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東芝グループの拠点も新横浜エリアから撤退することが決まりました。

株式会社東芝は、岸根交差点に近い鳥山町に置いている「東芝研修センター」関連企業のオフィスについて、来年(2023年)9月末までに移転することを発表しました。主な研修形態がオンラインへ移行したことにともない、時代に即した研修施設の構築を行うためだといいます。

「東芝研修センター」の上部には「新横浜東芝ビル」の表記や入居する企業名も見られる(2019年11月)

「東芝研修センター」の名で知られる鳥山町の拠点は、主に東芝グループ社員向けの研修施設として活用されていますが、一部の建物は「新横浜東芝ビル」の名で関連会社のオフィスとしても使用。

現在は、研修施設の管理や知的財産などの事業を展開する東芝ビジネスエキスパート株式会社(社員数1680人)が岸根交差点寄りにある5階建ての「C棟」と呼ばれる建物内に本社と3つの事業部を置くほか、同社子会社の東芝保険サービス株式会社(社員数200人)も本社として使用。また、同じく子会社の東芝ツーリスト株式会社(社員数86人)は環状2号線沿い正面に建つ「A棟」が本社となっています。

鳥山川沿いに建つ5階建ての「C棟」(左側)と体育館

東芝では「コロナ禍により、主な研修形態がオンラインに移行したことを受け、時代に即した研修施設の構築が求められています」として研修センターの全面移転を決定。

まず、今年9月末までに研修センター内の「技能訓練施設」を磯子区新杉田町の横浜事業所内の遊休地へ移転し、残りの施設は来年(2023年)9月末までに川崎・鶴見地区などへ移る計画で、東芝の広報担当者によると、現時点で川崎・鶴見地区の移転先に新たなビルを建てる計画はないといいます。

また、移転後の跡地については「土地と建物は当社が所有していないためわからない」とのことです。

工場時代の雰囲気を残す「A棟」は環状2号線沿いの正面玄関前に建つ(2020年7月)

鳥山町の東芝研修センターは、1970年代から放送用ビデオテープレコーダーを製造する「東芝アンペックス」という米国企業との合弁会社の本社工場として使われていました。

1982(昭和57)年に東芝アンペックスが解散し、労働組合との争議を終えた1990年代初頭から東芝傘下の不動産会社による所有となり、本社工場時代の建物(現「A棟」)を転用する形で1995(平成7)年ごろから東芝グループの「新横浜研修センター」として活用を開始。

巨大な東芝研修センターは学校の雰囲気がある。敷地内には最大で200人を収容できる大型の部屋など大小約70の研修室をはじめ、食堂や喫茶室、体育館などを備え、宿泊施設も持つ(2019年11月)

1998(平成10)年10月には、100人が泊まれる宿泊棟や体育館など4つの建物(B棟・C棟など)を建設し、現在の東芝研修センターとして新たにオープンしたものです。

一方、東芝研修センターの土地と建物を所有していた東芝傘下の不動産会社は2008(平成20)年に野村不動産の傘下となっており、2020年には完全子会社化されたため、現在は野村不動産ビルディング株式会社(東京都港区)の所有に変わっています。

野村不動産ビルディングはこれまでに東芝の工場跡地だった川崎駅前の「ラゾーナ川崎」などの開発を手がけた実績も持ちます。

裏側から見た東芝研修センター、左奥には100人が泊まれる宿泊棟なども(2022年2月)

東芝研修センターの敷地面積は1万7000平方メートル超。研修棟や宿泊棟、体育館など4つの建物は1998(平成10)年10月に建てられたため古さはみられませんが、環状2号線沿いの正面玄関に建つ旧本社工場の建物は、1969(昭和44)年の完成から半世紀以上が経過しているとみられます。

環状2号線に面し、岸根交差点の至近という自動車交通の環境に優れた位置にある同施設。来年秋の全面撤退後は、どのような形で活用されることになるのでしょうか。

【2022年2月26日11:40追記】新横浜2丁目に本社を置く半導体関連企業のレーザーテック株式会社は、港北区内で「新研究開発拠点(仮称)」として、約176億円野村不動産ビルディングから「オフィスビルほか」を取得すると2月25日に発表しています。敷地面積や建物の延床面積からすると、「東芝研修センター」を取得する可能性があります。なお、この研究開発拠点は横浜市の企業立地支援制度などを活用したといい、市の発表によると「令和5年度中」(2024年3月末まで)に稼働するとしています

【2022年2月28日12:17追記】レーザーテック株式会社(新横浜2)によると、今回の港北区内における「土地・建物」の取得は将来的な業容拡大に備えたもので、同社が取り扱う機器(検査装置)を顧客へ納品する前の最終調整を行う拠点として活用するとのことです。場所については現時点では「港北区内」までしか公表できないとしています。なお、敷地面積や延べ床面積は、野村不動産ビルディングが所有する「東芝研修センター」とほぼ一致しています。
(参考)レーザーテックは半導体製造に欠かせない検査・計測装置で世界的に評価を受けている東証1部上場企業。東京都目黒区で1960(昭和35)年にX線テレビジョンカメラの開発製造企業として発足し、当時は松下通信工業の協力会社。1980(昭和55)年4月には、同じ町内に松下通信工業(現「綱島SST」)の本社工場(当時)が位置していた港北区綱島東4丁目に本社を移転。2008(平成20)年3月には新横浜2丁目の横浜線近く(野村不動産新横浜ビルとなり)に本社ビルを建てて移転しました。同社はこの5年間(期)で売上額が3倍以上に増えています

※追記:2022年9月30日付けでレーザーテック株式会社が本土地・物件を入手し、新研究開発拠点「Lasertec Innovation Park(レーザーテックイノベーションパーク、通称:InnoPa)」とすることを発表しました)

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リコーが「新横浜事業所」を閉鎖、前年まで1800人勤務の重要拠点(2021年7月2日)※大手企業の拠点撤退が続いている)

【参考リンク】

東芝グループ研修施設の新横浜地区からの移転について(株式会社東芝、2022年2月25日)

東芝研修センター施設ご利用案内(東芝ビジネスエキスパート)