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【ST線フォーラムレポート(9=最終回)】今月(2022年)8月19日に慶應義塾大学日吉キャンパス内の協生館「藤原洋記念ホール」で行われた「相鉄・東急直通線フォーラム~開業後の“未来を語る”」(ST線フォーラム、一般社団法人地域インターネット新聞社主催)のなかから、今回(第9回)は最終の講演となる横浜国立大学・高見沢実さん(大学院都市イノベーション研究院教授)の模様をお伝えします。

【講演】横浜国立大学・高見沢実さん(大学院都市イノベーション研究院教授)

横浜国立大学大学院教授の高見沢さん

ただ今ご紹介にあずかりました高見沢と申します。相鉄・東急直通を祝って……、すでに祝ってしまうと前のめりな感じですが、内容も少し未来志向でお話しできたらと思っています。

私は高見沢実と申します。横浜国立大学の教員をしています。毎日帰りは羽沢横浜国大駅を利用し、行きは横浜駅から行きますが、帰りはのんびりと利用しています。

まだ乗降客は少ないのですが、この「相鉄・東急直通線」が開通すると、とても多くの仲間たち、あるいはいろいろなお客様が、キャンパスにも訪れてくれるだろうと非常にわくわくしているこの頃です。

(プロフィールの)横浜国立大学「地域実践教育研究センター長」とは、先ほどの慶應大学の牛島利明先生と同じような教育活動もしており、今回、横浜国大で誰を出すかというときに「おまえ、行ってこい」と言われて私が来ました。

羽沢近くのキャンパスに1万人が通う

専門は「都市計画」ということで、今日のお話は未来志向というか、少し先を見ながら、どのような沿線になったらいいかということをお話ししたいと思います。

申し遅れましたが、横浜国立大学は学部生・大学院生・教職員を合わせて約1万人の世帯です。留学生が約1000人ということで、70~80カ国から来ているということが特徴だと考えています。

1キャンパスというのは、今、横浜国大は羽沢の近くのキャンパス1カ所に集中して1万人が暮らしています。

そんなに大きければ目立つだろうと思いますが、皆さん、まだ行ったことがないかもしれません。この直通線を機会に訪れていただければと思っています。中規模大学で5学部5あるいは6大学院という規模です。

画像の左側が横浜国大の地図です。

私は赴任したときに地図を見て、相鉄線の和田町が一番近いかなということで、和田町駅で降りて行こうとしたら、坂がこんなことになっていて、道もよく分からなくて迷っていたら、近くのおばさんが「どこに行くの?」と、「横浜国大に就職しました」ということで、やっと連れていってもらったというような不便な場所にあります。

羽沢横浜国大駅ができたおかげで、さぞかし近くになっただろうと思われるかもしれませんが、私が早足で必死に歩いて“ドア・ツー・ドア”で15分なので、時々「こんなに遠いのか」とぶつぶつ言われます。

三ツ沢上町という市営地下鉄ブルーラインの駅があるのですが、ここからは必死に歩いて24分ぐらいかかるので、相当短くなったと考えています。

地域とともに喜んだ羽沢横浜国大駅の開業

こちらの写真にあるように、私どもにとって2019年11月30日羽沢横浜国大駅開業は喜びの一瞬でした。「みんなで祝おう」ということで私どもにも声を掛けていただいて集まっている状況です。

驚くほどの人出」と書きましたが、先ほど和田勝己さん(羽沢駅周辺地域まちづくり連絡会会長)のお話の中で“横浜のチベット”みたいな表現もありましたが、普段は人を見かけないぐらいのところに本当に多くの人が集まって祝っていました。

羽沢横浜国大駅の開業記念「トークライブ」(対談イベント)にも登壇した高見沢さん(右3人目、2019年11月)

「鉄道マニアもちらほら」ということなので、今回も直通すると切符を発売するとか、電車の写真を撮りたいといったような、いろいろな人たちがたくさん押しかけるのではないかと思います。ぜひ盛大なるお祝いの式ができたらと考えています。

