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鉄道・運輸機構が掲出しているスローガン看板(新横浜駅近く)

鉄道・運輸機構が掲出しているスローガン看板(新横浜駅近く)

相鉄直通線(神奈川東部方面線=「相鉄・JR直通線」と「相鉄・東急直通線」)の開通が延期になってしまいました。2016年8月25日の神奈川新聞による報道を受け、事業主である鉄道建設・運輸機構が昨日(8月26日)付けで正式に発表したものです。

今から2年半後の2019年4月だったはずの「相鉄・東急直通線」の完成は6年も先のこととなり、同年9月から10月に日産スタジアムなどで開催が予定されている「ラグビーワールドカップ2019」はおろか、2020年の東京五輪にも間に合わないことになってしまいました。

トンネル上部の所有者と契約必要、3割未買収

今回、延期する理由の一つとして同機構は「用地取得の難航に伴う工事の遅れ」をあげていますが、現状はどのようになっているのでしょうか。

今年(2016年)3月16日に開かれた神奈川県議会で、高橋栄一郎県議(自民党、保土ヶ谷区選出)の質問に対し、県の担当者は用地買収について次のように答えています。

  • 「相鉄・JR直通線」(西谷~羽沢~JR線方面)は用地の取得がほぼ完了した
  • 「相鉄・東急直通線」(羽沢~新横浜~新綱島~日吉)2016年2月末現在の面積ベースで約7割といった状況

この答弁によると、JR直通線部分では用地買収をほぼ終えたものの、東急直通線はまだ3割が終わっていないことになります。

トンネル上部の「区分地上権」の考え方(神奈川東部方面線のホームページより)

トンネル上部の「区分地上権」の考え方(神奈川東部方面線のホームページより)

相鉄・東急直通線はほぼ地下構造(地下鉄)です。大半は東急東横線や道路(環状2号線)の地下を通るため、用地の取得箇所は少ないように思われます。しかし、地下を通る場合でも地上部の土地所有者との間で、「区分地上権を設定し、地下の一定の範囲を永続的に使用させていただくことを基本」(鉄道建設・運輸機構)にしているといいます。

上部の土地を持つ人と「区分地上権」の契約が行われない限り、たとえ地下といえど勝手にトンネルを掘れないことになっているのです。

大倉山や大曽根では住宅街の真下を走る

相鉄・東急直通線において、この区分地上権を設定しなければならい場所は、ほとんどが港北区内。住所では下記の場所とみられます。

  • 綱島東2(長福寺信号周辺)
  • 綱島東1(主に新綱島駅付近)
  • 樽町2(大綱橋付近のほんの一部)
  • 大曽根2(住宅街が中心、20以上の建物に影響か)
  • 大倉山3(住宅街の真下、40以上の建物に影響か)
  • 菊名7(住宅街の真下、10以上の建物に影響か)
  • 大豆戸町(一部住宅地、7~8の建物に影響か)
  • 神奈川区三枚町、菅田町など(新幹線高架沿い中心、20以上の建物に影響か)
大倉山駅付近のトンネル経路図(水色の線)、駅ができないうえに住宅地の地下を通り抜けるため、付近住民にはメリットがほとんどない

大倉山駅付近のトンネル進路図(水色の線)、近隣に駅ができないうえ住宅地の地下を通り抜けるため、住民にはメリットがほとんどない(i-マッピーより)

横浜市が提供している都市計画地図「i-マッピー」で目視による確認を行うと、建物の立ち退き(土地取得)は日吉駅寄りの箕輪町内で1件が対象となりそうですが、残る100以上の建物(土地)は立ち退きこそ発生しないものの、区分地上権の契約を交わす必要が出てきます。

鉄道建設・運輸機構の公開資料によると、今年(2016年)4月1日以降に、綱島東1丁目と同2丁目の土地所有者(企業・個人含め)と21件の土地賃貸借契約を結んだことが明かされており、綱島周辺での用地確保は、比較的順調に進んでいることがうかがえます(※1)

その他の地域について、公開資料上では、神奈川区羽沢や保土ケ谷区西谷で土地賃貸借契約を結んだ記録が複数発見できましたが、大曽根や大倉山、菊名など住宅街で契約を結んだ記録は見つけられませんでした。

神奈川県の担当者は、「引き続き精力的に工事や用地の交渉を進めるとともに、並行して土地収用法も視野に入れて取り組んでいると、整備主体であります鉄道運輸機構からは聞いております」と3月16日の県議会で答弁しています。

(※1)綱島での土地賃貸借契約については、鉄道建設・運輸機構の「競争性のない随意契約」と題されたPDFファイルの26ページ目の下部から33ページ目まで、21件の土地賃貸借契約が確認できる。この資料では対象地の住所は明記されず「羽沢起点○k○m付近」などという表記で示しているが、過去の資料によると「羽沢起点7k910m付近」=「綱島2丁目」であると記載されていた。今回の契約は「羽沢起点7K付近」での内容が多いことから綱島周辺の土地であると考えられる。また、相手方に綱島東町内所在の企業名も複数見える。

最も進んでいる新横浜駅でさえ掘削率は6%

今月(2016年8月)現在、2つの相鉄直通線(「相鉄・JR直通線」と「相鉄・東急直通線」)の工事状況はどのようになっているのでしょうか。神奈川東部方面線のホームページに公開されている情報から探ってみると、現実が見えてきます。

2015年秋の段階でもJR直通線側はかなり工事が進んでいる(「鉄道・運輸機構だより」No.47 2015 Autumnより)

2015年秋の段階でもJR直通線側はかなり工事が進んでいる(「鉄道・運輸機構だより」No.47 2015 Autumnより)

