新横浜・菊名・大倉山・新羽など港北区南部の地域情報サイト
防災の日となる9月1日、奈良建設株式会社で第3回目となる「災害時快適トイレ計画と事業継続計画(BCP)」イベントが開催された。来賓として日本赤十字社神奈川県支部の大野雅之事務局次長があいさつ

防災の日となる9月1日、奈良建設株式会社で第3回目となる「災害時快適トイレ計画と事業継続計画(BCP)」イベントが開催された。来賓として日本赤十字社神奈川県支部の大野雅之事務局次長があいさつ

避難所に指定されている日本全国の小・中学校で、「断水時のトイレ」が整備されているのはわずか半分程度(文部科学省2017年4月1日現在の調査より)――横浜市で今後30年以内に大きな地震が起きる確率が「78%」(2014年12月に文部科学省管轄の地震調査研究推進本部発表)とも言われ、また昨今は今年(2017年)7月に発生した九州北部豪雨のような「ゲリラ豪雨」も教訓とした災害対策の必要性が叫ばれる中、災害発生時に避難所などで「最も必要」とされるトイレ対策をどのように進めれば良いのでしょうか。

災害時のトイレをより「快適にする」ことを目的としたトイレ計画の必要性を訴える「第3回災害時快適トイレ計画と事業継続計画」講演イベントが、新横浜1丁目の奈良建設株式会社(植本正太郎代表取締役社長)にて防災の日にあたる先週(2017年9月)1日午後に開催されました。

奈良建設株式会社の植本正太郎代表取締役社長が、自社や子会社の株式会社セットアップ横浜が取り組む災害時快適トイレなどの事業についても紹介

奈良建設株式会社の植本正太郎代表取締役社長が、自社や子会社の株式会社セットアップ横浜が取り組む災害時快適トイレなどの事業についても紹介

このイベントは、奈良建設の子会社で災害用品なども取り扱う株式会社セットアップ横浜(新横浜1=杉本隆代表取締役)が主催。

まずは、会場となった奈良建設の植本正太郎代表取締役社長が、災害発生時の対策として「地域の住民の皆さん、行政の皆さんが常に顔が見える関係を保つことが非常に重要なのではないか」とあいさつ。自社の工事現場での「女性勤務」にも最適なトイレの刷新こそが、災害時にも役立つことや、災害時に使用するトイレ設備を社内に設置し防災対策に力を入れていることなども司会者より紹介されました。

また、来賓として迎えられた日本赤十字社神奈川県支部大野雅之事務局次長は、「災害時は電気、ガス、水道などが使えなくなってしまう。トイレが一番大きな問題」と、自身、2011年3月の東日本大震災で被災地に赴いたエピソードも交え、その対策の必要性にも力強く言及します。

新横浜町内会の横溝一則副会長は防災担当。新横浜の横浜アリーナ付近などの公園に設置した災害用トイレや横浜市初となるトイレ用井戸の設置についてなど災害時のトイレ対策に向けた試みを披露

新横浜町内会の横溝一則副会長は防災担当。新横浜の横浜アリーナ付近などの公園に設置した災害用トイレや横浜市初となるトイレ用井戸の設置についてなど災害時のトイレ対策に向けた試みを披露

地元・新横浜町内会で防災担当を務める横溝一則副会長は、「安心・安全・美しい街」新横浜の実現のためにと、町内の公園に災害用トイレや、トイレ用の横浜市内初となる「井戸」を設置した取り組みについて説明。

続いて講演した横浜市港北区の佐藤大介危機管理・地域防災担当係長は、災害時の市民にお願いしたい対策や、横浜市が災害時にどのような緊急対応を構築するかについて、また、自身が昨年(2016年)4月に発生した九州熊本地震で倒壊家屋の判定に携わり、「災害はいつ起こるかわからない。被災者の話をよく聴くことが重要」と感じたことなど、備蓄や災害時の事業継続計画についての「備えの必要性」を強く訴えました。

