【コラム】今年(2019年)は4年に1度だけ、港北区民の意思がそのまま結果に反映される「横浜市会」と「神奈川県議会」の議員選挙が4月7日(日)に行われます。平成時代になって以降は、5割以上の有権者から“無視”され続けている選挙ですが、港北区内の身近な課題が取り上げられる機会は、今回の選挙以外にはありません。
(※)2019年2月19日追記:記事を執筆した1月6日時点で港北区から立候補を予定しているとみられていた1氏について、2月19日に意向を尋ねたところ、現時点で出馬を取りやめたいとの考えを明かしており、無投票となる可能性もあります。
(※)横浜市会議員の情勢などは「横浜日吉新聞」に掲載しました
「神奈川」と聴くと、となりにある“神奈川区”を思い浮かべてしまうような位置にある港北区。「神奈川県」といっても、日常生活では単なる都道府県の区切りにくらいしか感じられないかもしれません。
実際、人口374万人(2018年12月)という基礎自治体として日本一の規模を誇る横浜市は、県道の管理など、通常は都道府県が行うような業務も独自で担っており、日常生活で神奈川県に触れる機会といえば、港北警察署などの「神奈川県警」と、区内に3つある「県立高校」、県が管轄する私立の幼稚園や学校くらいで、なかなか縁遠いのが現状です。
そのためか県議会議員の選挙でも、低投票率の横浜市会議員選挙以上に低調で、港北区で見ると、前回2015年の選挙はわずか39.92%。投票率40.04%の横浜市会議員選挙と同時に行われたにもかかわらず、なぜか30%台の投票率を記録。市会議員選と比べると、無効票も1000票多いという状況でした。
ただ、神奈川県に対して、横浜市民や港北区民が無関心かといえばそうでもなく、県全体で見ても前回投票率は41.81%。横浜市だけの投票率はほぼ平均値の41.80%。となりの川崎市は平均以上の42.33%、政令都市の相模原市は46.44%と、逆に大きな都市のほうが真面目に投票しているとも言えます。
低投票率となる要因の一つは、選挙自体の盛り上がりに欠けることで、2015年の場合、横浜市金沢区(人口約19.9万人)や横浜市西区(同10.1万人)、川崎市高津区(同23.2万人)、川崎市幸区(同16.7万人)、厚木市(同25.5万)や小田原市(同19.1万人)、鎌倉市(同17.2万人)、相模原市緑区(同17.1万)、伊勢原市(同10万人)といった一定の人口規模を持つ都市部の選挙区でさえ、定員数しか立候補者が現われない「無投票」となっており、4年に1度の投票機会さえも与えられない住民をしらけさせています。
神奈川県議は、月額97万円という報酬に加え、相応の期末手当(ボーナス)まで支給される好待遇にもかかわらず、議員としての魅力に欠けるのか、希望者(立候補者)が不足気味のようです。
無投票の選挙区は、今回も生じることが予想されており、県民であるという意識と無関心さをさらに助長しそうな状況は変わりそうにありませんが、港北区では自民党と旧民主党系から複数が立候補し、さらに日本共産党の現職が4議席を争う激戦となる見通しで、現時点では無投票となる様子は見られません。
港北区では、夜になるとしつこい“客引き”が相次ぐ新横浜の繁華街における治安対策や、建物が老朽化しつつある県立高校への対応、県が管理している「篠原園地」(篠原台町)の無料プール廃止など、県が関わる課題も存在しています。異なる自治体である川崎市と隣接しているため、道路や鉄道といった広域の課題解決を主導する県の役割も見逃せません。
そんな神奈川県議会の議員選挙への関心を喚起するため、前回の選挙結果と4月7日(日)に行われる今回選挙(3月29日告示)の情勢を以下に記しました。
2015年4月・前回選挙の結果
2015(平成27)年4月12日投開票・神奈川県議会議員選挙
港北区選挙区(立候補6、定数4、投票率39.92%)
- 当29,990:嶋村ただし(58)自民党・当選4回目(樽町)
- 当20,607:はかりや珠江(61)民主党・当選6回目(新吉田東)
- 当20,083:大山奈々子(52)共産党・初当選(新横浜)
- 当16,999:武田しょう(33)自民党・初当選(富士塚)
- 11,110:むなかた富次郎(53)維新の党・過去当選1回(日吉本町)
- 6,134:水口だいすけ(63)無所属・新人(篠原町)
- 3,277:無効票
※候補者名は選挙管理委員会への届出によるもの(年齢は当時)。カッコ内は選管へ届出された住所のうち町名のみを記載
神奈川県議会議員選挙「港北区選挙区」の政党別状況(2019年4月7日投開票・3月29日告示)
▼ 定数4に対し、2位を引き離した票数でトップ当選を続ける自民党現職と、野党第一党が2議席を占め、残る2議席を日本共産党や新党系、無所属を含めた3~4氏で争う構図となってきた港北区。前回からここに自民党の2人目が加わり、さらに今回は立憲民主党の新人も参戦。現時点では、自民の2現職・旧民主系現職・立憲民主党新人・共産現職の5氏が争い、1氏が落選するという構図になりそう。今後、下記5氏の他にも立候補する可能性がある
▼ 前回2015年は32年ぶりに2議席を獲得した自民党。2003年の初当選以来トップ当選を続け5期目を目指す現職と、2期目を目指す現職の2氏を公認。2011年以降は候補者を立てていない公明党の後押しも得て、2議席目を滑り込ませることができるか
▼ 前回は民主党公認で2位当選した7期目を目指すベテランの現職は、県議会では立憲民主党系の会派に所属するものの、現時点で同党の公認は得ていない。一方で立憲民主党は、港北区に事務所を置く衆議院議員の秘書をつとめている20代新人を昨年12月20日に公認。“民主系”は少なくとも2氏が立つことになりそう
▼ 港北区で初の議席を前回獲得した共産党は、2期目を目指す現職の議席を守れるかが鍵。これまでの選挙で「民主系」や「野党(革新)系」の候補が複数立った際は、“野党票”の分散で苦戦を強いられてきただけに、前回得た2万票にどこまで迫れるか
以上、2019年1月6日現在の記事です。
(※)2019年2月19日追記:記事を執筆した1月6日時点で港北区から立候補を予定しているとみられていた1氏について、2月19日に意向を尋ねたところ、現時点で出馬を取りやめたいとの考えを明かしており、無投票となる可能性もあります。
【関連記事】
・人口35万人もいるのに「無投票」の可能性、4/7(日)の県議選・港北区選挙区(横浜日吉新聞、2019年2月25日、その後の情勢)
・港北区民の意思を示せるのは「4年に1回」、身近ではない市会議員は無関心の裏返しか(横浜日吉新聞、2019年1月7日、横浜市会議員選挙についての考察)
【参考リンク】