「相鉄・JR直通線」については、すでに相鉄・西谷駅からJR東海道貨物線・横浜羽沢駅付近までを結ぶ「西谷トンネル」が昨年(2015年)11月に完成し、線路を敷くだけの状態です。羽沢駅に関しても今年6月までにホームなども含め完成したといいます。西谷駅もかなり進展しています。

あとは、365日24時間体制で運行しているJRの貨物線を避けながら、再延期後の完成予定としている「2019年度下期(10月~2020年3月)」までに、どのように工事を行うかが大きな課題となりそうです。

一方、「相鉄・東急直通線」の工事は、JR直通線ほど進んでいるとはいえません。

相鉄・東急直通線は、2013年10月に、幹線道路「環状2号線」の地下を使うため用地取得の必要が少ない「新横浜駅(仮称)」の建設工事から始まっていますが、同駅を地下深くに作るための掘削(くっさく)工事は、8月現在で6%ほどを終えたにすぎません。

相鉄・東急直通線の「新横浜駅(仮称)」完成図、地下鉄ブルーラインよりさらに深い位置に駅が設けられる(新横浜駅近くで撮影)

相鉄・東急直通線の「新横浜駅(仮称)」完成図、地下鉄ブルーラインよりさらに深い位置に駅が設けられる(新横浜駅近くで撮影)

「新横浜駅付近の市営地下鉄3号線(※ブルーライン)との交差部で、既存の鉄道に影響を与えないよう高度な技術が求められる」(3月16日の県議会で県担当者答弁)とも言われています。

日吉駅周辺の工事は、地上部のため順調に進んでいるようにも見えます。しかし、東急東横線の上下線それぞれの線路を左右に移動させ、そうして空けた真ん中のスペースに相鉄直通線の線路を通し、地下へと潜らせるという複雑な難工事であるため、工事の進展度合いによってどうなるかは分かりません。

日吉駅周辺と同じく“目に見える”形で行われている「新綱島駅(仮称)」の工事は、掘削工事を行う前段階の作業を行っている状態です。

日吉駅ではホーム位置が移動するなどの影響も(2016年8月)

日吉駅ではホーム位置が移動するなどの影響も(2016年8月)

このほか、箕輪町(日吉駅近く)と新綱島駅を結ぶ「綱島トンネル」(約1.1キロ)や、新綱島駅と新横浜駅を結ぶ「新横浜トンネル」(3.3キロ)に関しても、トンネルを掘るための前段階のままです。

新横浜駅と羽沢駅間を結ぶ「羽沢トンネル」(3.5キロ)は、港北区内2つのトンネルより少しは進展しており、今年3月からトンネルを掘削するための「シールドマシン」が少しずつ掘り進んでいる状況とのことです。

相鉄・東急直通線では、完成間近の鉄道施設は何もないどころか、完成を見通せている施設さえ存在していません。

新駅ができないのに再開発はできるのか?

こうして見ていくと、「相鉄・東急直通線」が当初予定であった2年半後の2019年4月に開業するというのは、確かに難しいように見えます。2010年2月に工事が始まった「相鉄・JR直通線」と比べ、3年半ほど遅く着工しているため、完成予定も3年半以上遅らせた「2022年度下期(10月~2023年3月)」の開業に変更されたのも理になかっているのかもしれません。

新横浜駅前の環状2号線では工事にともないずっと車線規制が行われている

新横浜駅前の環状2号線では工事にともないずっと車線規制が行われている

しかし、相鉄・東急直通線の沿線では、すでに新たなまちづくりが始まっており、今年中には新綱島駅から徒歩10分圏内の場所に米アップルの研究所が稼働する見通しです。新綱島駅前のタワーマンション建設をはじめとした再開発や、日吉駅側の箕輪町では3000人以上の新たな街を作る計画も発表されています。新横浜駅近くの大豆戸(まめど)町では、環状2号線沿いを中心に数えきれないほどのマンションや一戸建て住宅建設が進んでいます。これらへの影響が心配です。

たとえば新綱島では、駅が開業しないうちに、高層マンションや商業施設、区民文化センター(ホール)、自転車置場、バスターミナルなどを作ることはできるのでしょうか。開業時期が伸びたことで、駅東口の区画整理も遅延することはないのでしょうか。

日吉駅周辺では高架工事がずっと続いている

日吉駅周辺では高架工事がずっと続いている

日吉駅では、相鉄・東急直通線の工事によって東横線と目黒線の乗り換えが不便な状態。駅周辺では昼夜問わず続く建設工事にも耐えなければなりません。新横浜駅周辺では、大動脈の環状2号線の通行規制が続くことにもなります。

6年後に延びてしまった“遠い先”を見るよりも、まずは今行われている工事だけでも何とかして完成させてほしい――、地元住民としてはそう願うばかりです。

(※)この記事は「横浜日吉新聞」「新横浜新聞~しんよこ新聞」の共通配信記事です

【関連記事】

<神奈川新聞が報道>「相鉄・東急直通線」が3年半延期、用地買収や地盤の問題?(横浜日吉新聞、2016年8月25日)

<相鉄直通線の延期報道>相鉄・東急が肯定も否定もないコメント、ネット上は悲観(横浜日吉新聞、2016年8月26日)

<公式に発表>「相鉄・東急直通」は2022年10月以降、県・市民の税金負担は430億増(横浜日吉新聞、2016年8月26日)

<相鉄・東急直通線>地下30メートルの新横浜駅、環状2号線で掘削工事が進展中(2016年8月19日)

<相鉄直通新線の鉄道工事>日吉や綱島周辺で今、何を作っている段階なのか?(横浜日吉新聞、2016年8月20日)

【参考リンク】

神奈川東部方面線事業に関するお知らせ(鉄道建設・運輸施設整備支援機構などの共同発表、東急電鉄)

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