港北区総務部の佐藤大介危機管理・地域防災担当係長が「災害に備えて」の対策を訴えた

港北区総務部の佐藤大介危機管理・地域防災担当係長が「災害に備えて」の対策を訴えた

特に大きな注目を集めていたのが、NPO法人日本トイレ研究所(東京都港区)の加藤篤代表理事の講演。日本全国の小・中学校で、「断水時のトイレ」整備が半数余りという現実を踏まえ、「トイレ問題は1995年の阪神淡路大震災や東日本大震災、そして熊本地震でも、避難所で問題となった施設・設備のトップ」との調査結果を報告。

エコノミークラス症候群での死者が多発したことで知られる2004年の新潟県中越地震では、「43歳から50歳までのいずれも女性6人が死亡」した例を挙げ、「夜間トイレや歩行がなしが3名と、トイレを我慢してしまったことで症状が悪化した。比較的“若い”世代の“女性”が被害にあった」という事実をスライドに示し、「快適なトイレ対策が必要」と訴えます。

「エコノミークラス症候群で亡くなった方はトイレを我慢していたと思われる」と、NPO法人日本トイレ研究所の加藤篤代表理事は、トイレを快適にすることは生命を守ることにつながる、と避難所でのトイレ改革の必要性について力説

「エコノミークラス症候群で亡くなった方はトイレを我慢していたと思われる」と、NPO法人日本トイレ研究所の加藤篤代表理事は、トイレを快適にすることは生命を守ることにつながる、と避難所でのトイレ改革の必要性について力説

特に、災害時の快適なトイレ計画を「2人に1人の割合」で進め、さらに使用ルール認知率の目標を100パーセントと掲げる災害時トイレ計画の先進地・徳島県の事例について言及すると、会場からは驚きと感嘆の声があがっていました。

加藤代表理事は、トイレ対策の5つのポイントとして、まずはトイレ対策の司令塔を明確にし、多岐にわたる災害用トイレの名称を統一すること、マンホール型や仮設型、携帯用、簡易的なものなど複数の種類(量・質)のトイレを用意しておき備えること、拠点ごとに「トイレ計画」を作成すること、そしてトイレ掃除を含め、「使用ルール」を共有することを推奨。

また、「快適トイレ認定マーク」を新たに設置し、災害時トイレの衛生管理講習会(認定・防災トイレアドバイザー)を12月に予定しているとPR。「快適なトイレは贅沢ではない、命を守るために必要」と、海外・イタリアの冷暖房まで付いているというスタイリッシュな仮設トイレの写真を披露しつつ、講演を終了しました。

防災士の市川ゆかりさんは、女性や子ども、障害者が安心して使える「快適な理想のトイレ」についての提案を行った

防災士の市川ゆかりさんは、女性や子ども、障害者が安心して使える「快適な理想のトイレ」についての提案を行った

以降も、防災士の市川ゆかりさんが、「女性や子ども、障害者が安心して使える“快適な理想のトイレ”についての提案」、地震被害BCP(事業継続計画)研究会の岡野眞代表が「防災体制の整備と地震被害」についての特別講演を実施。

休憩時間には、災害用トイレや防災グッズの展示商品紹介も行われるなど、今回のイベントの90名を越える参加者が、災害時のトイレ対策についての情報を共有する時間となりました。

災害用トイレの最新商品や防災グッズも展示、休憩時間に説明披露された

災害用トイレの最新商品や防災グッズも展示、休憩時間に説明披露された

今回の約3時間という長時間にわたるイベントで学んだ成果を、どこまで最新の「災害用トイレ対策」情報として自治会・町内会関係者や各企業、学校担当者など地域の現場に共有され、これまで行ってきた従来型の対策からさらに進んだ形での快適なトイレ環境についての理解や整備が進むのか。

特に「78%」大地震が起こると言われる横浜市では、トイレ対策が「未設置」の学校が全国で約半数という現実も踏まえ、どのようにスピーディーに最新情報を共有し対策を推し進めていけるのかという点も、今後の災害対策における大きな鍵になると言えそうです。

【関連記事】

新横浜の公園に市内初の「井戸」設置、大災害に備え増設も視野(2017年7月3日)

家族で学び楽しむ体験型防災イベント、小机の流域センターで9/16(土)・23(土)に(2017年9月1日)

【参考リンク】

奈良建設株式会社公式サイト

株式会社セットアップ横浜公式サイト

NPO法人日本トイレ研究所公式サイト

横浜市港北区 総務課による防災関係情報のページ