横浜国大もブースを設けさせていただいて、こんな感じでブースを出展しています。これは大学の名前があったり企業マルシェがあったり、いろいろな周りの方々と一緒に楽しく開業を祝ったという模様です。

「相鉄・東急直通」の次に来る鉄道計画

未来志向ということでは、気が早いですが、今回、相鉄・東急が直通するということですが、「さて、次の話は何だろうか」ということで、すでに2016(平成28)年に交通政策審議会から公表されている「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(答申)」を見てみます。

こちらは2030年ごろを念頭に置いた鉄道計画構想です。

1つは日吉のあたりで考えると、環状線(横浜環状鉄道、日吉駅~鶴見駅間)というものが絵に描かれているということ、あとは意外に今日の話にもありませんでしたが、湘南台駅(藤沢市)より向こうの倉見駅(寒川町)への延伸構想です。これはいったい何かというと、東海道新幹線の新駅がここに計画されています。

神奈川県(県庁)も寒川町・倉見への東海道新幹線の新駅設置を熱望(神奈川県東海道新幹線新駅設置促進期成同盟会のパンフレットより)

この倉見は、いろいろな経緯はありましたが、最近は着々と基盤整備がされたり商業施設出店が決まったりして、まちづくりが進んでいます。ただ、「課題がある」ということで、ここに書かれています。

ただ座ってのんびりしていればできるわけではないので、頑張りたまえ」というようなことが書いてあります。

あとは大きくいうと、羽田空港をめがけた線が東京にとって国際的にも重要なところであり、「他のものはローカルのところなので、それぞれ考えてくださいね」というような二段構えの答申になっています。

ポストコロナの新しい生活・地域像とは

これらの政策で今回のテーマに関係しそうなところだけを見てみます。

鉄道といっても「まちづくりと連携した持続可能な都市鉄道」というミッションを掲げられています。

特に郊外部のまちづくりとの連携強化が今後の鉄道には必要だということで、もちろん今回の相鉄・東急直通線についても、これは言えることではないかと思います。この辺は省略します。

では、未来へということで話を絞り、3つほどビジョンに当たりそうなものをお話しします。

1番目が「ポストコロナの新しい生活・地域像」、2番目が「沿線が連携し新しい近郊をつくる」、3番目が「リニア開業後の新・新横浜」です。

先ほどF・マリノスさんの話の中で「新横浜が新しくなる」という話がありましたが、私も全くそのように考えており、そのお話もあとでします。

まず、1番目の「ポストコロナの新しい生活・地域像」です。

これは最近書いた本です。新型コロナウイルス禍でも、よく「地方に人が出ていってしまうのではないか」という話はありますが、東京圏はそんなに出ていきません

しかしながら、中心部へ中心部へという動きが集中するだけではなくて、首都圏全体としてより住みやすい・より働きやすい場所になっていくのではないかということを書いています。

横浜市でも現在、いろいろな検討がなされています。その代表的なものとしては「郊外部のまちづくりについて」ということです。

端的に申しますと、今までは「住むこと」が中心的な郊外の役割でした。日吉や羽沢などは郊外というよりも“準郊外”ぐらいなのかもしれません。

どちらかというと「東京に直通して良かった。最後だけれども、やっと直通して行ける」という東京方面の目線だけで話されがちだと思います。

そうではなくて、前の論者の皆様のお話にもありましたように、コロナを経て我々は地域の中で働いたり、いろいろなものを消費したり生産したり、いろいろな交流をしたりという時代に変わっていくということで、都心部だけに目を向けるのではなく、むしろ逆に「新しい沿線」をつくるということを考えるべき時代です。

