【法人サポーター会員による提供記事です】ツイッターやフェイスブックの次に来る新たな「SNS」の潮流とは――。個人でTwitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)などのSNSサービスを使うことは当たり前になりましたが、「次に流行する」と言われ、一部で注目を集めているのが“分散型”と呼ばれるタイプの自由度の高いSNSです。
日本に上陸した初期段階から分散型SNSの普及に携わってきた合同会社きぼうソフト(新横浜1)の社長、香月貴義(かつきたかよし)さんに、現在の状況と同社が分散型SNSに注力している背景を聞きました。
巨大IT企業の姿はないオープンな「分散管理」
“分散型”と呼ばれるタイプのSNSの特徴を一言で表すと、「自由度の高さ」という点にあります。
たとえば、ツイッターやフェイスブックは、米国で巨大企業の一角とされるツイッター社やフェイスブック社が運営や管理を行っていますが、分散型は大きな企業が一元管理をするのではなく、それぞれの運営者が“分散”して管理を行い、それらが相互に乗り入れているというイメージです。
そんな分散型SNSのなかで、日本で注目を集めるのが「マストドン (Mastodon)」というサービス。ドイツに住む一人の開発者が、誰もが自由に使える「オープンソース」として2016年に開発し、日本へは2017年の春頃から流行の兆しが見えているといいます。
「基本的には非営利のSNSサービスで、日本を含めた世界中の開発者が開発に参加し、誰もが自由に使うことのできるオープンな環境にあります。欧州の方が最初に開発したためか、広告に対する抵抗感が非常に強いのも特徴と言えます」と香月さんは説明します。
フェイスブックやグーグルといったIT企業が利用者の膨大な個人情報を収集していることに反発し、個人情報保護の規制を強めたのも欧州連合(EU)でした。巨大米国企業が世界中の個人情報を独占することに対して反発する風潮があるのか、欧州を源流とするマストドンでもそうした考え方が貫かれているようです。
マストドンの公式説明には、利用者に対し「あなたは人間であり、商品ではありません」とうたわれており、利用者を“商品”と見立てて個人情報を収集し、それをお金に換えて肥大化する大手IT企業を皮肉っているようにも見えます。
ツイッターに似た機能、きぼうソフトも参入
そんな、大手企業による“中央集権”や個人情報の収集に反発しているSNSのマストドンですが、機能的にはツイッターに似た雰囲気です。
ツイートを「トゥート」と呼んだり、投稿できる文字数が500文字であったり異なる部分はあるものの、ツイッターを使っている人なら、問題なく使えそう。「ブースト」と呼ばれるリツイートの機能もほぼ同様。
異なるのは「インスタンス」と呼ばれるどこかのサービス(集まり)に所属する必要があることで、このインスタンスは日本国内だけでも500以上あると言われています。
「日本で有名なのは、国内でのポータル(入口)的な『mstdn.jp』をはじめ、イラスト投稿サイト大手のpixiv(ピクシブ)さんが運営する『pawoo.net』や、動画投稿サイトのニコ動(ドワンゴ)による『friends.nico』が今のところ3大インスタンスです」(香月さん)。
香月さんが経営するきぼうソフトは、先ごろ、日本で第4位の利用者数を持つと言われるインスタンスの「mastodon.cloud(マストドン.クラウド)」の運営を引き受けたほか、自社では「Kibousoft Now(キボウソフト.ナウ)」を独自に開発。また、マストドン自体の開発面でも、日本におけるプラチナスポンサーとして支援を続けてきたといいます。
「インスタンスを運営したからといって、広告が載せられないので、金銭的な利益を得られることはほぼ皆無ですが、運営を通じて世界中の開発者の方とも交流できるので、人材の採用という面では大きな効果が出ています」と話します。
地域や企業が「交流SNS」に活用できる可能性
マストドンのもう一つの可能性は、開発面ではオープンでありながら、情報を発信するうえではツイッターなどに比べ、それなりに“閉じられた環境”を作れることにあるといいます。
たとえば、ツイッターでは、公開した投稿内容は基本的に全世界に発信されてしまい、時には“拡散”されることで、ちょっとした発言が意図しないような反響を呼ぶことがあります。日本でも若年層の悪ふざけの投稿が“炎上”したケースがたびたび見られました。
一方、マストドンでは、それぞれのインスタンスに参加している人同士が交流の中心となるため、自分の所属していない他のインスタンスの閲覧や紹介(ブースト=リツイート)は可能ですが、広く伝わりづらい環境にあるといいます。
「今のところ、趣味というくくりでつながっているインスタンスが目立ちますが、これを『地域』というくくりで運営した場合、地域SNSを作ることも可能です」と香月さん。
「たとえば、新横浜のインスタンスを作れば、新横浜の地域の話題を自由に発信して共有し、交流する場にもなれるのでしょう。完全に閉じられた環境ではありませんが、誰もが自由に参加できるうえ、ツイッターのように必ずしも広く発信しなくていい、というのはマストドンの利点の一つ。ビジネス面でもファンの方とつながるツールとして使えると考えられます」(同)
インスタンスは、2000年代初頭に流行した大型の「掲示板」で言うと、話題ごとに立てられた“スレッド”に似た感覚。マストドンという“大きな掲示板”のなかで、スレッドごとに管理者が存在しているイメージに近そうです。
世界での利用者が100万人以上は存在すると言われるマストドンですが、ツイッターやフェイスブックに比べれば、まだまだ発展段階。香月さんも「マストドンが広く浸透するにはまだ3年から5年はかかる」とみています。
“オープン”という新たな考え方で運営されているSNSに今から接しておくことは、ビジネス面からも、トレンドを知るうえでも有効かもしれません。
【関連記事】
・新横浜で飛躍を目指す26歳社長の「きぼうソフト」、IT開発者を集める最先端の働き方(2018年5月22日)
【参考リンク】
・mstdn.jp(日本における「マストドン」の入口的なインスタンス)
・mastodon.cloud(新横浜のきぼうソフトが運営管理に参画)
・合同会社きぼうソフト(新横浜1、初期段階から開発に携わる)
(法人サポーター会員:合同会社きぼうソフト提供)