(雨天時は中止予定)。
当日は薪釜ピザやケバブ、焼き鳥やフランクフルト、焼きそばやお好み焼きといった食べ物やドリンク類の屋台が出店するほか、風船パフォーマンスやスーパーボールすくい、手話教室や手作り雑貨や玩具の販売なども予定されています。
また、菊名子ども囃子(はやし)や菊名小学校マーチングバンド、陽だまりバンドなど地域の団体による公演も予定されているとのこと。
イベントを主催する菊名桜山公園愛護会(桜の森を守る会)会長の清水康二(やすじ)さんは、「カーボン山を彩るサトザクラはいよいよ八分咲き(4月7日時点)と、ちょうど見頃に差し掛かりました。約2週間ほどは楽しめる“長持ち”する桜ですので、お祭りの日にもお楽しみいただければ」と、4年ぶりに開催となる桜まつりへの来場を呼び掛けています。
「カーボン山」守った地域住民の“想い”
「菊名桜山公園」が開園する前、現在、都筑区池辺町に本社を置く「第一カーボン株式会社」が所有していたという“カーボン山”。
晴れた日は丹沢の山や富士山も眺めることができるという、自然あふれるこの公園がマンション業者に売却されることが地域住民に知らされたのは、今から20年以上前の2001(平成13)年7月。
「140戸のマンションが建てられるという計画でした。これは大変なことが起きてしまったと感じました」と、1991(同3年)に東京都内からこの地へ転居してきたという清水さんは、“桜咲く自然豊かな山を守りたい”という強い想いを抱き、地域住民と「桜の森を守る会」を立ち上げることに。
山を崩しマンションを建設することをストップするための住民集会を開催、署名活動を以降行い、「8月末には1万1493筆もの署名が集まりました」と、公園を守る活動が、多くの地域住民にとってもプラスになることを示すことができたと語ります。
静岡県菊川市出身の清水さんは元CMプランナー。「アメリカの大物歌手のCM制作で現地に渡ったこともありました」と、菊名移住前の現役時代を振り返ります。
菊名移住後は、地域でのボランティア活動を行っていたといいますが、市民運動がスタートしてからは「メディアも巻き込み、多くの人々の協力を得ることを試みました」と、大手新聞社の報道からより多くの人々の“心”を動かすことができたという当時を懐かしみます。
特に、アイデアが成功したと感じたのは、「横浜市には、バブル期などに多く買い上げていた“市有地”があったのですが、その土地とカーボン山を交換することを提案したことです」と清水さん。
どうすれば“マンション計画をストップできるか”という方法の一つとして、市有地との交換を提案できたことで、横浜市の市民運動への協力体制が強まったと感じたとのこと。
また、カーボン山を守るためにと、「人々が集うイベントも早々に開催しました」と、活動をスタートしてから約3カ月後の11月には「カーボン山感謝祭」を初開催。
2003(同15)年には「カーボン山桜まつり」を初めて行い、「小雨にもかかわらず、おでんやおしるこなど完売する盛況ぶりでした」と、翌年以降も多くの人々で賑わう“地域の祭り”として発展してきた過去の歩みについても振り返ります。
最終的には、2004(同16)年にマンション事業者の経営が悪化。市も「ゆめはま2010プラン」の新規事業としてカーボン山を「花の名所」と位置付けることになったといい、2005(同17)年度から2009(同21)年度まで5年間もの歳月をかけて分割して土地を買い取り、「菊名桜山公園」として整備することを決定。
「市内でも希少な八重桜の山を保存・活用すること」を目的とし、都市における自然的な景観を守るための「風致公園」として、また市の「花の名所の公園づくり」事業の一環として公園整備が行われ、現在に至っているといいます。
四季折々の自然やイベントに「多くの共感」
カーボン山が「菊名桜山公園」になることが決定してからも、春には桜まつり、秋には感謝祭、総工費4千万円超をかけたという2011(平成23)年春のトイレ棟のオープンを経てからは、夏に「フォレストジャズ」イベントも企画・開催。
現在も、夏のジャズライブ、秋のハロウィン・感謝祭、そして冬のクリスマスマーケットといったイベントを通じての「地域まちづくり」活動を行ってきました。
また、清水さんは同公園が位置する菊名南町自治会で2012(同24)年から8年間会長を務めたほか、園を整備したことでの「条件」だったという「公園愛護会」としての活動も行っています。
さらに現在も、菊名南なごみクラブ(老人会)会長、篠原地区保健活動推進員を務めるなど、地域の人々とともに歩む活動も続けているとのこと。
「このトイレ棟も、地域の人々が図案を描いたものが実現したものなんです」と清水さん。
故郷・静岡県への将来的なUターンも検討しているという清水さんの表情には、4年ぶりに戻ってくる「桜まつり」への期待感ばかり募っているかの優しい笑顔が浮かびます。
自然あふれるカーボン山、その自然ばかりでなく、地域の人々との営みも「大切」にしたいという心、その「勇気」から残されたカーボン山に集う人々の“笑顔”こそが、地域にとっての“宝物”なのかもしれません。
【当日の様子】
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・港北オープンガーデンが “完全復活”、最多の126会場や初の「菊名ツアー」も(2023年4月11日)※リンク追記、「菊名桜山公園」も同日参加予定。「菊名ツアー」ルートでの立ち寄りスポットにもなっている
【参考リンク】
・菊名桜山公園(港北区)(横浜市北部公園緑地事務所)※公園が整備されたいきさつについても掲載
・カーボン山(菊名桜山公園=旧綱島街道側の入口)の場所(グーグルマップ)