住む、働く、交流する、楽しむ」というものがバランス良く整った街をつくっていこうというような、いろいろな政策が今、検討されています。

沿線が連携し「新しい近郊」をつくる

2番目、今の話とも関連しますが、「沿線が連携新しい近郊をつくる」ということです。

ここではSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)さんの話も出しています。日吉、新横浜、羽沢横浜国大、それから先ほどの延伸構想が書かれているもの(倉見延伸)も含めると、慶應SFCを経て新幹線駅に至るという新しい近郊像もそろそろ考えなければいけないのではないかということ。

あとは先ほど相鉄さんのお話にもよく出てきましたが、農業、先端技術、新しいライフスタイルが融合するような、選ばれる個性輝く沿線が日々生成されているのではないかと感じています。

新横浜は「緑と水の新都心」を目指す好機

最後はやはり「新横浜」、今回、相鉄から見ても東急から見ても新横浜を経由することが最大のインパクトだと思います。

そういう意味で今後はどうなるかということを“ポンチ絵”風に書いてみました。産業統計だとこのように出てしまいますが、こんな感じではないかと。

先ほど、F・マリノスさんのお話にもありましたよね。スポーツ、エンタメ、医療、保健、福祉、IoT、情報通信、研究開発、大学もこの辺だと思います。

さらに加えて地方企業の窓口などの新しい機能が新横浜に新たに集結する。さらに単に新しい都心みたいなものができるというよりも、ここにほんわりと囲っていますが、緑や水に囲まれた新都心、これはなかなかないと思います。

新横浜はオフィス街の至近に緑も水辺も多い

新幹線駅は降りるとビルがいっぱいびっしりと並んでいる感じのところが多いと思います。このあたりは「緑」や「水」、先ほど綱島の桃のお話のなかにもありましたが、資源があります。鶴見川もそうだと思います

緑に囲まれた新都心といったような、今まで見たことのない新しい新横浜を目指すチャンスではないかと思っています。

過去の新横浜に対する計画をざっと見てみると、これが1999(平成11)年の「新横浜都市整備基本構想」、だいぶ古いのですが、これは現行の計画だと思います。あとは「港北区プラン2015」というところにも、こんな感じで書かれています。

基本的に目指す方向は、こちらのキーワードでいうと出会い、発信、水や緑を生かすということが書かれていますが、まだいまいち具体的ではありません。ですから、今がまさに新しい新横浜像を考えるべき時期ではないかと自分としては思っています。

東京だけを向かないような沿線の未来像

これは最後のまとめということで、今までの話を1つの“ポンチ絵”にまとめてみました。

だいぶ先の話が入っているので、東海道新幹線の新駅(倉見)ができている。新横浜から新駅まで10分ぐらい、品川のほうへは11分ということで、非常に立地がいいところに新横浜はあります

「いずみ野線」の延伸が果たされたとしてと書いてありますが、慶應大学(SFC)は新幹線の横、こちら(日吉)も慶應大学は新幹線のすぐ脇、我々も新幹線にすごく近いということで、このようなビジョン、新しい東京だけを向かないような沿線ができつつあるのではないか。

相鉄線の本線は抜いていますが、それぞれの街がきらきらと輝いてつながり、このあたりも行ったり来たりつながり、そして移動しながら新しい沿線がつくられていくのではないか。

私どももこのような考えは大学としても考えたことがそんなにないし、私自身もこの機会をいただき、こんな感じで考えることができました。ということで本日はどうもありがとうございました。ご清聴ありがとうございました。

<フォーラム後の一言>

私、実はこの日吉キャンパス(慶應大学)に入るのが初めてでして、こういう機会でもなかったら訪れたかなと思っています。

ただ、これから直通線がつながると、私自身もそうですが、多くの関係する職員・学生等が訪れることになるかと思いますので、温かく受け入れていただきたいなと思います。

同時に皆さまにも羽沢方面へ足を伸ばしていただいて、駅から徒歩15分も嫌だよと思うかもしれませんが横浜国大のキャンパスにも訪れていただければと思います。本日はどうもありがとうございました。

(※全9回にわたる「ST線フォーラムレポート」はこれで終わりです)

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