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横浜市内の地域文化や歴史を発信してきた市の季刊誌「横濱」が現在販売中の2022年春号(第76号=4月5日発行)で休刊が決まりました。横浜市は「雑誌市場の縮小や発行経費の上昇、創刊から19年間に渡る発行により一定の役割を終えたと判断し、今回の決定に至りました」などと説明しています。

現在、市内書店などで販売中の季刊誌「横濱」(2022年春号=第76号)で休刊となる

2003(平成15)年6月に創刊した季刊誌「横濱」は、横浜市と株式会社神奈川新聞社(中区太田町)による“協働編集”による有償の広報媒体で、季節ごとに年4回(1・4・7・10月)発行し、現在の価格は1冊税込み630円。市によると今号は9000部を印刷しているといいます。

かつて市では1971(昭和46)年から2003年まで、30年以上にわたって写真を中心とした有償の広報誌「市民グラフ『ヨコハマ』」を発行してきた経緯があり、これを受け継ぐ形で創刊したのが季刊誌「横濱」でした。

横浜の歴史や文化を深く掘り下げた誌面構成が特徴で、最近の特集テーマだけを見ても、「鉄道開業150周年 鉄道と歩んだ横浜を振り返る」「幕末~現代 ハマの開拓者たち」「旧東海道三宿を歩く」など、来街者へのPRよりも、市民が地域を深く知るきっかけとなるような内容が目立ちます。

「東横線沿線の『まち』と『食』」(2013年新春号=左)、「鶴見川流域の物語」(2008年春号=右)など地域にフォーカスした特集も多かった季刊誌「横濱」

過去には、「ら♪ら♪ら♪港北ニュータウン」(2019年新春号)、「ハマ線の今昔(いまむかし)」(2016年春号)、「東横線沿線の『まち』と『食』」(2013年新春号)、「鶴見川流域の物語」(2008年春号)というように、市中心部だけに偏らず“郊外部”と呼ばれる周辺地域にフォーカスした特集も多く見られました。

市は市政をPRする十数ページの誌面と編集に一部携わるほかは、“協働事業者”である神奈川新聞社が取材・編集や発行業務を担当。市によると、4回の発行費用として市が年間895万円(2021年度)を負担していますが、発行にかかる費用が不足する場合は、神奈川新聞社が同誌の売上や広告掲載などで補填する形になっているといいます。

季刊誌「横濱」のインターネット販売は「Fujisan」(富士山マガジンサービス)でのみ行われている

神奈川新聞社は、休刊について2022年春号の巻末で、「社会的にはデジタル化による活字離れが進み、雑誌市場は厳しい環境が続き、街の書店も減少する中、季刊誌『横濱』は完売する号もあり、読者からのご支持をいただき健闘してきました」とする一方、「しかし、全体的には販売状況は厳しく、発行経費も上昇していることや、創刊から19年にわたる発行により、一定の役割を果たしたと判断し、休刊することにいたしました」と説明します。

なお、市の今年度予算では「横浜のさまざまな魅力を市内外に発信することを目的として、コンセプトや発行回数等を見直し、リニューアルした冊子を発行します」(市民局2022年度予算概要)との計画を公表しています。

今年度から市の広報関連業務は市民局から政策局に移されており、同局によると「雑誌という形態にするのかどうかや、コンセプトも含めて今年度中に方向性を示すが、現時点では未定」(シティプロモーション推進室)とのことです。

季刊誌「横濱」のように、市民が歴史や文化を深く知ることができるような媒体は登場するのでしょうか。

【参考リンク】

季刊誌「横濱」の案内ページ(横浜市政策局シティプロモーション推進室、※2022年4月に市民局から移管)

季刊誌「横濱」の公式サイト(神奈川新聞社、バックナンバー案内も)