全国2カ所で“こうほく駅”が相次いで登場します。このほど、現在の駅名から変更することを決めたもので、佐賀県では「江北(こうほく)駅」、名古屋市には港北区と文字も同じ「港北駅」がそれぞれ2022年に誕生することになりました。

肥前山口駅(佐賀県江北町)は、長崎駅と佐世保駅への在来線が分岐しており、近くの武雄温泉駅までは長崎駅からの西九州新幹線が暫定開業する予定(長崎県の「九州新幹線 西九州ルート」の特設サイトより)
長崎駅へ向かう「長崎本線」と、長崎県第二の都市・佐世保(させぼ)へ向かう「佐世保線」が分かれる佐賀県の「肥前山口」は、九州の中心地である博多方面を結ぶ特急列車が多く停車する主要駅。
もともと駅のある場所が“山口”という地名だったことから付けられたという駅名ですが、同駅は「江北町(こうほくまち)」という人口9600人超(2021年3月現在)の自治体内にあります。
100年以上前から親しまれてきた肥前山口という駅名に比べ、自治体名の知名度が低いことから、自治体などがJRに駅名変更を要望。

肥前山口駅のある佐賀県「江北町(こうほくまち)」の公式サイト
町民からは変更への反対意見が上がりながらも、2022年秋に予定される西九州新幹線(長崎新幹線、長崎駅~武雄温泉駅間)の暫定開業時にあわせることで、駅名変更時の費用負担が軽減されることもあり、同時に肥前山口駅を自治体名と同じ「江北駅」に変更することが決まったものです。
江北町は、西九州新幹線の開業によって並行する在来線の利便性が低くなるおそれがあることなどから、かつて新幹線計画に反対していた経緯があります。
なお、「江北駅」は東京都交通局が運営する新交通システム「日暮里・舎人(とねり)ライナー」の足立区内にも2008(平成20)年から存在しているため、駅名が変更されると、全国で2カ所目ということになります。
一方、名古屋市では、市などによる第三セクター鉄道の「あおなみ線(名古屋臨海高速鉄道)」で、沿線にある港区の名古屋競馬場が移転を決定。これにともない、最寄りとなる「名古屋競馬場前」の駅名を2022年春に変更することを決めました。
変更後の駅名として同鉄道が選んだのは、なんと「港北」でした。

名古屋市では競馬場の周辺を“港北エリア”と名付け、まちづくりを計画している(名古屋市「港北エリアまちづくり」のページより)
もともと名古屋競馬場が位置する一帯は、名古屋市が“港北エリア”と呼んでまちづくりを計画しており、2026年9月に市内で開催が予定されているアジア最大のスポーツ祭典「第20回アジア競技大会」では、競馬場の跡地に選手村を設置する計画があるといいます。
5年と少し先の同大会の開催時には、名古屋競馬場前あらため「港北駅」が注目を浴びることになるかもしれません。
なお、港北という駅名は、かつて北海道の貨物駅として存在していましたが、現在は無いため、駅名の変更後には旅客駅として現時点で唯一となりそうです。
横浜市の港北区では、区内に日吉や綱島、大倉山、菊名、妙蓮寺、小机、新横浜、新羽など、古くから知られた駅が多いこともあって、“港北”という名の付く鉄道駅はありません。
特に名古屋市の港北駅は、沿線での重要度が増す可能性があるだけに、インターネットで「港北」というキーワードで港北区内の情報を検索した際、港北駅の周辺情報が出てくるような状況は避けたいところです。
【参考リンク】
・長崎本線 肥前山口駅の駅名改称について(江北駅)(PDF、2021年4月21日、佐賀県江北町・JR九州)
・あおなみ線「名古屋競馬場前駅」の駅名称変更について(港北駅)(PDF、2021年4月28日、名古屋臨海高速鉄道)